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第10戦 ドイツGP 第10戦 ドイツGP

ドイツGPプレビュー

ヨーロッパからアメリカへ、大陸を移動する今季最もハードな2連戦。その最初のレースとなる第10戦ドイツGPが、11日、ドレスデン近郊のザクセンリンクで開幕する。ザクセンリンクは伝統あるサーキットで、1927年に初めて公道レースが行われた。その後、1961〜72年には「東ドイツGP」が開催され、東西ドイツ統合後にコースの全面改修を受け、98年からドイツGPの舞台として定着した。今年で11回目を迎える。

この11年の間に、ザクセンリンクは2度のコース改修を受けた。現在は3.671kmと距離が伸びたが、グランプリサーキットでは、アメリカGPが開催されるラグナセカに次いで2番目に短いコースである。自然の地形を利用したコースは高低差が大きく、前半はスローコーナー、後半はハイスピードコーナーが続く。機敏な運動性とレスポンスのいいエンジン。ライダーには、シビアなスロットルワークが要求される。過去11回の大会でHonda勢は、6回の優勝を飾っている。

昨年の大会では、予選2番手から決勝に挑んだダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が、見事、優勝を飾った。昨年は30℃を超える猛暑。ライダーにもタイヤにもマシンにも厳しい戦いとなったが、ペドロサはライバルを圧倒して、独走優勝。今季、第9戦オランダGPを終えて、2勝と2位3回、3位3回と安定した速さで総合首位に浮上している。しかし、総合2位のバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)との差はわずか4点、総合3位のケーシー・ストーナー(ドゥカティ)とも29点差と、厳しい戦いを繰り広げているだけに、ドイツGP2連覇と今季3勝目を達成して、さらにリードを広げる意気込みだ。

昨年の大会で3位表彰台に立っているニッキー・ヘイデン(Repsol Honda Team)も、今季初表彰台に闘志を燃やしている。ニュウマチックバルブ・エンジン搭載マシンで参戦するのは今大会が3戦目。ニューエンジンのデビュー戦となった第8戦イギリスGPでは、マイナートラブルで7位、前戦オランダGPでは4位と惜しくも表彰台を逃している。しかし、レースをこなすごとにポテンシャルを高めているニュウマチックバルブ・エンジン。ザクセンリンクでは、04年から4年連続で表彰台に立っているヘイデンだけに、今季初表彰台はもちろん、今季初優勝への期待が膨らむ。

過去3戦、表彰台にあと一歩の走りを見せているアンドレア・ドヴィツィオーゾ(JiR Team Scot MotoGP)も、ドイツGPに向けて気合を入れている。ザクセンリンクは、125cc、250cc時代を通じて表彰台に立ったことがない数少ないサーキットの1つ。これまで苦手としてきたサーキットだが、RC212Vではどのサーキットでもすばらしい走りを見せてきているだけに、最高峰クラス初表彰台、ドイツGP初表彰台に挑む意気込みだ。

このサーキットを最も得意とするアレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)も初表彰台を狙う。2002年、03年は125ccクラスで表彰台に立ち、04年以降は250ccクラスで4年連続と、ザクセンリンクでは過去6年、表彰台に立ってきた。最高峰クラスにチャレンジを開始した今年は、第6戦イタリアGPで4位と初表彰台にあと一歩に迫った。しかし、この数戦は、フリー走行と予選の好走を結果につなげられていないだけに、相性のいいコースでの雪辱を期す。

前戦オランダGPで転倒リタイアに終わったランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)。一発の速さでは常に大きな注目を集める存在だが、なかなか結果につなげることができない。ミスによる転倒や前戦オランダGPのように後続に追突されるという不運の転倒もあるが、「今度こそ目標のトップ5でフィニッシュ」と気合を入れている。

中野真矢(Team San Carlo Honda Gresini)にとっても、ザクセンリンクは得意とするサーキットの1つ。250cc時代と500cc時代には表彰台に立ち、MotoGPクラスでもトップ6でフィニッシュしているレースが多い。今年は、シーズン中盤戦に入って安定したリザルトを残してきた。過去4戦はシングルフィニッシュを果たし、前戦オランダGPでは今季ベストリザルトとなる8位。今大会は、シーズン前半戦の目標となるトップ6を狙う。

250ccクラスは、高橋裕紀(JiR Team Scot 250)がドイツGP2度目の制覇に気合を入れている。一昨年の大会では、すばらしい追い上げのレースで見事優勝を飾った。昨年の大会は負傷した足の状態が完ぺきではなく、さらにセッティングにも失敗して8位に終わっている。今年はその教訓を生かし、セットアップを完ぺきにこなして優勝争いに絡む意気込みだ。前戦オランダGPのあとには、鈴鹿8時間耐久ロードレースのために鈴鹿サーキットで行われたテストに参加するなど多忙なスケジュールだが、予選では今季初のフロントロー、そして決勝では優勝への期待が膨らむ。

