今年で2回目を迎えるインディアナポリスGPが、8月28日から30日までの3日間、アメリカのインディアナポリス・モータースピードウェイで開催される。インディアナポリスは、世界で最も歴史のあるサーキット。1909年に開設され、今年、100周年を迎えた。完成当時はレンガを敷き詰めたコースだったが、1961年にアスファルトの路面に全面改修された。その際、スタート&フィニッシュラインの1ヤードだけにレンガ敷きの路面が記念として残されている。インディアナポリス・モータースピードウェイを訪れた者は、何をさておいて、この“ブリックヤード”を見学することになる。
インディアナポリスのオーバルコースは、インディカー・レースの最大イベント“インディ500”で使用される。以前に開催されていたF1世界選手権、そして昨年からスタートしたロードレース世界選手権では、オーバルコースの一部とインフィールドに新設されたコースを組み合わせたコースでレースが行われている。一周4.216kmの左回り。左コーナー10、右コーナー6。低速と高速コーナーが組み合わされたテクニカルコースである。メインストレートは644m。グランプリの開催サーキットの中ではそれほど長くないが、オーバルコースから1コーナーに飛び込んでいく豪快なシーンが楽しめる。昨年の大会は、決勝日にハリケーンが直撃。125ccクラスとMotoGPクラスは激しい雨と強風の中で何とか行われたが、250ccクラスは中止となった。今年は昨年より半月早い8月下旬の開催。天候に恵まれることを誰もが願っている。
前戦チェコGPで2位になったダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、体調の回復とともにリザルトも向上。7月上旬の第8戦アメリカGP(ラグナセカ)で今季初優勝を達成。第9戦ドイツGPで3位。第11戦チェコGPで2位と表彰台の常連に復活した。昨年の大会は体調が完全ではなく、加えて、この大会からミシュランからブリヂストンにタイヤを換えるチャレンジのレースとなっていた。さらにハリケーンの影響もあって8位に終わったが、今年はほぼ万全の態勢で大会を迎えることになった。アメリカGP後に投入されたニューシャシーもセットアップが進み、レースをこなすごとにベストな状態に近づいている。今大会は今季2回目のアメリカ大会。ラグナセカに続き、今季2勝目の期待が膨らむ。
第10戦イギリスGPでMotoGP初優勝を達成したアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)も、イギリスGP以来、2戦ぶりの優勝と表彰台に気合を入れる。前戦チェコGPは、RC212Vのセットアップにやや苦しんだこともあり、決勝ではトニー・エリアス(Team San Carlo Honda Gresini)とし烈な3位争いを繰り広げたものの、表彰台にわずかに届かなかった。今大会は、その雪辱を期する大会となる。昨年、初めて経験したインディアナポリスでは、予選7位、決勝5位と健闘した。「インディアナポリスは得意なサーキット」と言いきるだけに、ペドロサとともに今季2勝目が期待される。
前戦チェコGP開幕前に左足首を骨折し、厳しい状態ながら10位と熱走を見せたランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)が、インディアナポリスを心待ちにしている。足の状態は日ごとに回復しているが、依然として完調にはほど遠い状態だ。しかし、初めて開催された昨年の大会では予選6番手とインディアナポリスを攻略してみせた。決勝はハリケーンの影響で13位に終わり、今年も左足首にハンディを抱えるが、得意とするサーキットで前戦以上の熱走を見せる意気込みだ。
シーズン中盤に入って調子を上げているアレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)も、今大会は気合満点。前戦チェコGPは、ヘルメットに蝶が入り込むという不運なアクシデントで順位を落とした。インディアナポリスは好きなサーキットと語るだけに、今大会は前戦の雪辱に闘志満々。チェコGPで今季初表彰台獲得となる3位表彰台に立ったトニー・エリアス(Team San Carlo Honda Gresini)も、2戦連続表彰台を狙う。大荒れとなった昨年の大会は12位だったが、「ブルノと同じくらいのリザルトは狙えるはず」と自信を見せる。予選、決勝ともにエリアスの走りに注目したい。また、過去3戦、ポイントを獲得しているガボール・タルマクシ(Scot Racing Team MotoGP)も、RC212Vで初めて走るインディアナポリスでベストリザルトを狙っている。
250ccクラスも、今大会はHonda勢の活躍に注目が集まる。10戦を終えて総合首位の青山博一(Scot Racing Team 250cc)。前戦チェコGPで総合6位に浮上したチームメートのラファエレ・デ・ロサ。総合8位にヘクトル・ファウベル(VALENCIA C.F. HONDA SAG)とトップ10に3人のHonda勢が名前を連ねる。昨年の大会はハリケーンのために中止となった。事実上、今年が初めての決勝レースとなるため、まったく予想のつかない展開となりそうだ。しかし、タイトル獲得に向けて着実に前進している青山は、「昨年、レースができなかったので、イコールコンディション。バイクのセットアップをいかに早く決めるかにかかっている」と今季4勝目にファイトをかき立てている。
