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第12戦 チェコGP 第12戦 チェコGP

チェコGPプレビュー

シーズン後半戦のスタートとなる第12戦チェコGPが、15日から3日間、チェコ第2の都市ブルノで開催される。125ccクラスと250ccクラスは第10戦ドイツGP(7月13日決勝)から4週間、MotoGPクラスは第11戦アメリカGP(7月20日決勝)から3週間のサマーブレイクを経ての開催となる。十分に休養を取った選手たちが、元気いっぱいにサーキットに集結した。

ブルノサーキットは、1周5.403km。中速コーナーが連続するリズム感あふれるコースで、前半は下りセクション、終盤からはメインストレートに向けて一気に駆け上るレイアウト。マシンのバランスはもちろん、ライダーの技量が試されるテクニカルコースとなっている。随所にパッシングポイントがあり、選手たちの評判は良好だ。今年も後半戦のスタートとなる大会だけに、熱い戦いが繰り広げられそうだ。

チェコGPは、1965年にチェコスロバキアGPとしてスタート。1977年までは郊外の公道コースを使っていた。その後、10年のブランクを経て、1987年から現在のブルノ・サーキットに移り、チェコとスロバキアが分離した1993年からチェコGPとして開催されている。過去3年、チェコGPの優勝から遠ざかっているHonda勢だが、今年は必勝体制で挑む。

中でも注目は、総合3位のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)。第10戦ドイツGPの決勝で転倒して左手と右足を負傷。第11戦アメリカGPも初日のフリー走行こそ走ったものの、手の状態が悪く欠場を決めた。しかし、その後の3週間を経て、手は順調に回復。100%の状態ではないが、念願のタイトル獲得に向けて闘志を燃やしている。現在、総合首位のバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)との差は41点、同2位ケーシー・ストーナー(ドゥカティ)とは16点差。残り7戦で逆転を目指す。

その一方で、残念なニュースがひとつ。後半戦の巻き返しに気合満点のニッキー・ヘイデン(Repsol Honda Team)が、今大会を欠場する。8月上旬、トレーニングを兼ねて出場したスーパーモタードの大会でジャンプからの着地に失敗、右足を負傷したことで、今大会の出場を見合わせた。

前半戦を終えて総合5位と、ルーキーながらすばらしい成績のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(JiR Team Scot MotoGP)が、後半戦に闘志を燃やす。ブルノでは、125cc時代の2004年に2位、250cc時代は2006-2007年の2年連続で2位になっている。これまで優勝はないが、コンスタントに表彰台に立ってきたサーキットだけに、念願の初表彰台の期待が膨らむ。

中野真矢(Team San Carlo Honda Gresini)は、ニューマシンで今大会に挑む。前半戦はコンスタントにポイントを獲得して総合10位。ニューマシンは、サテライトチームに供給されるRC212Vの2009年型の先行開発を兼ねたもの。ニューマシンを手に入れ、中野もチームもモチベーションは高い。ブルノで中野は過去に、250cc時代の2000年に優勝を飾っている。かたや、チームメイトのアレックス・デ・アンジェリスは、ブルノで表彰台に立ったのは125cc時代に一度だけだが、大好きなサーキットと語り、今季初表彰台に意気込む。

ランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)にとっても、ブルノは250cc時代の2003年に優勝、2004年には2位になっている得意なサーキット。今季は第10戦ドイツGPで8位、第11戦アメリカGPで6位と着実にリザルトを上げているだけに、今大会で今季ベストリザルトが期待される。

250ccクラスの高橋裕紀(JiR Team Scot 250)は、前戦ドイツGPの後、鈴鹿8時間耐久ロードレースに出場。予選ですばらしいパフォーマンスを発揮し、決勝でも3位の座をほぼ手中にしながら、ペアライダーのジョナサン・レイが痛恨の転倒を喫し、惜しくも表彰台を逃した。その雪辱に燃える後半戦のスタートを迎える高橋の、鈴鹿8耐で成長した走りに注目したい。ラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)は今季の中盤戦、厳しいレースが連続した。なかなかトップ10に食い込めなかっただけに、後半戦の巻き返しに闘志を燃やしている。

コメント

ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング3位)

