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#27ケーシー・ストーナー、#26ダニ・ペドロサ

2011年11月10日(木)

バレンシア・2011年ポストシーズンテストレポート

ダニ・ペドロサ ケーシー・ストーナー ステファン・ブラドル アルバロ・バウティスタ アルバロ・バウティスタ 秋吉耕祐

2011年シーズンの戦いを終えたばかりのバレンシア・サーキットで11月8日(火)と9日(水)の二日間にわたり、2012年に向けたテストが早速始まった。

2011年のHonda陣営は、Repsol Honda Teamのケーシー・ストーナーが18戦中12回のポールポジションと10回の優勝という成績でライダーズタイトルを獲得。また、HondaのコンストラクターズタイトルとRepsol Honda Teamのチームタイトルという三冠を達成して、波瀾万丈の一年を締めくくりました。シーズン序盤にレース中のアクシデントで右鎖骨を折って4戦の欠場を余儀なくされたチームメートのダニ・ペドロサも、中盤以降は負傷からの回復に応じて本来のポテンシャルを発揮。9戦で表彰台を獲得してランキング4位で一年を締めくくりました。2012年のRepsol Honda Teamは、この両選手で新たなシーズンを迎えることが決定しており、今回のポストシーズンテストもストーナーとペドロサの両名が来るべきシーズンに向けたメニューを精力的に消化しました。

ところで、2012年からMotoGPの各種ルールに変更がなされることにともなって、マシンの技術仕様もいくつかの変更が加えられています。来年からの排気量は上限1000ccまでと定められ、この規制に応じてHonda陣営のマシンも800ccから1000ccへ排気量が上昇します。2002年から06年までの990cc時代は「RC211V」、07年から2011年までの800cc時代は「RC212V」としていた名称を踏襲して、今回の新しいルールに準拠したマシンには「RC213V」という名前が冠せられています。

排気量が上昇する一方で、燃料タンク容量は従来の21リットルという規制がそのまま継続。そのため、さらに効率のいい燃費と高出力の維持という技術的条件が求められることになり、12年以降のマシン開発に取り組む技術者たちにとっては、今まで以上に高度な知恵と工夫が要求されることになったといえます。これらの各種新技術を搭載したRC213Vは、すでに欧州のサーキットでシェイクダウンを済ませており、ストーナーとペドロサの両選手も、ヘレス・サーキットやブルノ・サーキットでテスト走行を経験しています。

とはいえ、今回のポストシーズンテストはHondaを含む各陣営のマシンがほぼ勢ぞろいして一緒に走行する初めての機会であり、その意味では、現状でのマシンの仕上がり具合と他陣営に対する戦闘力を測る絶好のチャンスでもあります。

テスト初日の8日は、早朝からすっきりと晴れわたる好天に恵まれました。数日前までの第18戦のレースウイークは終始不安定な天候と低い温度に悩まされ続けましたが、この日のバレンシア・サーキットは風もなく、時間の経過とともに穏やかな暖かさに包まれました。気温は20℃、路面も23℃まで上昇し、Repsol Honda Teamの両選手は順調にメニューを消化しました。

午前10時にグリーンシグナルが点灯してコースインの許可が下りると、まずはテストライダーの秋吉耕祐が走行。過去のテストで得られたフィードバック結果に基づく新部品を搭載したマシンで最終確認や検証を実施。その後、ストーナーとペドロサが順調にテストを重ねていきました。ペドロサは40周を走行して1分32秒186のトップタイムを記録。ストーナーも42周を消化して、ペドロサから0.136秒差の1分32秒322という高水準のタイムをマーク。ともに、8月のブルノ・テストからマシンに施された改善に対して好感触を伝えていて、Hondaの両名が全陣営の中でトップ2を占めるタイムを記録したところにも、初日プログラムの充実ぶりが表れました。

またこの日は、日曜のレースで2011年度Moto2クラス王者となったステファン・ブラドルがテストに参加したことも大きな注目を集めました。ブラドルは、LCR Honda MotoGPのRC212Vで精力的に62周を走行。ブラドルがコースからピットボックスへ出入りするたびにLCR Honda MotoGPのガレージ前には多くの報道陣が集まり、注目度の高さを感じさせました。8日のブラドルの自己ベストタイムは1分34秒330。生まれて初めて乗るMotoGPマシンで、ストーナーやペドロサというMotoGPのトップライダーからわずか2秒差というタイムをたたき出したブラドルの高い資質に、チームスタッフや関係者たちは一様に満足げな表情をうかべていいました。

翌9日も、前日以上に晴れわたって穏やかな好天の一日になりました。気温はぐんぐん上昇、半袖でも十分過ごせるほどの陽気の中、ペドロサとストーナーは昨日から継続して着実にRC213Vのベースセットアップを積み上げていきました。

ペドロサは精力的に45周を走行。前日よりもさらにタイムを短縮する1分31秒807を記録して、2日連続のトップにつけました。ストーナーもマシンの状態を確認しながら33周を周回して、1分31秒968でした。

2日間のテストを終えてRepsol Honda Teamの両選手が1-2の位置を占める充実の内容で、来るべき12年もストーナーとペドロサの両名がチャンピオンの有力候補となるのは確実であろうことを実感させるテストになりました。

ブラドルも昨日同様にRC212Vによる走行を継続して、ベストタイムは1分34秒142。61周というどん欲な周回数で前日よりもさらにタイムを詰め、順応性の高さを数字の面でもはっきりと証明しました。

また、この日の走行ではアルバロ・バウティスタにも大きな注目が集まりました。10年、11年と他メーカーで高いポテンシャルを発揮してきたバウティスタは、12年シーズンにTeam San Carlo Honda Gresiniに加入することが決定。250cc時代から好敵手として数々のバトルを繰り広げてきた故マルコ・シモンチェリの跡を継ぐことになりました。バウティスタは朝から早速コースへ飛び出すと、RC212Vで周回を重ねてHondaのマシン特性に慣熟する一日となりました。55周を走行したバウティスタは、初めて乗るHondaのMotoGPマシンであっさりと1分33秒814を記録。初体験のマシンとチーム、しかも800ccマシンという条件でありながら、Rpesol Honda Teamの両名に2秒差まで迫る走りは、来るべき12年シーズンの活躍を大いに期待させました。

2日間のテストを終え、選手たちはつかの間の休憩と新たなシーズンに備えた体力作りに励むウインターブレイク期間を過ごします。一方、選手からの貴重なフィードバックを得たHRC開発陣は、さらに死角のない完ぺきなマシン作りを目指して一心不乱に作業にいそしみます。

次に彼ら全員が顔を合わせるのは、年が明けた2012年1月31日から始まるマレーシア・セパンテストです。選手たちとHonda RC213Vが、それぞれの持つ高い戦闘力を相互に引き出しあってハイレベルな走りが実現されれば、12年シーズンのHonda陣営は、今年以上の強さとしぶとさを発揮するにちがいありません。そして、それを実現させるための水面下の努力は、まさに今この瞬間も続けられています。