第7戦 オランダGP

オランダGPプレビュー

1949年に始まったグランプリの歴史の中で、唯一、同一サーキットで開催され続けているのがオランダGPである。このアッセン・サーキットでのGPは今年で61回目を迎える。その長い歴史の中で、これまでいく度となくコースの改修が行われてきた。2006年には、コース前半部分の高速セクションが大きく変わり、それまでの5.997kmから4.555kmへ、コーナーも23から17へと大幅に短縮された。このようにアッセンは、最も古く、そして常に新しいサーキットである。

最高峰クラスでは、1966年にジム・レッドマンが初優勝。2006年にはニッキー・ヘイデン(現ドゥカティ)が勝ち、これまでHondaは同地で通算17回の優勝を飾っている。過去2年は優勝を逃しているだけに、今大会は今季初優勝に闘志を燃やしている。

過去3戦連続4位、今季初表彰台にあと一歩と迫っているアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)は、得意とするアッセンにファイトをかき立てられている。MotoGPクラスにデビューを飾った昨年の大会では、予選タイヤのアタックに失敗して予選11番手も、決勝では猛然と追い上げて5位でチェッカーを受けた。今年はブリヂストン(BS)のワンメイク。予選タイヤのパフォーマンスに影響されることなく、常に好グリッドを獲得しているドヴィツィオーゾだけに、今年は今季初表彰台、初優勝の期待が寄せられる。

前戦カタルニアGPで右足大たい骨、付け根部分の骨折を押して6位と熱走を見せたダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)も、今大会は2年連続表彰台と初優勝に闘志を燃やす。アッセンでは02年に125ccクラスでGP初優勝を達成。250ccでは2年連続2位。MotoGPクラスでは06年に3位、昨年は2位。今年は体調こそ万全ではないが、最高峰クラスでのアッセン初制覇を目指す。

開幕戦から安定したパフォーマンスを見せているランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)も、得意とするアッセンに闘志を燃やす。昨年の大会では予選でPP争いに加わって5番手。決勝では表彰台も期待されたが、オープニングラップの接触事故で転倒リタイアに終わっている。今年はその雪辱を期す戦いとなる。

開幕戦カタールGPの6位を最高位に、以後、厳しい戦いを続けているアレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)も、得意とするアッセンに気合を入れている。250cc時代は表彰台の常連。昨年の大会はスタート直後の多重クラッシュに巻き込まれ、遅れを取り戻そうとして痛恨の転倒を喫した。今年はここまでのうっぷんを晴らす意気込みだ。

アッセンとの相性が悪いトニー・エリアス(Team San Carlo Honda Gresini)も、昨年の大会で完走を果たして、嫌なジンクスと決別しているだけに、今季ベストリザルト獲得に闘志を燃やす。

この数戦、フリー走行、予選の好調を結果につなげられていない高橋裕紀(Scot Racing Team MotoGP)も、今大会は目標とするシングルフィニッシュを目指す。今大会MotoGPクラス2戦目を迎えるチームメートのガボール・タルマクシもポイント獲得を狙う。

250ccクラスは、前戦カタルニアGPで2位になり、3戦ぶりに表彰台に立った青山博一(Scot Racing Team 250cc)が、2戦連続表彰台と今季2勝目を狙う。アッセンでは過去4位が最高位と、これまで表彰台に立ったことがないだけに、気合も満点。このコースを得意とする、総合7位のラファエレ・デ・ロサ(Scot Racing Team 250cc)、総合8位のヘクトル・ファウベル(VALENCIA C.F. HONDA SAG)の走りにも注目。ラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)、富沢祥也(CIP Moto-GP250)も今季ベストリザルトを狙う。

コメント

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング4位)

「前戦のバルセロナは、決勝レースはもちろんのこと、月曜日のテストでも成果があり、今回のレースをすごく楽しみにしている。バイクの状態もよく、自信もある。過去3レース、表彰台にあと一歩だった。トップとの差も確実に縮まっているので、今度こそ表彰台に立ちたい。アッセンは大好きなサーキット。コースが変更されてから4年目。新サーキットになってからアッセンの魅力は少し失われたが、それでも好きなサーキットだ。昨年のレースは予選11番手から決勝で5位まで追い上げることができた。特に序盤はトップグループに絡めたので、今年はもっといいレースができるはずだ。アッセンは前半と後半で違う走りを要求される。前半のスローセクションと後半の高速セクションをうまく攻略しなければならない。今回は、自分とチームの期待に応えたい」

ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング5位)

「前回のレースの後、休養に努めた。ケガの回復のためには1週間はあまりにも短い。しかし、前回のカタルニアGPは疲れきってしまったし、そのときに比べれば身体の状態ははるかにいい。今回は痛み止めの注射を打たずに走ってみようと思っている。アッセンでは、02年に125ccで優勝しているし、その後も、250ccとMotoGPクラスで表彰台に立ってきた。コースが改修されてから、アッセンのイメージはいくらか変わったが、ここで速く走るためにはいいセットアップが必要になる。とにかく今は、コースに出て走ることを楽しみにしている」

ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング9位)

「アッセンはシーズンを通じてすばらしいサーキットの1つだ。コースが改修されたことでアッセンらしさが多少なくなったが、新しいサーキットも大好きだ。これまで表彰台に立ったことはないが、思い出に残るレースをしてきた。昨年もいい状態で決勝に挑んだが、スタートしてすぐにロッシ(ヤマハ)にぶつけられて転んでしまい残念だった。アッセンのストレートはそれほど長くないが、自分が得意とする高速コーナーが多いので楽しみだ。この数レース、バイクの状態もよく、今回もトップ10内でフィニッシュしたい」

アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP ランキング13位)

「アッセンは大好きなサーキット。そして2連戦となる次のラグナセカも好きなので、この2つのレースをすごく楽しみにしている。ここまでは、あまりいい結果を残せていないが、トップとの差は確実に縮まっている。セットアップも着実によくなっているし、今回はそれをリザルトで証明したい。250cc時代には、ここで何度も表彰台に立った。MotoGPクラスにスイッチした昨年は転倒と残念な結果だったので、今年はきっちりと完走して結果を残したい」

トニー・エリアス(MotoGP ランキング14位)

「アッセンでは今まで何度も苦い思いをしている。05年にはレースでミスをし、06年にはフリー走行で転んで肩を痛めた。そして07年もフリーで転び、足を骨折している。しかし、昨年は12位でフィニッシュでき、嫌なジンクスにも終止符を打つことができた。これまでケガは多かったが、アッセンは大好きだ。今年は、ここまで思うような結果を残せていないが、前回のレース後のテストでいいセッティングを見つけた。それをアッセンで確かめたい。すごく楽しみにしている」

高橋裕紀(MotoGP ランキング18位)

「前回のカタルニアはオープニングラップで接触して、転倒リタイアに終わり残念だった。しかし、この数戦、走り自体はすごく上向いているし、アッセンでは、この数戦のフィーリングのよさを結果につなげたい。カタルニアでケガをした右手中指の状態はかなり回復した。ブレーキをちゃんと握れると思う。前回のカタルニアではフロントのセッティングがよくなった。そのデータを基に今回はさらによくなるとスタッフに言われている。すごく楽しみ。ここから2連戦で、とりあえずの目標となっているシングルフィニッシュを達成したい」

ガボール・タルマクシ(MotoGP ノーポイント)

「前回のカタルニアGPはすごく自信になったし、レース後のテストもすごく充実していた。今はすべてが新しいチャレンジになっているが、今のように着実に前進していけたら、MotoGPでも十分に戦えると信じている。初めて乗ったRC212Vは、これまで経験したバイクとは、まるで違った。CBR1000RRで練習したけれど、比べようがないほどだ。初めて乗ったときは速すぎて怖かったが、同時に興奮した。MotoGPを経験したら、もう250ccには戻れないかもしれない」

青山博一(250cc ランキング2位)

「アッセンは難しいサーキットだが、大好きなコースだ。前回のカタルニアは気温が高く、水温が上がってエンジンには厳しかったが、アッセンは涼しいので、エンジンにはいいと思う。ここの最大の問題は不安定な天候。この数戦は、ドライでもウエットでもちゃんと走れている。セッティングも出ているので心配はしていないが、できることならドライできっちりと3日間を走りたい」

ラファエレ・デ・ロサ(250cc ランキング7位)

「前回のカタルニアは、エンジンのオーバーヒートに苦しんだが、アッセンはカタルニアより涼しいので問題はないと思う。コースレイアウトも、カタルニアよりアッセンの方がHondaに合っていると思うし、すごく楽しみだ。昨年、125ccのレースは後方グリッドから追い上げて10位でチェッカーを受けた。ラップタイムもよかったので、今年はどんなレースができるのか楽しみだ」

ヘクトル・ファウベル(250cc ランキング8位)

「アッセンは大好きなサーキット。ここでは何度も表彰台に立っているし、楽しみにしている。昨年は11位だったが、ここはHondaとの相性がすごくいいと思うし、Hondaのパフォーマンスをきっちりと生かすレースをしたい」

富沢祥也(250cc ランキング17位)

「フランス、イタリアで転倒リタイア。前回のカタルニアはトラブルでリタイアと3戦連続でチェッカーを受けていないので、今回は絶対にフィニッシュしたい。できれば10位以内を目標にがんばりたい。この数戦経験してきたサーキットに比べるとアッセンは、アップダウンもなく、自分としては攻略しやすい感じがする。3日間、転倒なく走りきりたい」