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第9戦 オランダGP 第9戦 オランダGP

オランダGPプレビュー

今季2度目の2連戦。先週の第8戦イギリスGPからわずか3日のインターバルを置いて、第9戦オランダGPが、26日にアッセン・サーキットで開幕する。オランダGPは土曜日に決勝が行われるため、チームにとってはハードな移動となった。アッセン大会は、1949年に始まったグランプリの歴史の中で、唯一、同一のサーキットで行われ続けている伝統あるレース。今年で60回目を迎える。

その長い歴史の中で、アッセン・サーキットは幾度となくコースの改修が行われてきた。2年前には、コース前半部分の高速セクションを大幅に改修、タイトなコーナーが連続する区間へと生まれ変わった。一周の距離も、5.997kmから4.555kmへ短縮、コーナーの数も23から17となった。シーズンを通じて屈指の難コースだったアッセン・サーキットだが、近代的なサーキットへと生まれ変わっている。最高峰クラスでは、1966年にジム・レッドマンがHondaで初優勝。以来、Hondaは計17回の優勝を飾っている。今年は記念すべき60回目の大会。前戦イギリスGPで優勝を逃しているHonda勢だけに、今大会は、勝利に闘志を燃やしている。

前戦イギリスGPで3位のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、第7戦カタルニアGPで優勝した翌日のテストで転倒、腰と肩を痛めていた。不安定な天候に加え、初日のフリー走行で転倒した影響もあり、予選で9番手に沈んだことが厳しいレースにした。優勝したのはケーシー・ストーナー(ドゥカティ)。2位にバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)が入った。総合首位のロッシにリードを広げられ、優勝したストーナーにポイント差を縮められているペドロサだけに、今大会は、総合首位奪還に向けてシーズン3勝目を狙う。MotoGPデビューを飾った一昨年は3位表彰台。昨年は4位に終わり表彰台を逃しているが、今大会は体調も回復に向かっているだけに、優勝候補の筆頭にいる。

チームメートのニッキー・ヘイデンは、アッセンを得意としている。一昨年は優勝。昨年は3位表彰台と過去2年連続で表彰台に立ってきた。前戦イギリスGPでは、ニュウマチックバルブ搭載のニューエンジンで予選4番手。決勝では中盤にリズムを崩して7位に終わっているが、ニューエンジンの燃費、車体とタイヤのマッチングなど貴重なデータを収集することに成功。今大会に向けて、ニューエンジンのポテンシャルをより発揮するための準備が整った。ペドロサはスタンダードエンジン。ヘイデンはニュウマチックバルブ・エンジン。異なるスペックのHondaエンジンを使う2人のパフォーマンスに注目だ。

250cc時代の2006年に3位表彰台に立っているアンドレア・ドヴィツィオーゾ(JiR Team Scot MotoGP)は、今大会も、MotoGP初表彰台、初優勝に全力を注ぐ。過去2戦、トップグループで戦うドヴィツィオーゾの走りは、多くのファンに強烈な印象を与えてきた。カタルニアGPで4位。イギリスGPで5位。表彰台にあと一歩と迫っているだけに、今大会に向けて大きな期待がかかる。

この数戦、着実にリザルトを残している中野真矢(Team San Carlo Honda Gresini)も、得意とするアッセンで一気にブレイクする意気込みだ。一昨年は、ヘイデンを追いかけて2位表彰台。MotoGPクラスでベストリザルトを刻んでいるサーキットだけに、前回のドニントンパーク同様、初日から一気にペースを上げていく作戦だ。

アレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)は、過去2戦の雪辱に闘志を燃やす。カタルニアGPでは他車と接触転倒リタイア。前戦イギリスGPではレース序盤に転倒、再スタートを切るも15位に終わった。フリー走行、予選の快走を結果につなげられていないだけに、今度こそはと気合を入れている。250cc時代には、過去2年連続で2位表彰台に立っている。前戦イギリスGPと同様、得意なコースの1つだけに、今大会は初表彰台への期待が膨らむ。

前戦イギリスGPで12位のランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)は今季ベストリザルトを狙う。第7戦カタルニアGPでは予選4番手と今季ベストグリッドを獲得。調子をつかみかけたが、前戦イギリスでは、転倒が続き、予選も決勝も不完全燃焼に終わっている。今大会は、再び、勢いを取り戻す戦い。予選、決勝ともにベストリザルトを狙う。

250ccクラスは、この数戦、好走を結果につなげられていない高橋裕紀(JiR Team Scot 250)が、巻き返しに気合を入れている。今年は開幕戦からマシンが好みの状態に仕上がっている。これまで不得意だったサーキットでも快走を見せているだけに、苦手とするアッセンの克服と今季2回目の表彰台に期待が膨らむ。ラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)も、前戦イギリスでは、タイヤの消耗で後半、ペースを落としてノーポイント。悔しいレースに終わっているだけに、今回は、その雪辱に燃えている。

コメント

ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位)

