第5戦 イタリアGP

イタリアGPプレビュー

第4戦フランスGPから1週間のインターバルを経て、第5戦イタリアGPがムジェロ・サーキットで開催される。ムジェロはアップダウンに富む一周5.245kmのハイスピードコース。サーキットに求められる要素がすべて盛り込まれているといわれ、選手はもちろん、観客からも絶大な支持を集めるサーキットのひとつだ。

最大の見どころは、下りこう配の最終コーナーから1.1kmのホームストレート。ここでマークされる最高速はシーズンを通じてナンバー1。平均時速もオーストラリアGPが行われるフィリップアイランドと並んで170Km/h前後とシーズンで1、2を争う。さらに、フィニッシュラインを6速で駆け抜けるため、チェッカーを受けるまで勝負の行方がわからないコースとしても知られ、ムジェロの超高速バトルは観客を大興奮の渦に巻き込む。ただでさえ熱狂的なイタリア人。サーキットに集まったファンを興奮させる仕掛けが次々に待ち受けている。

過去7年は、Honda時代の2勝を含めバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)が7連勝と圧倒的な強さを見せている。今年も地元ファンの声援を背にロッシが優勝を狙うことになるが、1993年以降、ムジェロで通算11勝を挙げているHonda勢としては、6年ぶりに優勝を奪還する意気込みだ。

Honda勢は、Team San Carlo Honda Gresini、LCR Honda MotoGP、Scot Racing Teamと3チームがイタリアンチーム。Repsol Honda Teamのアンドレア・ドヴィツィオーゾもホームGPを迎えるだけに、Honda勢のモチベーションは高い。総合6位のドヴィツィオーゾは、今大会も初表彰台、初優勝を狙う。前戦フランスでは、チームメートのダニ・ペドロサと壮絶な表彰台争いを繰り広げた。最終ラップでペドロサにかわされて今季初表彰台を逃したが、今大会はペドロサとのW表彰台に闘志を燃やす。

前戦フランスGPでは、ウインターテストで負った左ヒザのケガからの回復を見せたペドロサが今季初PPを獲得。不安定な天候となった決勝では惜しくも3位に終わったが、完全復活を感じさせた。ペドロサは第2戦日本GPで今季初表彰台、第3戦スペインGPで2戦連続表彰台に立ち、総合4位に浮上した。そしてフランスGPで3戦連続で表彰台に立ち、首位のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)、ロッシ、ケーシー・ストーナー(ドゥカティ)に続き総合4位をキープ、トップに9点差に迫った。ウインターテストのケガというハンディキャップを見事にリカバーしたペドロサ。ムジェロは125cc時代から大好きなサーキットだというだけに、上り調子の今大会では、イタリアGP初制覇を目指す。

前戦は地元GPながら不完全燃焼に終わったランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)、フラッグ・トゥ・フラッグとなり、バイクを乗り換えてから調子が出たというアレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)は、今大会、フランスGPのセッティングでスタートする。スペインGPの後に腕の手術を受けて前戦は苦戦したトニー・エリアス(Team San Carlo Honda Gresini)も今回は復調。チームのホームGPとなる高橋裕紀(Scot Racing Team MotoGP)も気合満点。すべてのHonda勢が、このレースを大きなターニングポイントにしようと気合を入れている。今年のHonda RC212Vは、全チームがニュウマチックバルブを搭載し、改良を重ねたエンジンとなっているだけに、追い風になることは確実だ。

250ccクラスの戦いも熱くなりそうだ。総合2位につける青山博一(Scot Racing Team 250cc)、総合5位のラファエレ・デ・ロサ(Scot Racing Team 250cc)にとってはチームのホームGP。このコースをホームとするアプリリア、ジレラ勢との戦いが注目される。前戦フランスGPは、250ccクラスにとって今季初のウエットレースとなった。予選まで順調にセットアップを進めながら、決勝で不完全燃焼に終わった青山は、今大会はその雪辱を期す。チームメートのデ・ロサは、ホームGPで今季初の表彰台に闘志を燃やす。前戦フランスGPで今季初表彰台に立った総合10位のヘクトル・ファウベル(VALENCIA C.F. HONDA SAG)、フランスGPで今季ベストリザルトの5位でフィニッシュしたラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)、転倒リタイアに終わった富沢祥也(CIP Moto-GP250)も気合満点。250cc、MotoGPクラスのHonda勢の活躍に注目したい。

コメント

ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング4位)

「ムジェロは、コースレイアウトがエキサイティングで観客も熱狂的。シーズンを通じて最高のグランプリのひとつだと思うし、いつも楽しみにしている。身体の状態もどんどんよくなっている。前回のフランスGPの走りには自分でも満足している。特にムジェロは、体力を要するコースなので、身体の状態は重要だからね。今回はさらによくなっているし、自分にとっては大きなプラスになる。4戦を終えて総合4位。ウインターテストができなかったこと、左ヒザのケガのことを考えれば悪くないポジションだと思う。チームメートはもちろんのこと、ここがホームGPになるチーム、選手は多い。厳しい戦いが待ち受けていると思うが、それだけにやりがいはある。今回もベストを尽くしたい」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング6位)

