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ロッシはこの勝利で昨年を上回る357ポイントを獲得 |
2003年シリーズの最終戦バレンシアGPが、11月2日、バレンシアで開催された。Hondaはすでに、第12戦リオGPで3年連続コンストラクターズタイトル(通算15回目)を決め、第14戦マレーシアGPではバレンティーノ・ロッシ(Repsol Honda Team)が3年連続個人タイトルを獲得している。さらに、今大会、Hondaが勝利を収めれば、シーズン通算15勝となり、1997年に達成したシーズン最多勝利記録に並ぶことになる。
バレンシアGPは、1999年に始まり、今年が5回目の開催。昨年からはシーズン最後のグランプリとして開催されるようになり、昨年に続いて、今年もシーズン最多の観客が予想された。
予選初日、朝方まで降った雨の影響で、午前中のフリー走行の路面は、ウエットからドライへ変化する難しいコンディションとなった。ほとんどの選手が様子見の走りとなり、阿部典史(Yamaha)がトップタイム、2番手にギャリー・マッコイ(Kawasaki)以下、ニッキー・ヘイデン(Repsol Honda Team)、ロッシと続いた。
午後の予選は、雨も完全に上がってドライコンディション。しかし、気温15℃、路面温度17℃とタイヤのグリップには厳しい寒さとなった。その中で、ロッシが好調な走りを見せて暫定PPを獲得、2番手にヘイデン、以下、セテ・ジベルノー(Team Telefonica Movistar Honda)、マックス・ビアッジ(Camel Pramac Pons)とHonda勢が上位4位までを独占。Honda勢は好調な出だしを見せ、宇川徹(Camel Pramac Pons)7位、玉田誠(Pramac Honda Team)10位、清成龍一(Team Telefonica Movistar Honda)21位で初日を終えた。
2日目。バレンシアは、初日とは対照的に青空が広がり、一気にタイムが上がることが予想された。午前中のフリー走行では、シーズン終盤戦になって上り調子のヘイデンがトップタイム、3番手にロッシ、5番手にジベルノー、9番手にビアッジと、今季、優勝経験のあるHonda勢が、それぞれ決勝を睨んでのセッティングに多くの時間を割いた。
迎えた最終予選。快晴に恵まれたバレンシアは、気温21℃、路面温度も29℃まで上昇、スーパーラップを狙うには絶好のコンディションとなった。グランプリキャリアの中で、唯一、このサーキットで優勝がないロッシにとっては、何としても勝ちたいレース。バレンシア初勝利に向けて気迫あふれる走りを見せたロッシが、ただひとり、1分32秒台に入れる驚速タイムで3戦連続今季9回目のPPを獲得。2番手にジベルノー、3番手にロリス・カピロッシ(Ducati)、4番手にヘイデンと、Honda勢はフロントローに3台と、シーズン15勝目に向けて絶好のグリットを確保することに成功。さらに、ビアッジ6番手、宇川9番手と上位につけた。
予選初日から2日目にかけて、天候がどんどん回復したバレンシア。決勝日は、気温22℃、路面温度は30℃まで上がり、レースウィークで最も良いコンディションとなる。そして今年も12万人を越える大観衆がスタンドを埋め尽くし、シーズン最終戦に相応しい熱狂の中で決勝レースのスタートが切られることになった。
ホールショットを奪ったのは、PPスタートのロッシ。2コーナーでカピロッシが首位を奪い、オープニングラップを制す。しかし、2周目にロッシが再び首位を奪還。そのロッシを激しく追ったジベルノーとともに、後続を突き放すことになった。
バレンシア初優勝に燃えるロッシ。そして地元スペインのファンの大声援を背に、一歩も引かないジベルノー。2人の緊迫した戦いは終盤まで続く。しかし、ラストスパートを掛けたロッシがジベルノーを突き放し今季9勝目を達成。2位にはジベルノーで、Hondaは今季13回目の1-2フィニッシュを飾り、さらに、97年以来2度目のシーズン最多勝利記録となる15勝目を達成することになった。
3位にはカピロッシ。4位にビアッジ。予選13番手からスタートした玉田は10位。清成14位という結果だった。今季最高位の予選4番手からスタートしたヘイデンは、序盤、トップグループにつけたが、痛恨のスリップダウン。この後、最後尾から素晴らしい追い上げを見せたが、結果は16位。宇川は他者に追突されてリタイアに終わった。
ロッシの3年連続チャンピオン、そして3年連続コンストラクターズタイトルを獲得したHondaは、個人タイトルで2位にジベルノー、3位にビアッジと上位3位までを独占。今季からMotoGPに参戦のヘイデンは、総合5番手につけてルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得と素晴らしい成績を残した。
