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ロッシは今季7勝目を挙げるとともに、3年連続王座獲得 |
バレンティーノ・ロッシ(Repsol Honda Team)のタイトル王手で迎えたマレーシアGP。前戦パシフィックGPでは、ロッシ、セテ・ジベルノー(Team Telefonica Movistar Honda)、マックス・ビアッジ(Camel Pramac Pons)の3人にチャンピオンの可能性が残されていたが、残り3戦となり、チャンピオン争いはロッシとジベルノーの2人に絞られた。その差、58点。ロッシにとっては、ジベルノーに先着すればチャンピオンが決定するというシチュエーション。対してジベルノーは、ロッシに9点以上のリードを築いてフィニッシュしなければ、タイトル争いを次戦に持ち込めないという厳しい状況。それだけに、ここまで安定した力を発揮しているロッシにとっては、何としてもタイトルを決めたいレースとなっていた。
予選初日、フリー走行でトップタイムを刻んだのは、逆転チャンピオンに闘志を燃やすジベルノー。そして2番手にロッシと、マレーシアGPの初日は、タイトルレースを繰り広げる2人がトップタイムを争うという、チャンピオン争奪戦に相応しい幕開けとなった。
しかし、午後の予選では明暗を分ける。ロッシは去年のサーキットベストタイムを約1秒も更新する2分3秒516で暫定PPを獲得。対して、フリー走行でトップのジベルノーは、セッション開始早々に転倒を喫し、セカンドバイクでアタックするも7番手に終わってしまったのだ。
こうして、予選初日から2人の戦いに注目は集まったが、Honda勢は初日から好調だった。リオGPから調子を上げている玉田誠(Pramac Honda Team)が2番手、タイトル争いからは脱落も、前戦パシフィックGPで今季2勝目を上げたビアッジが3番手。そして宇川徹(Camel Pramac Pons)5番手、ニッキー・ヘイデン(Repsol Honda Team)7番手と、Honda勢が揃って上位につける好走。チャンピオン争いだけではなく、Honda勢の優勝争いにも熱い視線が集まることとなった。
2日目の予選は、再びロッシとジベルノーの戦いで幕を開ける。フリー走行でトップタイムを刻んだのは、初日の転倒の影響をまったく感じさせない走りを見せたジベルノーで、2番手にロッシ。さらに、ビアッジ、宇川、ヘイデンも着々とタイムを詰めて、PP争いは予断を許さない展開となった。
午後の予選では、ロッシがセッション中盤に早々と、2分2秒台というスーパーラップを刻んで周囲の度肝を抜く。このサーキットが大好きという言葉どおり、ロッシはライバルを圧倒する速さで今季7回目のPPを獲得。2番手にカルロス・チェカ(Yamaha)。以下、玉田、ビアッジと続き、フロントローに3台のHonda勢。注目のジベルノーは、アタックのタイミングを逃し7番手となったが好調をキープ。宇川8番手、ヘイデン9番手というグリットで決勝を挑むことになった。
迎えた決勝レース。ホールショットを奪ったのは、2列目スタートのジベルノーで、チェカ、ロリス・カピロッシ(Ducati)、そしてロッシと続いた。逆転チャンピオンに向けて、オープニングラップからハイペースで逃げるジベルノー。ロッシもまた、2周目にカピロッシとチェカを交わし2番手に浮上。ジベルノーをピタリとマークして、早くもこの2人がトップグループを形成、チャンピオン争いの2人が後続を突き放すことになった。
そして中盤の8周目、ロッシがジベルノーを交わしてトップに浮上。一気にペースを上げてジベルノーを突き放すことに成功。ロッシは21周のレースで真っ先にチェッカーを受け今季7勝目、3年連続チャンピオンを獲得することになった。
これでHondaは通算13回目の個人タイトルを獲得。ロッシは、今回の優勝でグランプリ通算57勝目(MotoGP31勝目)を記録した。
2位にはジベルノー。3位には、この2人を必死に追ったビアッジで、今大会もHonda勢が表彰台を独占。3戦連続今季6回目の表彰台独占を果たした。
その後方では、3列目から好スタートを切って、トップグループを追ったヘイデンが、ラスト2周でチェカを捕らえて4位でフィニッシュ。宇川は中野真矢(Yamaha)、トロイ・ベイリス(Ducati)との戦いから抜け出し7位。予選3番手の玉田は、タイヤの消耗でペースを上げられず惜しくも10位。清成龍一(Team Telefonica Movistar Honda)は21位という結果だった。
