第1戦 カタールGP

カタールGPプレビュー

バイクレースの最高峰、ロードレース世界選手権(WGP)第1戦カタールGPが、10日、ドーハ郊外のロサイル・インターナショナル・サーキットで開幕する。昨年は史上初のナイトレースとして世界中の注目を集めた。今年も1000本の照明灯の下、砂漠に中に煌々と浮かびあがるサーキットで、一年のスタートが切られる。

Hondaは今季、Repsol Honda Teamをはじめ、すべてのチームにニュウマチックバルブ仕様のエンジンを投入、開幕戦に照準を定めて着々とセットアップを進めてきた。年明けの合同テストは、2月のマレーシアを皮切りに、3月にはカタールとスペイン・ヘレスで行われた。この3回のテストでHonda勢の4チーム6選手は、タイトル奪還に向けて09年型ニューマシンのポテンシャルを引き出してきた。開幕戦の舞台となるロサイルでは全チームがテストをこなしているだけに、初日からレベルの高い戦いが繰り広げられそうだ。

そのカタールテストで転倒を喫して左足を負傷、以後のテストをキャンセルした昨年総合3位のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が、開幕戦カタールGPに出場する。まだ完全な状態ではなく、今大会は厳しい戦いが予想されている。しかし、昨年も右手を負傷しながら開幕戦で3位表彰台に立っているだけに、今年の戦いぶりに注目される。

昨年、ルーキーながら総合5位とすばらしい走りを見せたアンドレア・ドヴィツィオーゾが、今年はRepsol Honda Teamに加わった。最高峰クラスのデビュー戦となった昨年のカタールGPでは、表彰台にあと一歩に迫る4位。そして、シーズン終盤戦のマレーシアGPでは初表彰台に立ち、総合でも5位と大きな成長を見せた。ワークスチーム入りしたドヴィツィオーゾが今年はどんな走りを見せてくれるのか。大きな注目が集まっている。

2年ぶりにHondaチームに復帰したトニー・エリアス(Team San Carlo Honda Gresini)も大きな注目を集めている。昨年はシーズン中盤にすばらしい走りを見せたことでHondaチームへの復帰が決まった。ウインターテストでは、ワークスチームの2人とともに先行開発マシンを走らせ、マシンのセットアップに集中した。今年は、レースでもマシン開発面でも、Honda勢の中核選手のひとりとして重要な役割を果たすことになる。カタールGPは得意とする大会だけに、大きな期待を集めることになりそうだ。

エリアスのチームメートでHonda2年目のアレックス・デ・アンジェリスも、今年は大きな成長を見せてくれるに違いない。昨年は一発の速さで注目を集めたが、転倒も多く、総合順位では14位にとどまった。そのため、今年のウインターテストでは、一発のタイムよりもレースに向けたセットアップに重点を置いた。今年はMotoGPクラスの経費削減のためにテスト日数が削減された。そのため満足のいくテストはこなせなかったようだが、開幕戦から元気いっぱいの走りを見せてくれそうだ。

昨年、予選の速さで注目を集めたランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)も、今年はこれまでと違う戦いを見せてくれそうだ。今年からMotoGPクラスはブリヂストン(BS)のワンメイクレースとなる。ウインターテストで初めてBSタイヤを使ったデ・ピュニエは、バイクとタイヤの相性のよさを生かして、安定したラップタイムを刻んだ。一発の速さに安定性が加わったデ・ピュニエ。今年は予選だけでなく、決勝の走りでも注目を集めそうだ。

そして、250tクラスからMotoGPクラスにステップアップを果たした高橋裕紀(Scot Racing Team MotoGP)の活躍に期待したい。ウインターテストでは、MotoGPマシンのパワーに慣れることに重点を置き、徹底的に乗り込んだ。マレーシアよりカタール。カタールよりヘレスと着実にペースを上げ、トップグループとの差を縮めてきた。テスト日数の削減でルーキーには厳しいシーズン開幕となるが、250t時代はドヴィツィオーゾと互角の走りを見せるなど、大きなポテンシャルを秘める選手だけに、これからの成長に期待が集まる。まずは、開幕戦の戦いぶりに注目したい。

250tクラスも、今年はタイトル奪還が期待される。Honda Racing スカラーシップでWGPに参戦した青山博一(Scot Racing Team 250cc)が、4年ぶりにHondaチームに復帰した。ウインターテストでは常にトップタイムを争い、今季のチャンピオン候補のひとりに浮上した。また、新たに全日本選手権250t総合2位の富沢祥也(CIP Moto-GP250)が参加する。一発の速さには定評があるだけに、世界の舞台でその速さにどこまで磨きをかけるのか。今季注目される選手のひとりだ。昨年、大きな成長を感じさせたラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)も、今年は一段と速さに身につけた。ウインターテストでは青山をしのぐ速さをしばしば見せているだけに、今年は初表彰台が期待される。ウィライローのチームメートのヘクトル・ファウベル(VALENCIA C.F. HONDA SAG)、青山のチームメートのラファエレ・デ・ロサも速さに定評ある選手。層の厚くなったHonda 250tライダーたちの戦いに注目したい。

