第14戦 ポルトガルGP

ポルトガルGPプレビュー

第14戦ポルトガルGPが10月2日、リスボン郊外のエストリル・サーキットで開幕する。昨年は4月に開催されたが、今年は一昨年までと同様、秋の開催となった。エストリルは1972年に完成した歴史あるサーキット。パドックが全面改修された2000年に初めてグランプリが開催され、今年で10回目を迎える。

エストリルは、シーズンを通じて最も速度差のあるサーキットとして知られる。約1kmのロングストレートでは310km/hを超える最高速を記録。そこからは、リズミカルな中速、そしてコース終盤にかけて低速コーナーが続き、最もスピードが落ちるヘアピンでは50km/h台まで速度が落ちる。そのために車体のセットアップが難しい。また、エストリルは右コーナーが多く、左コーナーでタイヤの温度が上がりにくいことでも選手たちを悩ませる。加えて、変わりやすい天候、風が強いサーキットとしても知られ、すべての面で厳しい条件がそろう大会となる。

13戦を終えて総合3位のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、エストリルでは、125cc、250cc、そしてMotoGPとGPデビューを飾ってから未勝利のサーキット。しかし、過去2年は連続2位と、初優勝にあと一歩に迫っている。今年はシーズン中盤戦になって体調も万全となり、マシンのセットアップも急速に進んでいる。3週間の休暇でさらに万全の体調としたペドロサは、母国スペインから押し寄せる大勢のファンの期待に、エストリル初優勝で応える意気込みだ。

第10戦イギリスGPでMotoGP初優勝を達成。以来、3レース連続で4位と表彰台を逃しているアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)も、得意とするエストリルに闘志を燃やす。125cc、250cc時代は、優勝を含め表彰台の常連。最も得意とするサーキットだけに、今季2勝目に気合が入る。前戦サンマリノGPからは、サスペンションをオーリンズに変えた。そのデビューレースで4位と好感触をつかんでいる。2戦目を迎える今大会は、さらにパフォーマンスを引き出すことは確実で、ドヴィツィオーゾの走りに注目が集まりそうだ。

シーズン中盤戦に入って調子を上げているアレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)も、今季2回目の表彰台に闘志を燃やす。ホームGPとなった前戦サンマリノGPは、スタート直後に転倒と、言葉もないほど落ち込んだ。その雪辱に向けて、この3週間、トレーニングに励み、苦い思い出を払拭した。第12戦インディアナポリスGPで2位になったデ・アンジェリス。その勢いを再び取り戻す意気込みだ。

第10戦イギリスGPで3位表彰台に立ち、その直後のトレーニングで左足首を骨折。以後の3戦、厳しい戦いを強いられたランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)も、この3週間のインターバルでほぼ万全の体調に戻すことに成功した。ここから4戦、常にトップ8を狙うというデ・ピュニエの巻き返しに期待したい。

06年、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)と壮絶なバトルを繰り広げて優勝したトニー・エリアス(Team San Carlo Honda Gresini)も、今季2回目の表彰台と3年ぶりの優勝に闘志を燃やす。シーズン中盤戦に入って調子を上げているエリアスは、第11戦チェコGPで今季最高の3位を獲得、常にトップグループに絡む走りを見せている。今大会は、今季2度目の表彰台はもちろん、今季初優勝の期待も膨らむ。

250cc クラスは、総合首位の青山博一(Scot Racing Team 250cc)の戦いに注目が集まる。前戦サンマリノGPでは、大接戦の中で惜しくも4位と表彰台を逃した。今大会も接戦が予想されるが、念願のタイトル獲得に向けて着実に前進する意気込みだ。12レースを終えて、2位のアルバロ・バウティスタ(アプリリア)との差は13ポイント。ここからは一戦一戦が重要な戦いとなる。この3週間のインターバルも休日返上でトレーニングに励んできた。体調も気力も充実。今季4勝目と7回目の表彰台の期待が膨らむ。

総合6位につけるラファエレ・デ・ロサ(Scot Racing Team 250cc)、総合7位のヘクトル・ファウベル(VALENCIA C.F. HONDA SAG)も激しいランキング争いをしているだけに、ともに今季ベストリザルトを狙う。シーズン中盤以降、リタイアが続いているラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)も今大会はシングルフィニッシュを目指す。ルーキー富沢祥也(CIP Moto-GP250)も今季初のシングルフィニッシュに気合満点。また、今大会は青山周平がRacing Team Gemanyから参戦することが決まった。

コメント

ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング3位)

「前回のサンマリノGPからの長い休暇を楽しむことができた。トレーニングも十分にできたし、休養も取れた。この時期に3週間ものオフを過ごせるのは珍しいことだが、それだけ、終盤戦に向けて気持ちを高められた。この3週間、今大会に照準を合わせてきたので、金曜日のフリー走行から集中していきたい。このコースは、バンピーなので、ブレーキングとリアのグリップを出すことがとても重要になる。全体的にとてもハードなコースだが、体調もよく、いいレースをする自信はある。昨年は4月に行われた。今年は10月と天候が違うので、コンディションを確認しながら走りたい。昨年のレースは序盤に小雨が降って難しいレースになったが2位になれた。とにかく、今年は安定した天候の中でレースを戦いたい。すごく楽しみにしている」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング5位)