250ccクラスは、トニー・エリアス(Aprilia)が優勝。チャンピオン争いをするロベルト・ロルフォ(Fortuna Honda)は4位で、総合ポイントでは25点差の3位。ラスト2戦での逆転に賭けることになった。
125ccクラスは、予選2番手からスタートしたダニエル・ペドロサ(Telefonica Movistar jnr Team)が今季5勝目。チャンピオン争いをしているステファノ・ペルジーニ(Aprilia)がリタイアしたため、2戦を残し、見事タイトルを獲得した。し烈な2位争いに加わったトーマス・ルシ(Elit Grand Prix)は4位、東雅雄(Ajo Motorsports)は5位と健闘した。
■Moto GP
●バレンティーノ・ロッシ(優勝) 「今回のレースは、チャンピオンシップがかかっていることをなるべく考えないようにした。レースだけに集中しようと思っていた。今日のジベルノーとのバトルは、大変なレースだった。序盤はジベルノーをなかなか抜くことが出来なかった。しかし、燃料が減ってきてからは自分のリズムで走れるようになって、ジベルノーを抜くことが出来た。今日のジベルノーは最後までプレッシャーを掛けてきたし、レース中に2回もブレーキングミスをしてしまった。しかし、最後は勝つことが出来て本当に嬉しい。今年のチャンピオンシップは、去年に比べたらすごく厳しかった。でも、今振り返ってみれば、ジベルノー、ビアッジ、カピロッシ、ベイリスとのバトルはすごく楽しかった。今年は、自分のミスで何回も優勝を逃してきたが、レースを追うごとに調子は上がった。こうしてタイトルを取ることが出来たのは、チーム、スタッフ、Honda、スポンサーのお陰。本当に感謝している」
●セテ・ジベルノー(2位) 「今日は最後まで全力で走った。予選は7番手だったが、内容は良かったし調子も悪くなかった。レース中は、とにかくロッシにプレッシャーをかけようと思ったし、その気持ちは最後まで変わらなかった。自分としては、今年いちばんのレースだったと思うが、ロッシは本当に速かった。とりあえず、ここまで応援してくれたチームやスタッフ、Honda、スポンサーには感謝している。まだ2戦残っているので、残りのレースで勝てるように頑張りたい」
●マックス・ビアッジ(3位) 「今日はスタートが良くなかった。それに、今日は予選で使ったタイヤを選んだのだが、今日のコンディションには合わなかったのか、思うようにペースを上げることが出来なかった。ロッシは、去年に比べて、チャンピオンを取るのが大変だったと思う。来年はもっと厳しいシーズンになるはずだ。とりあえず、彼にはおめでとうと言いたい」
●ニッキー・ヘイデン(4位) 「今日はいいスタートが切れたし、1周目はビアッジの後ろにつくことが出来た。本当は、最後までビアッジについていきたかったのだが、カピロッシを抜くのに時間がかかってビアッジには離されてしまった。その後も、チェカを抜くのに時間がかかった。ポジションはビアッジの次だが、だいぶ離されてしまったのが残念だった。しかし、いいレースだったと思うし、次は何としても表彰台に立ちたい」
●宇川徹(7位) 「予選では2分4秒台のタイムでコンスタントに走れていたのだが、今日は5秒台で走るのがやっとだった。今日は予選よりも硬めのタイヤを選んだ。コーナーの出口でスピニングが激しくて、上手くスピードを乗せられなかったのだが、おそらく、今日の路面コンディションに合っていなかったのかも知れない。それでも、最後まで同じペースで走ることが出来たし、次のレースではベストセッティングをみつけていいレースをしたい」
■125cc
●ダニエル・ペドロサ(優勝) 「チャンピオンを取ることが出来て本当に嬉しい。前回のパシフィックGPが悔
しいレースだっただけに、今日は勝つことだけを考えていた。ここまで応援してくれたチーム、スタッフ、Honda、そしてスポンサーに感謝したい」
●立川章次監督 「すでに、個人タイトルはHonda勢の中から生まれることは決まっていたが、こうしてタイトルが決まってみると、やっと肩の荷が下りたような気分だ。今回は予選からロッシの仕上がりは抜群だったし、彼が優勝するのは当然の結果だった。そして、前回のもてぎ同様、Honda勢が4位までを独占してフィニッシュしたことにも満足している。その中でもヘイデンの成長ぶりには驚いているし、嬉しい。次のレースでは表彰台に立ってくれるのではないかと思っている。とにかく残り2戦、これまで通り気持ちを引き締めて戦って行きたい」 |