コメント

ダニ・ペドロサ

「カタールGPに出場できることが、何よりもうれしい。3月上旬に行った手術の経過がよく、期待していた以上に回復も順調だった。ケガをしたことで、フィジカル面に不安はあるが、これから、それを取り戻していかなければならない。自分がバイクに乗れなかった間も、チームは、僕が復帰したときのためにベストなリザルトを残せるよう全力で準備を進めてくれていた。開幕戦に出られるチャンスを得られたことが本当にうれしい」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ

「ワークスチームのライダーとして過ごした初めての冬は、実にエキサイティングだった。すべての準備はできた。あとはレースを戦うだけだ。カタールは、コースレイアウトが独特で、ロングコーナーで速いペースをキープするのが難しいが、好きなサーキットのひとつ。ナイトレースで行われる点でも特別なサーキットだ。これまでカタールではいい結果を残している。昨年のMotoGPのデビュー戦もすばらしいレースができた。そして3月のヘレスの合同テストでは、昨年11月に比べて大きく前進していることを感じた。とにかく、今大会はベストを尽くしたい」

ランディ・デ・ピュニエ

「今年のウインターテストは、チームにとっても自分にとっても、とても成果のあるものだった。Hondaとブリヂストンのパッケージは、とてもよくて、特にアベレージを高めることができた。カタールのレースは、とても楽しみにしている。ナイトレースは、気温もそれほど高くならないからね。2週間前のヘレスでは、レースに向けていいタイムも刻めた。セッティングをほとんど変えることもなく、タイヤテストに集中できた。すばらしい仕事をしてくれるスタッフたちと、今年も戦えるというのは大きな武器になる。開幕戦が楽しみだ」

高橋裕紀

「マレーシア、カタール、ヘレスと3回のテストをこなしてきたが、もっとテストしたかったというのが正直な感想だ。しかし、限られた時間の中で、チームと一緒に、やれることはすべてやれたと思う。タイム的には、満足のいくものではなかったが、マレーシアよりはカタール、カタールよりヘレスと着実にMotoGPマシンを乗りこなしているという実感はあった。いま、開幕戦の目標を語るのは難しいが、最低でもシングルでチェッカーを受けたい。第2戦が地元日本GPなので、もてぎにつながるようなレースにしたい」

トニー・エリアス

「ウインターテストは、決して順調ではなかった。正直、もっといい状態にマシンを仕上げて開幕戦に挑みたかった。しかし、問題点はクリアになっているし、開幕戦の舞台となるカタールは、データも十分にあるので心配はない。それ以上に、こうして再び、このチームで、Hondaのマシンで戦えることがうれしい。カタールのナイトレースはいつも以上に慎重を要するけれど、カタールでは、これまで2度フロントローに並んだことがある。自分にとってはいつも特別なサーキットだから、開幕をすごく楽しみにしている」

アレックス・デ・アンジェリス

「3月上旬のカタールテストでは、思ったほど気温が上がらず、タイヤのグリップに苦しんだ。あれから1カ月が過ぎているので心配はしていないが、前回のテストより気温が上がってほしい。今年のウインターテストは、走れる日数が少なく残念だった。最後のテストとなったヘレスの2日目が雨になったことも残念だった。最後に予定していたレースシミュレーションができなかったからね。開幕戦に向けて、そうした不安はあるけれど、レース本番は、テストとは違う緊張感と走りが要求される。とにかく、開幕戦を楽しみにしている」

山野一彦|Repsol Honda Team 監督

「ダニの足は完治していないが、開幕戦に出場することを決めた。事前テストで走り込みが十分にできていないし、仕上がりが遅れていることは否めない。しかし、持ち前の強い意志でダニは走ってくれると思うし、我々も最高のリザルトを残せるようにバックアップしていく。ドヴィツィオーゾは、まだ、ライバルに対して肩を並べるまでには至っていないと感じている。しかし、確実にステップアップしているし、今回も、少なからずヘルプできるアイテムを用意してきた。今年から走行時間が短くなり、3回のセッションをうまく使い、ベストな状態に仕上げていかなければならない。シーズンを通してみれば、今回は全17戦のひとつ。目標はタイトルを取ることであり、そのために今回も、現状でベストを尽くしたい」

青山博一

「ウインターテストで予定していたメニューは、すべてこなせた。開幕直前のカタールテストも、思ったよりも順調で、このままの調子で開幕戦に挑みたい。Hondaに乗るのは4年ぶりになるが、ウインターテストでは、改めてHondaのマシンの信頼性に驚かされた。トラブルは皆無だったし、走行に集中できた。ほかのチームに比べて、今年のチームは準備期間が短かったけれど、ここまでのテストで十分にばん回できたと思う。みなさんの期待に応えられるようなレースをしたいと思っている」

富沢祥也

「テストができたのは、スペインのヘレスとカタールだけだったが、この2回のテストだけでも、たくさん学ぶことができた。ブレーキング、コーナーリング、ライン取り……何もかもが、ああ、こうすれば速く走れるんだと気づかされることばかりだった。今は走るのが楽しくて仕方ない。カタールに来て、初めて夜の走行も経験した。今は何もかもが初体験の連続なので、緊張している暇もない。とにかく開幕戦は完走するこが目標です」

ラタパーク・ウィライロー

「今年のウインターテストは、とても順調だった。最初のレースとなるカタールで、その成果を発揮したい。今年のRS250RWにはすごく満足しているし、自分自身、いい結果を残せるのではないかと期待している」