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2014年2月14日(金)

マレーシア・セパン公式テストレポート

マルク・マルケス マルク・マルケス ダニ・ペドロサ ダニ・ペドロサ ステファン・ブラドル ステファン・ブラドル アルバロ・バウティスタ アルバロ・バウティスタ ニッキー・ヘイデン ニッキー・ヘイデン 青山博一 スコット・レディング カレル・アブラハム

2014年のシーズン開幕を告げるMotoGPクラスの公式テストが、2月4日(火)から6日(木)までの3日間、マレーシアのセパン・サーキットで行われました。Honda勢は8選手が参加しました。

2014年型「RC213V」で今シーズンを戦うのは、昨年と同じ3チーム4台。Repsol Honda Teamのマルク・マルケスとダニ・ペドロサ、GO & FUN Honda Gresiniのアルバロ・バウティスタ、LCR Honda MotoGPのステファン・ブラドルという4選手が、今年もタイトル獲得を目標に戦います。また、MotoGPクラスの「オープンカテゴリー」にHondaが投入する市販レーサー「RCV1000R」では、新たに3チーム4台が参加します。Drive M7 Asparからはニッキー・ヘイデンと青山博一、GO & FUN Honda Gresiniからスコット・レディング、Cardion AB Motoracingからカレル・アブラハムが新マシンによる心機一転のシーズンに挑みます。

昨年は、ルーキーのマルケスが、シーズン6勝を含む16度の表彰台に立ってタイトルを獲得し、フレディ・スペンサーが1982年に樹立した史上最年少優勝記録を31年ぶりに、そして83年に達成した史上最年少チャンピオン記録を30年ぶりに更新しました。さらに、チームメートのペドロサの活躍もあり、Hondaは最高峰クラスで3年連続20度目、全クラス通算62度目のコンストラクターズタイトルを獲得。タイトル防衛と連覇を目指すHonda勢は、初テストからモチベーションの高さを感じさせていました。

20歳にしてHondaのエースになったマルケスは、昨年11月のバレンシアテストでライバルを圧倒するすばらしい走りを披露して一年を締めくくりました。それから2カ月間のテスト禁止期間を経て、今季初テストに挑んだマルケスは、さらなる成長をみせてくれました。

初日は、新旧のマシンを乗り比べながら身体慣らしを行うという軽めの走行でしたが、2分00秒台の好タイムをマーク。2日目は車体もエンジンも進化した2014年型RC213Vのテストに集中して取り組むと、新型マシンのパフォーマンスを遺憾なく引き出し、この日ただ一人となる1分59秒台を記録しました。最終日の3日目には、さらにタイムを短縮し、2012年にケーシー・ストーナーがRC213Vで記録した1分59秒607という非公式サーキットベストタイムを更新し、1分59秒533をマーク。さらに、20ラップのロングランを行い、1分59秒台のベストタイムを出しながら、ほかのラップも2分00秒台で周回し、周囲をうならせました。

チャンピオンになったことで、この冬はイベントやさまざまな行事に引っぱりだこだったマルケス。多忙な日々を過ごしましたが、しっかりトレーニングを積んできた成果を感じさせ、2年連続タイトル獲得に向けて、まずは順調なスタートとなりました。

昨年総合3位のペドロサは、総合タイムでは6番手でしたが、大きな成果を得た3日間でした。ペドロサは昨年11月に右鎖骨の手術を受け、以前に骨折した際に入れたプレートを除去。初日に完治していることを確認すると、3日間ともテストメニューに取り組みました。新旧マシンの比較テスト、ブリヂストンのニュータイヤのテストなど、3日間で192ラップと、Honda勢では最も多くの周回数をこなしました。

今回は、走行時間とピットにいる時間のローテーションをきっちりとこなす、高い集中力が求められるテストでした。最終日の午前中には、路面温度が上がらないうちにほとんどの選手がベストタイムを狙ってアタックを試みました。ペドロサもアタックしましたが、ブレーキに不具合があり、タイムを更新できませんでした。1日目3番手、2日目2番手と好調な走りをみせていたペドロサにとっては、最終日の順位とベストタイムは不本意なものでしたが、次回のテストでは、マルケスとともに、トップタイムを狙う走りをみせてくれるに違いありません。

3年目のシーズンを迎えるブラドルは、3日間で161ラップをこなし、着実にタイムを更新。昨年は、初ポールポジション、初表彰台を経験して大きく成長しました。シーズン終盤戦のマレーシアGPでは、転倒した際にコースサイドに敷かれている人工芝がめくれ上がり、そこに右足を引っかけてしまう不運なアクシデントにより、右足を骨折。これにより、シーズン終盤戦は不完全燃焼のレースが続きましたが、万全な体調で挑んだ今季初テストは、初日から好調な走りを披露。2014年型RC213Vが「気に入った」というブラドルは、テスト2日目にはマルケスとペドロサに続いて3番手タイムをマークしました。最終日はブレーキに不具合があってテストメニューを完全には消化できませんでしたが、次回のテストに向けて、大きな期待を抱かせました。

