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第2戦 スペインGP 第2戦 スペインGP

スペインGPプレビュー

開幕戦カタールGPから3週間のインターバルを経て、グランプリの舞台はヨーロッパへと移った。スペイン西南部にあるヘレス・サーキットは温暖な地中海性気候のために、ヨーロッパでは、一年を通して走行できる数少ないサーキットの1つだ。マレーシアのセパン、オーストラリアのフィリップアイランド、スペインのバレンシアと並び、MotoGPクラスの選手にとっては、走り慣れたコースである。

ヘレスでは、87年に初めてグランプリが開催された。以来、スペインGPの舞台として定着。大小13のコーナー。パッシングポイントの多いコースレイアウトは、選手にもファンにも好評で、毎年、12万人を超える大観衆がヘレスの山々を埋め尽くす。

90年代には、5回の最高峰タイトルを獲得したミック・ドゥーハン、スペイン人初の最高峰クラスチャンピオンとなったアレックス・クリビーレが地元ファンを熱狂させた。まさにRepsol Honda TeamがスペインGPの歴史を作ってきたといっても過言ではなく、今大会もRepsol Honda Teamのダニ・ペドロサとニッキー・ヘイデンが、スペインGPの主役を務めることになりそうだ。

1月のマレーシアテストで右手の甲を骨折したペドロサは、開幕戦カタールGPでは痛みをこらえて3位表彰台に立つ活躍を見せた。この3週間のインターバルで右手も順調に回復、今大会はほぼ完全な状態で大会を迎えることができそうだ。最高峰クラスのデビュー戦となった一昨年(06年)は、初レースで2位となる快走で地元ファンを熱狂させた。優勝が期待された昨年も2位。2年連続で優勝を逃しているだけに、地元ファンの期待は大きい。

また、ペドロサは昨年11月の合同テストで、サーキットベストタイムを非公式ながら更新する快走を見せている。ケガのためにウインターテストをほとんど消化できなかったが、今大会の優勝候補の筆頭に挙げられる。昨年の最終戦バレンシアGPの優勝に続いて、地元スペイン大会2連勝を狙う。

ヘイデンもまた、スペインGPの優勝候補の1人だ。昨年11月の合同テストでは、ペドロサに続く2番手タイムをマーク。今年2月の合同テストでは、3日間総合でトップタイムをマークしているだけに、2年ぶりとなる優勝に期待が膨らむ。前戦カタールGPでは、事前テストで思うような走りができず、07年型と08年型のマシンを比較した結果、07年型RC212Vをチョイス。不本意な結果に終わったものの、今大会は気分一新、08年型RC212Vでウインターテストの好調を取り戻す意気込みだ。

開幕戦カタールGPで4位とすばらしいリザルトで最高峰クラスのスタートを切ったアンドレア・ドヴィツィオーゾ(JiR Team Scot MotoGP)も、ヘレスでは最高峰クラス初表彰台を目指す。125cc、250cc時代から、ヘレスは苦手なサーキットの1つ。しかし、ヘレスで行われたウインター合同テストでは常に上位につける走りで苦手意識を克服した。開幕戦カタールGPでは、ケーシー・ストーナー(ドゥカティ)が優勝、過去2年連続で250ccクラスでし烈なチャンピオン争いをしたホルヘ・ロレンゾ(ヤマハ)が2位。3位にペドロサと、同世代のライバルたちが表彰台に立っているだけに、初表彰台獲得に向けて闘志を燃やしている。

カワサキからLCR Honda MotoGPに移籍、ウインターテストですばらしい走りを見せているランディ・デ・ピュニエは、カタールGPでは9位と不本意な結果に終わっているだけに、今大会はその雪辱を果たす意気込み。同じく開幕戦で転倒リタイアに終わったアレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)も、250cc時代のライバルたちが上位を独占しているだけに、スペインGPに気合を入れている。

日本人で唯一、最高峰クラスに参戦する中野真矢(Team San Carlo Honda Gresini)も、スペインGPからの巻き返しに闘志満々だ。開幕戦カタールGPでは13位。好調だったウインターテストの成果を発揮できないまま下位に低迷して、悔しいレースとなった。今年はイタリアを本拠地とするグレッシーニ・チームに移籍した。開幕戦カタールGPのあと、去年まで住んでいたフランスからチームの本拠地があるミザノに拠点を移し、これから本格的に始まるヨーロッパラウンドへの準備を済ませた。