前戦チェコGPで6位のデ・ロサは今季初表彰台に闘志。水温上昇のために10位と悔しいレースに終わったファウベルも今季2度目の表彰台を目標にする。前戦で3戦ぶりにポイントを獲得したラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)、過去3戦連続でポイント獲得の富沢祥也(CIP Moto-GP250)もインディアナポリスで今季ベストリザルトを狙っている。
コメント
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング4位)
「7月のラグナセカで優勝しているので、インディアナポリスもすごく楽しみにしている。この数戦は、ライバルたちがとても強いレースをしているので、これまで以上に全力を尽くさなければならない。しかし、前戦ブルノでつけられたトップとのギャップが我々の実力だとは思っていない。インディアナポリスは、2速、3速を使うコーナーが多く、特別好きなサーキットではないが、今回はいいレースができると確信している。昨年は大荒れの天候となった。決勝も赤旗中断になっているので、今年はいい天候で戦いたい。前戦チェコGPのあとのテストでバイクの状態はよくなっている」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング6位)
「インディアナポリスは2度目となる。初めて走った昨年は、とても気持ちよく走ることができた。また、サーキットのスケールの大きさ、巨大な観客席に圧倒された。前回のブルノは4位。表彰台まであと一歩だった。とてもがっかりしたが、気分をリフレッシュして今大会に挑む。インディアナポリスは、これまで走ってきたサーキットとは、レイアウトがまるで違う。バイクのセットアップを合わせていくのは簡単ではないし、初日は苦労することになると思う。しかし、コース幅の広いブルノに比べればいいスタートが切れると思う。今回はいいリザルトを残したい」
ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング7位)
「前回のブルノは、自分とチームにとって、喜ぶべきレースだった。左足を負傷しているにも関わらず10位でチェッカーを受けられた。そして総合でも7位に上がれた。このポジションを最終戦までキープすることを目標にしたい。まだ体調は100%ではないが、足の状態は日ごとによくなっているので、すごく楽しみにしている」
アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP ランキング11位)
「前戦チェコGPは、ヘルメットの中に蝶が入って順位を落としてしまった。それまではペースもよく、もっといい結果を残せる自信もあったし、本当に残念だった。ここに来て、走りはどんどんよくなっている。インディアナポリスは、いくつかの高速コーナーとテクニカルコーナーがあって、自分の走りに合っていると思う。昨年は雨のレースで序盤にペースを上げられず、リズムを取り戻したときに赤旗中断となってしまった。しかし、ひどい天候だったし中断の決定は正しかったと思う。今年はいい天気の中でレースをしたい」
トニー・エリアス(MotoGP ランキング12位)
「以前から、ブルノとインディアナポリスはいいレースができると言ってきた。前回のブルノでは、それを証明できたし、今回もいいレースになることを願っている。ブルノで表彰台に立てたことはうれしい。しかし、そういったレースをどうして今までできなかったのかと思うと残念で仕方がない。シーズン初めからトップ4にいることが目標だった。それを達成する自信もあった。それをブルノでやっと証明できたので、それを最終戦までキープすることが、これからの目標になる。今回も、金曜日からいいスタートを切りたい」
ガボール・タルマクシ(MotoGP ランキング19位)
「125ccで出場した昨年のインディアナポリスは左手首を骨折して、そのケガのためにシーズン終盤に大きな影響を与えた。インディアナポリスは、あまりいい思い出がないが、今年はMotoGPクラスで戦うので、気持ちを新たにして戦いたい。トラックには問題はないが、これまで課題になっているリアのグリップを向上させたい」
青山博一(250cc ランキング1位)
「前回のチェコは厳しいレースだった。それでも最後まで走りきってポイントを獲得し、総合首位をキープできてよかった。インディアナポリスは、昨年、ハリケーンが襲ったために250ccのレースが中止になった。フリー走行と予選を走っただけなので、今年のレースが、どんな戦いになるのか、まったく予想がつかない。しかし、これまで初めてのサーキットではいい結果を残しているので、今回もいいレースができると信じている。とにかく、昨年のような天候にならないことだけを願っている」
ラファエレ・デ・ロサ(250cc ランキング6位)
「インディアナポリスは独特なサーキット。昨年は125ccに出場していたから、レースを戦うことができた。中止になって走れなかった250ccクラスの選手たちに比べれば、少しは、アドバンテージになるかもしれない。ブルノは6位になれたし、内容もよかったので、とても気持ちよくインディアナポリスGPを迎えることができる」
ヘクトル・ファウベル(250cc ランキング8位)
「昨年の大会はハリケーンのために中止なって本当に残念だった。予選では2列目に並べたし、レースをしたかった。インディアナポリスは、本当に好きなサーキット。今年も、予選では昨年と同じ2列目、決勝では5位以内を目標にしたい。2年連続で昨年のような天候になるとは思えないし、問題を抱えて速く走れなかったチェコの雪辱を果たしたい」