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第1戦 カタールGP 第1戦 カタールGP

Honda勢、GP初のナイトレースとなる開幕戦で始動

数カ月にわたるオフシーズンのトレーニング、絶え間なく続いたテストが終わり、いよいよGPが開幕する。今回の開幕戦は540万ワットの照明の下、史上初のナイトレース(夜間開催レース)が予定されている。

Hondaは今回の開幕戦を戦うエンジンとして、従来型のバルブ・スプリング仕様の800cc V-4を選択した。一方で、ニュウマチックバルブ仕様のエンジンについては、そのパワーデリバリーをライダーにとってより扱い易いものにする方向で開発が着々と進められている。

ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、今年で3年目のMotoGPシーズンを迎える。ペドロサはマレーシアのセパンにおけるテストで右手を負傷。そのため、一部のテストに参加することができなかった。まだ完治はしていないが、練習走行が始まる金曜日までには、レースを戦うのに十分な程度の回復が見込まれている。

ペドロサは、過去2シーズンをともに過ごしたチームメートのニッキー・ヘイデン(Repsol Honda Team)とともに戦う。そしてこのコンビは今年も再び、2輪モータースポーツの中で最も栄誉あるタイトルを目指す。

一方のヘイデンは、順調にテストをこなしてきた。1月下旬のセパンと先月のヘレスでは、トップタイムを記録。昨シーズン前半は満足のいく成績を残せなかったが、後半は巻き返して表彰台に上る活躍を見せた。ヘイデンは今シーズン、持てる力をすべて出し、2006年にタイトルを獲得したときのように、その実力を証明する意気込みだ。

今年、Hondaに加わったMotoGPライダーたちも、レベルの高い走りが期待されている。カワサキから移籍したランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)は、投光照明下のテストにおいてHondaのマシンによく適応し、3番手のタイムを記録する好走を見せた。

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(JiR Team Scot MotoGP)は、06年、07年と250ccクラスでタイトル争いを繰り広げた若手の実力派ライダーだ。250ccマシンからのステップアップにあたり、より大きく、より馬力のあるMotoGPマシンを操るための体力をこのシーズンオフに身につけてきた。先週末行われた開幕前の最終テストでは、6番手というタイムを残して自信を高めている。

Team San Carlo Honda Gresiniのアレックス・デ・アンジェリスは、ドヴィツィオーゾと同様に昨年まで250ccクラスの上位で戦い、今年MotoGPクラスにステップアップする。チームメートの中野真矢とともに、ここで行われたテストにおいて限界までプッシュする走りを見せたものの転倒を喫してしまったが、着々とセットアップを重ねてきた。250ccクラス卒業組のサンマリノ人ライダーも、経験豊かなベテランライダーの中野も、本番のレースに向けて万全の態勢で臨む。

全長5.38kmのロサイル・インターナショナル・サーキットは、カタールの首都ドーハから10kmのところにあり、全クラスのほとんどの選手が走った経験のあるコースだ。04年に完成したこのサーキットは、左コーナーが6、右コーナーが10と、全18戦の中で最もコーナー数が多い。またシケインと呼べるようなコーナーはなく、マシンのハンドリングレスポンスやタイヤの摩耗耐久性が重要になってくる。

周囲の砂漠の砂じんが吹き込まないように、コースに沿って人工芝が敷き詰められているが、選手たちの不安を完全に払拭するものではない。風が強い日は、さらに悪条件になるうえ、史上初のナイトレースであるため、どのライダーも慎重を期してレースに臨むことになりそうだ。

メインストレートはカタルニア・サーキットよりもさらに20m長い1068m。最終コーナーの立ち上りが比較的低速であるため、ここでの加速はシフトアップしながらの非常に強烈なものとなる。マシンには馬力と最高速が何より要求され、同時に時速320km、6速全開からの安定したフルブレーキングも重要となる。