250ccクラスは、高橋裕紀(JiR Team Scot 250)とラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)が、RS250RWで参戦する。一昨年の最終戦バレンシアGPで右足を骨折、昨年リハビリを続けながら苦しいシーズンを過ごした高橋は、開幕戦で5位と順調なスタートを切った。これまでカタールを苦手としてきただけに、右足の回復に加えて快調ぶりをアピール。予選、決勝ともに、昨年チャンピオン争いを繰り広げたドヴィツィオーゾのベストタイムを更新した。第2戦スペインGPでは、今季初表彰台、2年ぶりの優勝に期待が膨らむ。今季からRS250RWで参戦するウィライローも、開幕戦で13位とまずまずのスタート。スペインGPではトップ10を目指す。

コメント

ダニ・ペドロサ

「大観衆が集まるヘレスの独特な雰囲気が好きだ。今年になって最終コーナーなど、いくつか改修されているが、コースの安全性は高まったと思う。まだ路面が荒れている部分はあるけれど、グリップは全体的にいい。このコースはトップスピードより、スローコーナーとハイスピードコーナーの車体のバランスが重要になる。アグレッシブなライディングも要求される。カタールのあとは、右手の回復に努めてきた。今回は自分にとって、とても大事なレース。右手が完全に回復していることを願っている」

ニッキー・ヘイデン

「この時期のヘレスは気温も路面温度もそれほど上がらないので難しいレースになりそうだ。しかし、ミシュランと相性がいいコースなので期待している。ヘレスは、コンピュータでデザインされた最近のサーキットとは完全に異なる。あらゆる要素を持っているし、好きなサーキットの1つだ。前回のカタールはあまりよい結果ではなかったが、今大会から巻き返したい」

アレックス・デ・アンジェリス

「ウインターテストでは、本当に多くのデータを得ることができた。もちろん、ヘレスでもいいテストが行えた。今大会も、最初にやらなければならないのは、バイクとタイヤのいい状態を見つけること。カタールでは、テストでも本番でも常にトップ5だったが、転倒リタイアに終わった開幕戦の結果にはがっかりしている。その雪辱を果たしたい」

中野真矢

「開幕戦カタールでは、ウインターテストの成果を発揮できず、下位に沈んでしまった。初めてのナイトレースだったこと。特別な条件がそろったことが、その要因のひとつだった。正直、13位という結果にはがっかりした。スタッフやスポンサーはもちろんのこと、応援してくれているファンの期待に応えられなかったことが本当に残念だった。しかし、ヨーロッパラウンドに入り、ここからが本当の意味での開幕戦だと思っている。過去、ヘレスでは、予選はいいのだが、決勝でなぜかリザルトが残せないレースが続いている。今年は、予選も、決勝も、納得のいく結果を残したい」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ

「ヘレスは好きなサーキットではないが、ウインターテストでは、まずまずの走りができた。開幕戦はとても順調だったし、とても自信になった。初めてMotoGPクラスのレースを戦って、学ぶことがたくさんあった。今回も厳しいレースになると思うが全力を尽くしたい」

ランディ・デ・ピュニエ

「これまで、それほどいい結果は残せていないが、ヘレスは好きなサーキットの1つ。ストレートが短くてテクニカルなコースだ。ウインターテストも多く、ここは知り尽くしている。開幕戦のカタールは、テストはよかったけれど本番で結果を残せなかった。テストと本番でコンディションがちょっと変わってしまったことが原因のひとつだった。ここもテストはよかったが、本番はどうなるのか、今はわからない。とにかく今回もバイクのセットアップに集中して、予選でいいグリッドを獲得したい」

山野一彦|Repsol Honda Team 監督

「前回のカタールGPで方向性を見出すことができた。今回は、FP1(フリー走行1回目)でマシンの仕様をフィックス。FP2(フリー走行2回目)でレースタイヤを決め、FP3(フリー走行3回目)でレースシミュレーションを行い、予選、決勝と、勝つための方程式を実践したい。ダニは、右手もほぼ回復、体調は十分。ニッキーは、開幕戦で07年型を選んだが、今回から08年型で挑む。ダニもニッキーも、去年11月、今年2月のテストでは、すばらしいタイムをマークしている。あとはレースタイヤで速さをアピールするだけ。勝利は近づいていると思っている。とにかく、3日間、ドライできっちりと走らせてあげたい」

ラタパーク・ウィライロー

「カタールの13位は、これまでの努力が報われた感じだった。今大会はカタール以上に厳しい戦いになると思う。ヘレスは難しいサーキットなので、フリー走行から全力を尽くしたい。今回もトップ10を目標にがんばりたい」

高橋裕紀

「開幕戦カタールは、本当に大きな自信になった。足の状態がよくなっていることも大きな要因だが、これまで苦手としていたコースでいい走りができたことがうれしかった。身体が回復するにつれて、自分の理想とするライディングに少しずつ近づいている。ヘレスは好きなコース。RS250RWのアドバンテージを生かして、表彰台、優勝を目指したい」