「長い休暇だったので、レースが始まるのをすごく楽しみにしている。エストリルは、これまでいい結果を残してきた。昨年は転倒してしまったが、それまでは、ロレンソ(ヤマハ)、ダニ、バレンティーノとバトルすることができた。今年もいいレースができると思っている。このサーキットの何個所かは、MotoGPマシンにはあまりにもタイトでスピードが遅いので、MotoGPマシンのパフォーマンスをうまく生かせるようにしたい。前回のミサノはオーリンズで初めてのレースだったが、4位になれたし、貴重なデータを得られた。今回はさらにセッティングがよくなると思うし、残り4戦、いいレースができるはず。とても楽しみだ」

アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP ランキング8位)

「前回のサンマリノGPがあまりにも残念な結果だったので、この3週間の休暇は、連日、猛烈にトレーニングに励んだ。そのおかげで、エストリルに向けてモチベーションを高めることができた。このサーキットは、125ccや250ccではいい走りができているので自信はある。昨年4月の大会は、39℃の熱があって厳しいレースを強いられた。エストリルは天候が変わりやすいが、人間もバイクも状態はいい。初日からバイクのポテンシャルをフルに引き出せると信じている」

ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング9位)

「この3週間の休暇のおかげで、骨折していた左足首がほとんど回復した。チェコ、インディアナポリス、サンマリノに比べたらはるかにいい状態でレースに挑めるはず。ほぼ100%の状態に戻ったと思う。エストリルは決して好きなサーキットではないが、チームと来年の契約も終えたことで、ここから終盤の4戦に集中できる。目標は、すべてのレースをトップ8で終えることだ」

トニー・エリアス(MotoGP ランキング12位)

「この休暇を利用して、自転車のトレーニングに励んだ。サーフィンもした。WRCを訪れ、ラリーチャンピオンのヒルボネンのクルマに乗せてもらうなどエキサイティングな時間を過ごした。エストリルは06年に優勝しているサーキット。大好きなサーキットなので、再び、優勝争いに加わりたい。決して楽な戦いではないと思うが、今大会に向けていい状態を作れたと思う。バイクの状態もとてもいいので、開幕が待ち遠しい」

ガボール・タルマクシ(MotoGP ランキング18位)

「エストリルは、ハードなブレーキングが必要になるし、タイトなコーナーもある。いくつかのポイントは前回のミサノに似ている部分もあり、それを生かせるはず。今回も厳しい戦いになることは間違いないが、ベストを尽くしたい」

青山博一(250cc ランキング1位)

「エストリルは難しいレースになる。正直、どんな展開になるか予想がつかない。ストレートでは、アプリリアとジレラを相手に厳しい戦いを強いられるが、ブレーキングでは自分にアドバンテージがあるはず。不安定な天候が心配だが、前回のミサノのように暑くならないと思う。この数戦、高すぎる水温に苦しんできたので、その部分では追い風かもしれない。残り4戦。一戦一戦ベストを尽くすだけだ」

ラファエレ・デ・ロサ(250cc ランキング6位)

「エストリルはあまり好きなサーキットではない。長いストレートも我々には厳しい。ここでウインターテストを行ったときも、決して、順調ではなかった。しかし、ここまでのいい流れを、ここで確認できると確信している」

ヘクトル・ファウベル(250cc ランキング7位)

「3週間のインターバルのおかげで、背中の状態がかなり回復した。物理療法を受け、9日間の休養をとった。とにかく、エストリルは自分にとって最も大事なレースなので、少しでも完全な身体にするために集中した。ここでは優勝はもちろん、3回の表彰台に立っている。昨年は予選10番手から決勝で9位と残念な結果だったが、ベストを尽くした。体調もよくなっているので、今週はいいレースができるはずだ」

ラタパーク・ウィライロー(250cc 総合15位)

「終盤の4戦に向けて、この3週間、トレーニングを行ってきた。今年は、納得のいくリザルトを残せていないが、自分たちのポテンシャルを信じている。もっといい結果を残せるはずだ。エストリルは昨年、予選17番手から決勝13位だった。でも、ウインターテストでは2番手タイムを出せているし、今大会は予選でトップ10、決勝で8位以内を目標にしたい」

富沢祥也(250cc ランキング17位)

「インディアナポリスで転倒した際に、マシンに大きなダメージを受け、前回のミサノは完全な状態ではなかった。それをこの3週間のインターバルで完全に修復できたので、今回は気持ちよくレースに挑めると思う。今大会も初めて走るサーキットだが、すごく楽しみ。3週間、日本に帰ってリフレッシュできたので、初日から思いきっていきたい」