またコーナースピードとマシンのハンドリングレスポンスも重要だが、日中に比べてはるかに路面温度が下がる夜間は、タイヤの選択が決め手となる。平均気温45℃の日中から、冷たい夜の空気にさらされて低下した温度まで、大きな温度差のある路面に対応できるコンパウンドを選ぶ必要がある。

コメント

ダニ・ペドロサ

「ここは決して好きなサーキットではないんだ。ロサイルはいつも風が強く、周囲から吹き込む砂じんでコースが汚れている。舗装された路面そのものはグリップがいいけれど、砂ぼこりでおおわれるとグリップしなくなる。それにレコードラインを外すとどこも砂が浮いているので、ラインを外してしまったときは、転倒しないよう細心の注意を払わなくてはいけないので、タイムロスしてしまうよ。幸い、路面は荒れておらず、フラットで安全ではあるけれどね。マシン的には、非常に精密なセッティングが必要だ。さらにハンドリングレスポンスとストレートでのスピードが、セッティングにおける2つの重要なカギだ。しかも、ここでは初めての夜間レースになるしね」

ニッキー・ヘイデン

「またレースができることがとてもうれしい。レースがすべてだからね。夜間レースを行うカタールは、楽しい週末になると思う。実際、コースはすごくいい。ただお気に入りのライダーに熱狂する10万人のファンがいないことと、GPの歴史がまだ浅いことが残念だ。夜間レースは日中のレースとは違うものになると思う。走行中、タイヤがどのように機能するのかにもとても興味があるね。面白そうだし、楽しみだ。テストでの夜間走行は楽しかったからね。地元では照明の下、ダートトラックをずい分走ったよ。でも夜間にロードレーサーに乗ったのは、今回のテストを除けば、03年の鈴鹿8時間耐久ロードレースに向けた練習走行のときだけだ。そのときは最高だった」

アレックス・デ・アンジェリス

「最終テストの序盤でつかんだペースに満足している。唯一の問題は、夜10時以降は気温が下がり、湿度も増してくることだ。コースのコンディションががらりと変わり、転倒してしまった。幸いひどいケガはしなかった。右の前腕に痛みがあるが、大きな問題はない。タイヤが温まるまで多少時間がかかるので、最初の何周かは用心しないといけないが、レースについてはあまり心配していないよ」

中野真矢

「レースに向けて、事前テストでセッティングに改良を重ねた。コンディションが変わるまでは、ベースとなるセッティングはよかった。しかし、ラップタイムを上げようと少しプッシュしすぎて、湿った路面で転倒してしまった。そのため、行っていたレース・シミュレーションは中断して、テストも早めに切り上げることになってしまった。大きなケガではなかったので、レースには問題ない。決勝レースではいい走りをしたい」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ

「ウインターテストの結果から、今週末のカタールでのレースには十分、自信を持って臨める。全く新しいマシンでこんなにいいフィーリングが得られ、またテストであんなにいい結果を残せるとは思っていなかった。チームが一丸となって働き、戦闘力のあるマシンに仕上げることができた。もし今のマシンを若干、微調整する必要があったとしても、これまでも僕らはセッティング能力の高さを証明してきたから問題ないと思う。テストでの結果は、チームの実力を示していると思う。だから今週末トップライダーたちとレースできるのが楽しみだ。MotoGPのシーズン開幕にワクワクしているし、夜間に行われるこの開幕戦への準備は整っている」

ランディ・デ・ピュニエ

「ウインターテストは僕にとってもチーム全体にとっても、非常に実りのあるものだった。Hondaとミシュランのパッケージングはうまくいっているし、僕のタイムもなかなかよかった。特にレースタイヤを履いたときの走りはよかった。カタールでのレースは楽しみだ。低い気温という新しい条件下だし、コース上の影も僕はあまり気にならないからね。僕たちはベースとなるいいセッティングを見つけて、最後のテスト期間中はそんなに変更を加えていない。だから、いいタイムを記録しながら、タイヤテストに集中することができた。開幕戦には自信を持って臨める。そして新しい照明システムはレースを盛り上げてくれると思う」