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第8戦 イギリスGP 第8戦 イギリスGP

イギリスGPプレビュー

イタリア、カタルニアと続いた今季初の2連戦から一週間のインターバル。今週は第8戦イギリスGP、そして来週は第9戦オランダGPとハードな日程が続く。イギリスGPは、1949年から76年まではマン島で行われ、その後、シルバーストーンに舞台を移し、87年からはドニントンパーク・サーキットに定着、今年で22回目を迎える。

ドニントンパークは、一周4.023km。アップダウンに富んだコースで、前半セクションは中高速コーナーが続くハイスピードセクション。後半は、ストレートとシケイン、ヘアピンが連続するストップ&ゴー区間となっている。まったく異なる2つの要素が盛り込まれているサーキットで、車体のセッティングが難しく、ライダーの技量が問われるテクニカルコースである。

ドニントンパークは、雨が多いサーキットで、これまでも選手たちを悩ませてきた。昨年の大会も、不安定な天候の中で決勝レースが行われ、Honda勢は苦戦を強いられた。しかし、Honda勢は過去21大会で通算10勝。一昨年の大会で優勝しているダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)も、今年は2年ぶりの優勝を狙う。前戦カタルニアGPで今季2勝目を挙げ、優勝候補の筆頭ともいえるペドロサには、今季初の連勝への期待が寄せられる。ペドロサは、7戦を終えて2勝を含む6回の表彰台獲得で総合2位。総合首位のバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)との差はわずか7点。今大会は、トップとの差を縮め、逆転も狙うことになる。

チームメートのニッキー・ヘイデン(Repsol Honda Team)も、前戦カタルニアGPで今季初のフロントロー3番手を獲得した。決勝ではタイヤの消耗でジリジリと後退して8位。しかし、レース後に行われた2日間のテストで好結果を得るなど、中盤戦に入って確実に調子を上げている。ここまで7戦を消化して表彰台のないヘイデンだが、今季初の表彰台と優勝に向け燃えている。

MotoGPクラスのルーキー、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(JiR Team Scot MotoGP)は、7戦を終えて総合6位。前戦カタルニアGPでは、開幕戦カタールGP以来となる今季ベストリザルトの4位でフィニッシュした。今大会は、念願の初表彰台、初優勝に向けて気合満点。ドニントンパークは、ドヴィツィオーゾがもっとも得意とするサーキット。04年に125cc、昨年は250ccで勝っている。前戦カタルニアGPで上り調子を強烈にアピールしたドヴィツィオーゾ。今大会は、大きな注目を集めそうだ。

前戦カタルニアGPで9位に終わった中野真矢(Team San Carlo Honda Gresini)も、今大会は、シーズン前半戦の目標であるトップ6入りを目指す。過去、ドニントンパークでは、250cc時代に3位表彰台に立っている。最高峰クラスでは2001年の6位が最高位だが、カタルニアGP後の合同テストで大きなステップを刻んでいるだけに、今大会は今季ベストリザルトへの期待が高まっている。

中野のチームメート、アレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)も、ドニントンパークを得意とする。過去2年、250ccクラスで2年連続2位表彰台に立っている。シーズン中盤戦に入って調子を上げているデ・アンジェリスは、第6戦イタリアGPで今季最高位の4位でフィニッシュ、前戦カタルニアGPではロリス・カピロッシ(スズキ)と接触して転倒しているが、依然として好調をキープ。今回は、イタリアGPを上回る今季ベストリザルト、初表彰台を狙う。

前戦カタルニアGPで予選4番手とすばらしい走りを見せながら、2戦連続リタイアに終わっているランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)も、このサーキットを得意とする選手の1人。250cc時代の04年に3位、05年に優勝。MotoGPクラスでは、昨年に6位と健闘している。荒れた天候に強いデ・ピュニエ。ドニントンパークを得意とする選手が多いHonda勢の中でも、今年は台風の目となりそうだ。

250ccクラスは、この数戦、好調な走りを結果につなげられていない高橋裕紀(JiR Team Scot 250)が、その雪辱に挑む。06年は6位も、この大会で大きなきっかけをつかみ、次戦のドイツGPで優勝を果たしている。雨になった昨年も、右足大たい骨骨折からの復調を強烈に印象づける走りで4位でチェッカーを受けている。今大会は優勝候補の一角で、今季初優勝の期待が膨らむ。

ラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)も、前戦カタルニアで上り調子をアピールした。予選では転倒を喫しながらも今季ベストグリッドとなる14番手。決勝では背中と腕に痛みを抱えながら、11位と熱走を見せた。中盤戦になって成長を感じさせるウィライロー。昨年もイギリスGPで8位とベストリザルトを残している。今年も今大会で、ここまでのベストリザルトを狙う。

コメント

ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位)

「前回のカタルニアでの優勝は本当にすばらしかった。でも、シーズンは7戦を終えたばかりだからね。まだまだたくさんのレースがあるし、これまで以上にがんばらないといけない。カタルニアでは、レース後のテストで転倒、背中と肩を痛めたが、今週のレースに影響はない。ドニントンパークは、本当に特別なサーキット。前半はスムーズなラインだが、後半はきついコーナーが続く。この後半部分が、あまり好きではない。この後半セクションは、激しい加速と減速を繰り返すので、ル・マンに似たセッティングが求められる。イギリスGPは、イタリア、カタルニアの2戦とはあきらかに違う雰囲気がある。個々のライダーを応援するというより、バイク乗りのファンが多く、独特なムードだ。今回もいいレースにしたい」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング6位)