「ムジェロは自分にとって特別なレース。とにかく、ここでレースをするということは、自分にとって一大イベントだからね。サーキットはもちろんのこと、熱烈なファンも食べ物も、なにもかも……。ムジェロがあるトスカーナ地方のすべてに敬意を払わなければならない。ムジェロには、これまでたくさんの思い出がある。ムジェロを速く走るためには、リズムよくバイクに乗らなければならない。しかし、攻略しなければならないコーナーがたくさんあって、それが一番難しい。ムジェロはホームGPだけれど、ここは一年に一度レースで走るだけなので、初日はセットアップに集中しなければならない。ここはただでさえ体力的に厳しいコースなのに、バンピーな路面が厳しさに一段と拍車をかける。ムジェロは本当に特別なレース。地元ファンの期待に応えたい」

ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング10位)

「ムジェロは得意なサーキットなので楽しみにしている。シーズンを通じてもっとも長いストレートがあり、バイクのセッティングをきちんと決めないと、ここでバシバシ抜かれてしまうからね。エンジン、車体ともに、ここはマシンのセットアップが本当に重要になる。ムジェロは高速コーナーがたくさんあって、とてもエキサイティング。今年のRC212Vは、昨年に比べてエンジンパフォーマンスが上がっているので、すごく楽しみだ。自分にとってホームGPとなった前回のル・マンの結果には、本当にがっかりした。今回はチームの地元なのでベストを尽くす。トップ10フィニッシュを目標にがんばりたい」

トニー・エリアス(MotoGP ランキング11位)

「前回のフランスは完ぺきな体調でレースに臨めなかった。スペインGPの後に腕の手術を行い、完全な状態ではなかったからなのだが、あれから一日2回の物理療法を行い、かなり回復した。ここは体力の必要とするサーキットなので、腕がよくなっていることを願っている。今年は開幕戦から着実に進歩、前進してきたと感じているが、それがなかなか結果につながらない。今大会はチームのホーム大会になるのでベストを尽くす。今大会をきっかけに、いい流れに変えられればと思っている」

アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP ランキング12位)

「今年はなかなか思い通りにレースを戦えていないが、今回は自分にとって特別な大会になるし、今大会をターニングポイントにしたい。前回のル・マンは、ウエットからドライになる難しいコンディションとなった。スリックタイヤを装着してからすごくフィーリングがよかったし、今回はあのときのセッティングをベースにスタートしたい。250cc時代にムジェロでは3回表彰台に立っているし、MotoGPクラスでも昨年は4位でフィニッシュすることができた。自分にとってホームGPはミサノで行われる『サンマリノGP』だが、ムジェロにも大勢のファンがかけつけてくれる。ここから上昇ムードに乗れればと思っている」

高橋裕紀(MotoGP ランキング17位)

「250cc時代からムジェロは大好きなサーキット。このコースは、鈴鹿と同じで、すべての要素が含まれているし、楽しいサーキットだ。アップダウンに富み、高速コーナーをはじめ、すべてのコーナーがある。250ccで戦った昨年は、ラスト4周で転倒してしまった。表彰台を狙える位置にいたので悔しいレースだった。今年は、いいレースができればと思っている。前回のフランスは難しいコンディションになって、路面が乾き始めてからは不完全燃焼のレースになった。ムジェロも雨の多いサーキットだけれど、RC212Vで走るのは初めてなのでいい天気になることを願っている。今大会はチームにとってホームGP。みんなが喜んでくれるようなレースがしたい」

青山博一(250cc ランキング2位)

「ムジェロは大好きなサーキットで、自分自身、いつもいいリザルトを期待している。しかし、ここではアプリリア勢にアドバンテージがあって、いつも厳しい戦いになる。今年もそうなることは間違いない。前回のフランスGPは、決勝レースが雨になって思うような走りができなかった。予選までは順調にセットアップが進んでいただけに残念だった。4戦を終えてバウティスタ(アプリリア)と1点差で総合2位にいるけれど、ここからは、チャンピオンシップのことは考えず、一戦一戦に集中していきたい。今回はチームのホームGP。もちろん、最高のリザルトを狙っていきたい」

ラファエレ・デ・ロサ(250cc ランキング5位)

「ムジェロはシーズンを通じてもっとも難しく厳しいサーキットのひとつ。バイクのセットアップは難しいけれど、125ccのころからここは大好きなサーキットなのでがんばりたい。250ccで走るのは初めてだが、すごく楽しみにしている。今回は僕にとってもチームにとってもホームGP。楽しみにしているし、ベストを尽くしたい」

富沢祥也(250cc ランキング15位)

「前回のフランスGPは、1周目に転倒してしまい、本当に残念だった。自分では特別にペースが速すぎたとは思わなかったのだが、シケインの立ち上がりでリアから転んでしまった。開幕から3戦連続でポイントを獲得したし、フランスはチームの地元大会なので、きっちりと完走してポイントを取りたいと思っていただけに残念だった。ムジェロは、前回のル・マンと同じで初めて走るが、テレビで見ているだけでも興奮するサーキット。すごく楽しみにしている」