GO & FUN Honda Gresiniで3年目のシーズンを迎えるバウティスタは、2014年型マシンのセットアップに集中しました。バウティスタは、RC213V勢の中で唯一サスペンションとブレーキがほかのマシンと異なります。シーズン最初のテストということで、バウティスタは今年型のマシンとサスペンションのセットアップに集中しました。昨年は表彰台に立てませんでしたが、ほとんどのレースでし烈な4位争いに加わりました。今年は、その中から抜け出し、表彰台争いに加わることが大きな目標となるだけに、気合の入ったテストになりました。

今季は、MotoGPマシンの車両規則が変更になりました。最大の変更点は、エンジン・コントロール・ユニット(ECU)がマニエッティ・マレリ社の1社供給となったことです。その中で独自ソフトを使うマシンを「ファクトリー・オプション」と呼び、共通ソフトで走るマシンを「オープンカテゴリー」としました。

Honda、ヤマハ、ドゥカティのワークスマシンは、「ファクトリー・オプション」で参戦します。シーズン中に使えるエンジンは、昨年と同様の5基ですが、燃料タンクの容量が21リットルから20リットルに減少。一段と厳しい燃費を要求されることになります。

今年から新設された「オープンカテゴリー」は、昨年までのCRTマシンに代わるカテゴリーで、シーズン中のエンジン使用上限数が12基、燃料タンク容量は24リットルとなっています。このオープンカテゴリーに、Hondaは市販レーシングマシンのRCV1000Rを4台供給します。昨年11月の公式テストでは、Hondaが用意した2台のRCV1000Rに、ヘイデン、青山、レディングの3選手が試乗しました。今回のテストでは、すべての選手に新車が用意され、本格的なテストが始まりました。

Drive M7 Asparのヘイデンと青山博一は、チームのマシン決定がギリギリだったことで、今回のテストは、ともに1台ずつでテストを行いました。今回のテストで、ヘイデンは176ラップをこなし、2分01秒台までタイムを上げました。チームメートの青山博一は181ラップをこなし、2分02秒台。本格的なテストは、マシンの準備が完全に整う2回目のテストからになりますが、完成度の高いRCV1000Rに両選手は手応えを感じていました。

Moto2クラスからステップアップし、新たなチャレンジに挑むレディングは、2分04秒台からスタートして、2日目に2分03秒台、3日目に2分02秒台と、着実に前進しながら、MotoGPマシンに慣れることに集中しました。今回がRCV1000Rの初テストとなるアブラハムは、ケガをしている左肩が完治しておらず、思うように走ることができませんでした。テストを終えたアブラハムは、チェコに戻って医師の診察を受けることになりました。

次回のテストは2月26日(水)から28日(金)までの3日間、再びセパン・サーキットで行われます。

マルク・マルケス(総合1番手 1分59秒533)
「3日間のテストの進み具合にとても満足しています。プレシーズンをいい形でスタートできました。最終日にはレースシミュレーションも行うことができ、すべてがうまくいきました。たくさんのセットアップを試し、多くのデータを収集することができました。これで、次のテストに向けて準備は整いました。しかし、最初のテストメニューが終わったばかりなので、まだまだやらなければいけないことがたくさんあります。試したいこともあるので、次のテストを最大限に活用したいと思っています。体調はいいです。ここ数カ月、ずっとスケジュールが詰まっていましたが、トレーニングは続けてきました。先週風邪を引いてしまい、ここへ来たときは少し調子がよくありませんでしたが、今は大丈夫です。このテストのおかげで、体調がよくなりました」

ステファン・ブラドル(総合5番手 2分00秒112)
「いいベースのセットアップを見つけることができました。この3日間のテストには、とても満足しています。ブレーキングの安定性など、いくつか改善しなければならない部分は残っていますが、2014年型RC213Vの感触はとてもいいです。最終日は、レースシミュレーションを行いましたが、リアブレーキに小さな問題があって、最後まで走ることができませんでした。しかし、予定していた作業は進めることができましたし、ブリヂストンの新しいリアタイヤからも、いいフィードバックを得られました。今回の問題点が次のテストで改善できることを願っています」