250ccクラスはランディ・デ・ピュニエ(Aprilia)が優勝。セバスチャン・ポルト(Telefonica Movistar jnr Team)6位。最終戦で逆転チャンピオンの可能性が残っていたロベルト・ロルフォ(Fortuna Honda)は7位でフィニッシュ。タイトルこそ逃したが、総合2位と健闘した。125ccクラスはケイシー・ストーナー(Aprilia)が優勝。今季125ccクラスのタイトルを獲得したダニエル・ペドロサ(Telefonica Movistar jnr Team)は、前戦オーストラリアGPで負傷したために欠場。アンドレア・ドヴィツィオーゾ(Team Scot)8位。15位の東雅雄(Ajo Motorsports)は、このレースを最後に現役を引退した。
■Moto GP
●バレンティーノ・ロッシ(優勝) 「バレンシアは今まで勝ったことがなかったので、PPを獲得して、優勝することが出来て、とても嬉しい。このサーキットでは、いつも何か問題が起きていた。しかし、今回はパーフェクトだった。でも、セテ(ジベルノー)の調子が良くて、素晴らしいライディングをしていたから厳しい戦いだった。レース終盤では少しギャップを作ることができて、ロリス(カピロッシ)の位置を確認しようと後ろを向いた時に、セテが“チャオ!”と手を振って言ったから引き離すことにした。今シーズンは僕にとって、それからMotoGPにとっても良い年だった。今シーズンは良いレース、良いバトル、良いライダーに恵まれた。今年はずっとレースに集中することが出来たし、去年よりも多くのポイントを獲得することができた。とにかく、すごく嬉しい」
●セテ・ジベルノー(2位) 「今回のレースは、とても長く感じた。正直、最後の最後まで勝てると思っていたし、2位に終わって残念だった。今日は、スタートからフィニッシュまでずっと速いペースで走ることが出来たし、ロッシとも良いバトルが出来た。しかし、途中からバイクのコントロールが難しくなり、ロッシのラップタイムに比べてコンマ数秒づつ遅くなっていった。レースに勝てれば最高だったけれど、とりあえず今日は終始ロッシにプレッシャーをかけ続けられたことと、今シーズンのほぼ全てのレースで優勝争いに加わることが出来て満足している。今シーズンはとても悲しいニュースで始まったが、(成績は)とても素晴らしいシーズンだった。我々に協力してくれた全ての人、特に大治郎の家族と、Team Telefonica Movistar Hondaという世界一のチームに感謝したい。チャンピオンシップ2位のプレートをみんなで分かち合い、次のシーズンも、ともに全力で戦っていきたいと思う」
●マックス・ビアッジ(4位) 「予選から問題になっていた箇所がやはり本番でも直らなかった。シーズンを表彰台で締めくくりたかったが、とても不可能だった。エンジンブレーキが使えなかったのでフロントブレーキを多用し、おかげでレース終盤ではフロントタイヤがボロボロになってしまった。新しいセッティングに変えて以来、この問題に悩まされたが、来年までにはぜひ解決したい。来シーズンは、スタート時点ですべてのHondaライダーが同じ条件でシーズンを始めてほしい」
●宇川徹(リタイア) 「シーズン最終戦ということで、何としても表彰台に立ちたかったが、他者にぶつけられて転倒、リタイアに終わってすごく残念だ。スタートはまずまずだった。その後、追い上げていこうと思っていた矢先の接触だった。とにかく、残念なレースだった」
●ニッキー・ヘイデン(16位) 「スタートは良かったし、すべて順調だった。セテとバトルをしていて、2周目にちょっとエキサイトしてしまった。バイクを思い切り寝かせて、そこで間違えてギアを2速に入れてしまった。本当にバカなミスだったよ。結局、僕がもっと努力しなきゃいけないんだね。予選の調子がすごく良かっただけに、本当に残念だった。シーズンを振り返ってみれば、レースを追うごとに進歩することができた。良い結果の時も、そうでない時もあったが、とりあえず今は、火曜日のテストが待ち遠しい。今シーズン学んだことを来年は活かして、もっともっと進歩したいと思う」
●立川章次監督 「今日のレースは、ヘイデンがすごく頑張ってくれた。結果的に転倒してしまったが、レースウィークを通じて、すごく期待させてくれたし、シーズンを通じて最も成長したライダーだと感じた。ロッシは、本来のレース展開で優勝したし、ジベルノーもホームGPでいい走りを見せてくれた。今年13回目の1-2フィニッシュ、そしてシーズン15勝を達成することが出来て満足している。今年は、Honda陣営のどのチームもレベルが高く、選手の力も拮抗していた。その調整にHondaとしては苦労した部分もあるが、そういう苦労が報われたと思うし、本当に素晴らしい1年だった。来年も、今年のような成果を上げられるように頑張りたい」 |