コメント

ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング1位)

「去年、優勝している大会なので、今年も優勝を目指したい。RC212Vのパフォーマンスを上げるために毎戦全力を尽くしてきたが、今回も厳しい戦いになることを覚悟している。ザクセンリンクは、全体的にスローコーナーが多いが、コース終盤のハイスピードセクションは大好きだ。この大会は、いつもスタンドがあふれるほどの大勢のファンが来てくれる。雰囲気もいいので楽しみにしている。ザクセンリンクは、以前はバンピーなコースだったが、昨年、舗装をやり直してから、とてもよくなった。ここは周回数が多いので、バイクのセットアップがとても重要になる。左コーナーが多いのでタイヤの選択も難しい。このサーキットでは、とにかく、スムーズに乗ることが重要になる」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング6位)

「これまで、ザクセンリンクは苦手なサーキットだったが、今年は、このサーキットで初めて好リザルトを得られるような気がする。ここはタイトなコーナーが多く、スピードも遅く、ミニバイクコースのような感じだ。250cc時代は、どのコーナーでもバイクを押さえつけなければならなかったが、今年は250ccより重く大きいMotoGPマシンだからね。さらに難しいライディングが要求されるが、とても楽しみにしている」

ニッキー・ヘイデン(MotoGP ランキング7位)

「このコースはすごく特殊だが、自分にとってはベストサーキットの1つだ。コース前半の下りセクションは、フロントのフィーリングがとても重要になる。後半のハイスピードの下りセクションは、その入り口のコーナーでいかにスピードに乗せられるかにかかっている。昨年は、路面が改修されて、タイヤの選択が難しかった。バイクの状態はとてもいい。エンジンもよく走っている。ここは左コーナーばかりだが、ダートトラックをやっていたから左コーナーは得意だ。今回はいい結果を残したい」

中野真矢(MotoGP ランキング10位)

「この数戦、確実に調子は上がっている。バイクの状態もよくなっている。ザクセンリンクは、過去、まずまずの成績を残してきているし、好きなサーキットだ。前回のオランダGPではセカンドグループで戦えたので、今回も上位グループ入りを目指し、6位以内でフィニッシュしたい。このサーキットは、左コーナーが多く、フロントもリアも、左側の負担が大きい。反対に右側のグリップが上がらず、そのバランスを取るのが難しい。早くセットアップを決めて、決勝ではベストリザルトを狙いたい」

アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP ランキング15位)

「ドイツGPは、自分にとって特別なグランプリ。ここで初めてPPを取ったし、2002年からずっと表彰台に立って来たからね。ここはすごいテクニカルコースで車体のセットアップがとても重要になる。かつ、パワフルなエンジンが必要だ。この数戦、せっかくのいいパフォーマンスを結果につなげられていないので、このレースには自分でもすごく期待している」

ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング17位)

「このサーキットはほかにはないレイアウトで、前半部分はスローコーナーが続き、後半はハイスピードセクションとなっている。去年は、4番手からスタートして最終ラップでトラブルが出るまでいいレースができた。過去3戦、バイクの状態はすごくよくなっている。セットアップも決まってきた。前回のオランダGPでは、ドライもウエットもよかった。前回のレースはバレンティーノ(ロッシ)と接触して転倒、5位以内でチェッカーを受ける作戦が台無しになってしまった。今回は好リザルトを残したい」

山野一彦|Repsol Honda Team 監督

「前回のオランダGPで、ニッキーは最後のトラブルのために1つポジションを落としてしまった。こんなことが二度とないよう、総力を挙げて解決に取り組んできた。今大会はいいリザルトを残せると確信している。ダニのマシンに大きな変更はないが、いくつかニューパーツを投入する。昨年、優勝しているサーキットなので相性は悪くないと思うので、初日のフリー走行からセットアップに集中したい。心配なのは天候。ドニントン、アッセンと天候が不安定だったが、今回は、天候に左右されないようにマシンを仕上げていきたい。今大会は、優勝はもちろん、2人とも表彰台に立てるよう、チーム一丸となって戦っていく」

高橋裕紀(250cc ランキング8位)

「ここでは2006年に優勝しているし、今年も勝てるように全力を尽くしたい。去年は、足の状態が完全ではなかったし、いい結果を残せなかった。テクニカルコースでハイスピードコーナーもある。とにかくコーナーが連続するし、常に集中力を要求される。ここは、Hondaのバイクに合っていると思う。この数戦、悔しいレースが続いているし、今度こそという気持ちだ。表彰台、優勝を狙っていく」

ラタパーク・ウィライロー(250cc ランキング14位)

「このコースは大好きだが、去年は、予選で転倒した影響で、決勝レースをちゃんと走ることができなかった。カタルニアGPの転倒で、この数戦、体調が完ぺきではなかったが、今回は身体の状態もいい。いい結果を残したい」