「先週のドニントンパークでは、貴重なポイントを獲得することができた。今週のアッセンでは、さらにいい結果を得られるようにしたい。アッセンは天候が不安定なので、バイクのセットアップを進めるためにも、ドライコンディションが続いて欲しい。MotoGPの戦いは、信じられないほどレベルが高いからね。路面はとてもスムーズだが、ほかのサーキットに比べればグリップがいいとはいえない。このコースで好きなのはシケイン。これまで多くの名勝負が繰り広げられてきた。旧コースのような難しさはないけれど、ここもセットアップは難しい。軽快なハンドリングといいグリップが必要になる。ハイスピードコーナーでの切り返しも厳しい。アッセンは、とてもすばらしいサーキットだった。2年前の大改修でコースの性格が変わってしまったが、最も歴史あるレース。街の雰囲気も最高だ」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング6位)

「250ccで走った過去2年、4位と3位になっているが、アッセンは独特なレイアウトであまり得意なサーキットではなかった。しかし、この2戦、カタルニアとドニントンパークでいいレースができているし、今回もいいレースをする自信がある。250cc時代と比べて、自分のライディングスタイルは変わった。RC212Vで走る今年は、初めて走るサーキットと同じ気持ちで挑むことになる。今回も、今の調子をキープしたい」

ニッキー・ヘイデン(MotoGP ランキング7位)

「先週のドニントンパークでニューエンジンを使い、燃費、タイヤライフなど、本当に多くのデータを得られた。アッセンでは、さらに高いポテンシャルを発揮することができると思う。コースはこの数年で変化したが、好きなことに変わりはない。特に後半の高速セクションが大好きだ。ここは5速で走っているし、ハイスピードでバイクを切り返すのは本当に難しい。大幅に改修されてしまったコース前半部分は得意だったけれど、なくなって残念。でも、安全性は高まったと思う。アッセンは、最も得意とするサーキット。ミシュランにもいいコースだね。ここを速く走るためにはすべての要素が必要になる」

中野真矢(MotoGP ランキング10位)

「アッセンは難しいサーキットだが、好きなサーキットの1つ。2年前には自己ベストの2位になっているので、今年もここでベストリザルトを刻みたい。そのためには、コーナリングスピードを上げるためのセッティングを決めること。前回のドニントンパークでは、後半にチャターが出てペースを落としたが、それまではすばらしい走りができていた。そのセッティングをベースに、今回はさらにセットアップを進めたい」

アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP ランキング15位)

「去年のレースは、スタートで出遅れたが、猛烈に追い上げて2位になることができた。振り出しに戻って巻き返したように、今年も、一からのスタートになる。アッセンも、MotoGPマシンでは初めて走るサーキット。この数戦、リザルトは残せていないが、トップ6の中で戦えていると思うし、アッセンでもいいレースがしたい」

ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング16位)

「この数年、アッセンは大きく改修されたが、シーズンを通じて最もすばらしいサーキットの1つであることに変わりはない。新しいコースは、ストレートがそれほど長くはないが、高速コーナーが多くスムーズな走りが要求される。先週のドニントンパークのセッティングは、ハンドリングが重くて快適ではなかった。アッセンの高速セクションはあまり得意ではないので、今回は車体のセッティングに集中したい」

山野一彦|Repsol Honda Team 監督

「ドニントンパークからの連戦ということで、特別、新しいパーツの投入はなく、前戦の延長線上でセットアップを進めていく。ダニは、今回もスタンダードエンジンを使う。前戦は、天候に影響されてセットアップを完ぺきにできなかった部分もある。アッセンも天候が不安定なので、セットアップの手法を見直し、どんな天候にも対応できるようにしたい。前回はロッシにポイントでリードを許したので、今回は、その差を縮めたい。ニッキーは、ニュウマチックバルブ・エンジンで今回も戦うが、前回のレースでは、ウォーニングランプが一時的に点灯したことから、ライダーのモチベーションを下げてしまうトラブルがあった。その問題点についてはすでに対応済みで、今回は万全の状態で挑みたい。ニッキーは、過去、ここでいい結果を残している。相性もいいのでニューエンジン2戦目となる今回はいい結果を期待している」

高橋裕紀(250cc ランキング8位)

「これまでアッセンでは、あまり結果を残せていないし、得意なサーキットではない。しかし、今年は得意ではないコースでうまく走れているし、今回もそうなるようにしたい。アッセンは、高速セクションとスローセクションがあって、リズムある走りが要求される。この数戦、表彰台に立てそうで立てないレースが続いているので、今回こそ、という気持ちで挑む」

ラタパーク・ウィライロー(250cc ランキング14位)

「アッセンは去年走っただけだが、とても好きなサーキットだ。路面のグリップはいいし、ドニントンパークとは対照的なコース。前戦は、リアタイヤの消耗に苦しんで後半、ペースを落としてしまった。それがなければ12位でチェッカーを受けられたと思うし、今回は、その雪辱を果たしたい」