「125ccと250ccで勝っているし、ドニントンパークは大好きなサーキット。しかし、MotoGPマシンでは初めてだし、125ccや250ccとは、まるで違う難しさがあると思う。速いパート、スローセクション、そしてたくさんのハードブレーキングポイントがある。そして、ドライのときはグリップがいいが、ウエットになるとすごくスリッピーで、難しい。イギリスGPはいつも楽しみだが、今年はどんな走りができるのか自分でもわくわくしている。カタルニアではいいレースができたし、今回もいい結果を残す自信がある」

ニッキー・ヘイデン(MotoGP ランキング9位)

「ドニントンパークでは、いつも不安定な天候に悩まされる。コースは2つの要素を持っていて、前半の高速セクションは、バイクのセッティングが決まっていれば、ちょっと勇気はいるけれど、信じられないくらいエキサイティングな走りになる。後半のスローセクションも難しく、2つのヘアピンをうまく走れないと、それまでの走り、タイムを台無しにしてしまう。前回のカタルニアのレースは残念な結果だったが、その後のテストはよかったし、今回のレースが楽しみだ。新しいエンジンを使うかどうかは、チームと話し合って決めるが、今回はニュウマチック(pneumatic)バルブ・エンジンで戦いたい。新しいエンジンでレースウイークを迎えるのは、決して容易ではないが、とても楽しみにしている」

中野真矢(MotoGP ランキング10位)

「ドニントンパークは特別なサーキットだ。前半と後半のセクションでまるで違う走りを要求される。難しいコースだ。天気も不安定で、それが、このサーキットの難しさに拍車を掛ける。前回のカタルニアの9位は、不本意な結果だったが、その後のテストで、ラップタイムのアベレージを上げることができた。予選用タイヤのテストでも好結果を得ることができたし、その成果を今回のレースに生かしたい。とにかく今回は、テストでよかった予選タイヤの走りを最大限に生かし、いいグリッドから決勝に挑みたい」

アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP ランキング14位)

「イタリア、そしてカタルニアと暑いレースが続いたけれど、ドニントンパークは、それにくらべればはるかに気温の低いレースになるはずだ。タイヤがどんなパフォーマンスを見せるのか、実際に走ってみないとわからない。しかし、自分の走りに合ったよいタイヤをチョイスして、いい結果を残したい。ドニントンパークはハードブレーキが必要になるので、今回は今までよりパワフルなニューブレーキを使うことになる。前回のカタルニアは残念なレースだった。しかし、その後のテストでいいデータを得ることができた。ドニントンは好きなコースだから、全力を尽くしたい」

ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング16位)

「ドニントンパークは、ストレートが短く、テクニカルコーナーが多いのでとても難しい。でも、走っていて、とても楽しいサーキットだね。ここでは、250cc時代に優勝しているし、MotoGPでも6位になっている。いい思い出があるサーキットだ。前回のカタルニアは残念な結果だったが、レース後のテストでいい結果を得ることができた。今回はカタルニアよりも自信があるし、楽しみにしている」

山野一彦|Repsol Honda Team 監督

「前戦カタルニアGP後のテストで、ニッキーがニュウマチックバルブを使ったエンジンのテストを行い、好結果を得たので今大会に投入することを決めた。ニッキーにとっても、初めて実戦で使うことになるので、どのセッションも効率よくセットアップを進めていきたい。シーズンも3分の1を過ぎているし、ニッキーのここからの巻き返しにチームとして全力を注ぎたい。ダニは、カタルニアの事後テストで転倒したこともあり、ニューエンジンのテストをきちんとできなかったので、今回もスタンダードエンジンをベースにしたマシンで戦う。前戦同様、レースシミュレーションを進めながら、いい状態に仕上げたい。今大会に向けて転倒の影響はないようで、ダニは、すでにトレーニングを始めている。今回も、優勝を目指して全力を尽くす」

高橋裕紀(250cc ランキング7位)

「この数戦、いい走りができているのに、それを結果につなげることができなかった。その理由は、トラブルだったり自分のミスで転倒したりと、いろいろだが、そのために総合ポジションも大きく落としてしまった。しかし、点差はそれほど開いていないし、ドニントンパークから巻き返したい。去年は、ウエットのレースで表彰台にあと一歩の4位になれた。ここは天候がいつも不安定だが、ドライでもウエットでも自信はある。ここからの3戦、ドニントンパーク、アッセン、ザクセンリンクで一気にいい流れをつかみたい」

ラタパーク・ウィライロー(250cc ランキング14位)

「前回のカタルニアは、予選の転倒の影響で最後までちゃんと走ることができなかった。レースのあと、タイに戻り、バンコクの病院で治療を受けていた。まだ薬を飲んでいるが、今回は普通に走れればいいなと思う。ドニントンパークは好きなコース。去年も、この大会でシーズンのベストリザルトを残すことができた。今年も、ベストリザルトが得られるように全力を尽くしたい」