ダニ・ペドロサ(総合6番手 2分00秒336)
「長い間マシンに乗っていなかったので、とても楽しいテストになりました。昨年の11月に右の鎖骨の手術をしていたので、その回復の度合いが気になっていましたが、問題はありませんでした。初日は、リアブレーキやクラッチ、そしてエンジンのマッピングに取り組みました。2日目は新しいシャシーに取り組み、ブリヂストンの新しいタイヤのテストも行いました。最終日は、車体のセットアップに集中しました。順調にメニューは消化できていると思いますが、まだまだやることはたくさんありますし、すべてのサーキットに向けて準備をしなければなりません。最終日の午前中はブレーキに問題があって、タイムを出すタイミングを逃しました。しかし、全体的にはセットアップを進めることができたので満足しています。次のテストでは今回の続きから始めることになります。そして、そのあとにあるフィリップアイランドでのテストに向けて、引き続き前進していきたいと思います」

アルバロ・バウティスタ(総合11番手 2分00秒788)
「3日間を通じて、リアのグリップを向上させ、マシンのフィーリングをよくすることに全力を注ぎました。サスペンションのセットアップに集中して、少し前進することができましたが、新しいブリヂストンタイヤのアドバンテージをフルに活用できるところまではいきませんでした。昨年よりグリップを出せるセッティングにならず、結果的に思ったようにスロットルを開けることができませんでした。次のテストでは、この部分の改善に取り組みたいです。また、今回のテストでは、ソフトタイヤを使ったアタックもうまくいかずなかったので、一周のラップタイムを上げることにも取り組まなければなりません。とはいえ、全体的には、自己ベストタイムに近いペースで連続周回ができましたし、レースペースには満足しています。最初のテストということを考えれば、とてもポジティブでした。まだやることはたくさんありますが、チームもShowaも、次のテストへ向けてデータを収集することができたと思います」

ニッキー・ヘイデン(総合13番手 2分01秒514)
「とてもおもしろい3日間でした。毎日前進することができましたが、もっとタイムを上げて、より上位にいければ、さらによかったと思います。しかし、走るごとにラップタイムもマシンの感触もよくなりましたし、特にコーナーへの進入時のフィーリングが向上しました。チームは、新しいマシンに一生懸命取り組んでいますし、改善に努めています。最終日は、新しいソフトタイヤを試しました。グリップが上がったおかげでコーナーの立ち上がりでの加速はよくなりましたが、思ったほどタイムアップには貢献しませんでした。この3日間で一番の前進は、電子制御とコーナー進入のフィーリングです。もう少しパワーも必要ですが、RCV1000Rの強みは、ハンドリングのよさとスムーズに走れることです」

青山博一(総合16番手 2分02秒383)
「本当に楽しみにしていたテストでした。昨年の11月にバレンシアでRCV1000Rに乗りましたが、マシンを3人でシェアしながらのテストでした。今回は自分のマシンで3日間走ることができました。しかし、今回は1台しかなく、まだ、セットアップのパーツがすべてそろっていないので、やれることは限られましたが、それでも、3日間を通じて気持ちよく走ることができました。今回はギアをサーキットに合わせきれず、6速でエンジンが吹けきってしまっている状態でした。それで、電子制御などに集中することにしたのですが、ちょっと時間をかけすぎたかなというのが反省点です。マシンのパッケージには満足しています。ベースのセッティングが出ているので、あまり変える必要もないと感じています。次のテストはマシンが2台になり、パーツもそろうので、楽しみにしています」

スコット・レディング(総合21番手 2分02秒833)
「3日間を通して、着実に前進することができました。昨年のシーズン後半にケガをしましたが、今年はその影響もなく、また全力で走ることができるようになって、とてもうれしいです。今回は、マシンに慣れることに集中しました。特に、ブレーキングとコーナーの旋回性について考えながら走っていました。たくさん周回することができて、徐々にほかのRCV1000R勢とのギャップを縮めることができましたし、3日間を通じて、確実に前進することができました。全体的にはだいぶ慣れましたが、まだまだこれからです。マレーシアは暑くて路面コンディションの変化も大きく、タイムを出す時間帯が限られます。次のテストではそういう時間帯にいいタイムを出してみたいです。今回は新しいチームと最初のテストになりましたが、とても満足しています。今月下旬にまたセパンに戻ってきます。サスペンションや電子制御に引き続き取り組みます」

カレル・アブラハム(総合26番手 2分05秒974)
「問題はシンプルです。昨年痛めた左肩が完治していなくて、思うように乗れませんでした。モトクロスのトレーニングでは大丈夫でしたが、今はひどく痛みます。特に、ハンドルから身体が離れるときや、肩に負担がかかるときに痛みを感じました。RCV1000Rは完ぺきでとてもいい状態なので、思いきり走れなかったことがとても残念です。初日は40周走れましたが、どんどん状態がひどくなって、3日目はわずか12周しか走れませんでした。しかも、そのうちの2周はただのスタート練習でした。100%の状態で走ることができなければ意味がないと思ったので、走ることを止めました。これからチェコに戻り、医師に診てもらわなくてはいけません」