「3週間の夏休みは、ケガを回復させるチャンスを与えてくれた。前回、ラグナセカの欠場を決めてスペインに戻ったとき、10日間の完全休養が必要だと言われた。その間、何もできなかったので、マヨルカ島で休養を取り、左手と右足は順調に回復した。手の痛みはまだあるが、動きはよく、腫れもない。足もテーピングしている状態だが、ブルノに向けて自転車に乗ってリハビリをしてきた。ブルノはアップダウンに富んだオールドスタイルのコースで、とてもおもしろい。中速コーナーが多く、マシンをスムーズに操ることが要求される。今年は路面の全面改修を受けているので、まずは路面の状態とグリップをチェックするところから始めなければならない。このサーキットはコーナーリングとブレーキの安定性のバランスを取るのが難しく、セットアップはとてもデリケートだが、後半戦のスタートとなるレースなので、いいレースにしたい」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング5位)

「ブルノはいろいろなタイプのコーナーがあり難しいが、とても楽しいサーキットだ。過去2年、250ccクラスで2位になっているが、MotoGPクラスでは初めて走ることになる。特別得意なサーキットではないし、今年は路面が全面改修されていると聞いているので、とにかく走って見ないことには何とも言えない」

ニッキー・ヘイデン(MotoGP ランキング8位)

「ケガをしたのは、右足の体重を支える部分。とてもデリケートな箇所で、ここで無理をすると年内いっぱい影響が残るという医者の判断もあり、欠場を決めた。欠場するという決断を受け入れるのはとても辛いことだったが、次戦のミサノに向けて回復に努めたい。チームには本当に申し訳ないと思うし、謝罪したい。ケガをしたのは、8月1日にロサンゼルスで開催されたスーパーモタードでHRCの許可をもらい参加した。夏休み期間中だったし、後半戦に向けて気持ちを高めるためにと思って走ったのだが、とても残念な結果になった」

中野真矢(MotoGP ランキング10位)

「今大会は、ニューマシンでの参加となる。自分にとってもチームにとっても大きなチャレンジとなる。決勝に向けて、2日間の4セッションはニューマシンのセットアップに努め、ポテンシャルを引き出すことに全力を尽くしたい。後半戦をこういう形でスタートできることにすごく興奮している。Hondaやチームに感謝したい」

アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP ランキング13位)

「ブルノはコース幅が広く、いろいろなコーナーがあって大好きだ。この3週間、ラグナセカで痛めた左手親指と背中の回復に努めた。状態がよくなってからトレーニングも十分に行ってきたし、今回は100%の状態でレースに挑める。今年は路面が全面改修されていると聞いているが、ブリヂストンタイヤはここでテストをしているので、何も心配していない」

ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング14位)

「ブルノは250cc時代の2003年に優勝している得意なサーキットなので、ベストリザルトを狙いたい。前回のラグナセカはマシンのセットアップが決まって、方向性を見つけることができ、後半戦に向けて自信がついた。今大会と次のミサノは暑いレース。夏休みの間に体調を整えてきたので楽しみだ」

山野一彦|Repsol Honda Team 監督

「前回アメリカGPの決勝をキャンセルしたダニは、その後、順調に回復。今大会はほぼ100%の状態で挑むことができるのではないかと期待している。とにかく、過去2戦ノーポイントに終わっているので、今大会から巻き返しに全力を注ぎたい。ダニも全戦全勝の意気込みで挑んでくれるに違いない。ニッキーは、残念ながら今大会を欠場する。右足の踵を痛め、ステップに加重をかけると悪影響がありそうということで、次戦のミサノに向けて回復に努めてもらうことになった。誰よりもニッキー本人が一番がっかりしている。ファンのみなさんに申し訳ないと語っていた」

高橋裕紀(250cc ランキング9位)

「GPデビューして過去3年、ブルノでは一度も完走していないので、今年は完走することを第一目標にしたい。前回のドイツGPの後、鈴鹿8耐に出たので夏休みは短かった。今年の前半戦は、8耐も含めてアンラッキーなレースが多かったので、後半戦の最初のレースとなるブルノは、いいレースにしたい。今年はブルノでのテストを行わず、ぶっつけ本番のレースになるが、表彰台を狙っていきたい」

ラタパーク・ウィライロー(250cc ランキング14位)

「この夏休みはタイに戻り、家族と一緒に過ごし、楽しい休暇を取ることができた。休みの間には、いくつかの取材を受け、大学にも出席した。前半戦は転倒の影響で体調が完全ではなかったが、後半戦は100%の状態で挑むことができる。前回のドイツGPが残念な結果だったので、後半戦のスタートとなる今大会は、いいレースをしたい」