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トライアル世界選手権

藤波貴久 20th Anniversary

20年の歩みとその力の源

今年は世界選手権参戦20年目。年齢的にも参戦ライダーの中で最年長となりました

自分としては、年齢は全く気にしていなくて、若いころと何も変わっていない感覚です。打ち身や軽いねんざなどのケガが治るのが遅くなってきた実感はありますが、それ以外は体力的にも向上しているくらいです。ただ、若い選手を見ていて、自分も変わってきたのかな、というように感じることはありますね。

たとえば、どんなところで感じますか?

今年からチームメートになった17歳のハイメ※4は、とにかく若くて、走りもイケイケ。勢い余ってマシンを壊すこともあるくらいです。そんなハイメに対して、「もうちょっと考えて乗りなさいよ」と思うこともあるんですけど、「そう言えば、じぶんもあんな風だったな」と気付くんですよね。そういった部分が変化なんだと思います。

※4 ハイメ・ブスト選手…2014年の世界選手権ワールドカップクラス(旧ジュニア選手権)のチャンピオン。今季からRepsol Honda Teamに加入

ライディングも変わったように見えます。

デビューした頃から「Fujigas」※5と呼ばれて、どんなときでも全開で走っていましたし、気持ち的にもイケイケでした。でも、それだけでは勝てないですし、エンジンが4ストロークに変わってからは、操縦性も考えて常に全開というわけではなくなりました。そういった意味では、走りも変化していますね。練習でも、以前は1日に5〜6時間、徹底的に乗り込んでいましたが、最近は苦手なポイントを克服していくことを主眼に置くようになってきました。「量より質」を意識するようになったのだと思います。
ただ、やはり“Fujigasスタイル”というのは意識して戦っています。世界中のファンの皆さんが、「Fujigasなら何かやってくれる」と期待してくれていますからね。それに応えるためにも、ジャンプなど、魅せる走りを常に考えています。

※5 Fujigas…藤波選手の常にアクセル全開でチャレンジし続ける姿勢から、スペイン語の「全開=gas」と「藤波=Fuji」が組み合わせられたニックネーム

レースへの臨み方についても、変化した部分はありますか?

もちろんチャンピオンは狙ってシーズンに臨んでいますが、やはりトニーは強いですし、「何が何でもチャンピオン」というよりは、一戦一戦をしっかり戦っていくという姿勢にシフトしてきていますね。ガムシャラに勝利を目指すのではなく、少し引いたところから冷静に考えて戦う、その結果として優勝できれば、という意気込みです。

世界のトップで20年間、戦い続けられる秘訣は何でしょうか?

「好きだから」の一言に尽きると思います。バイクに乗るのが何よりも好きで、自然と乗りたくなってくるんですよね。トライアルが本当に楽しいですし、モータースポーツが大好きだから、ここまで続けてこられたのだと思います。
また、今戦わせてもらっている環境も本当にすばらしいものです。世界のトップライダーとして評価してもらい、プロとして支えられているのを強く感じます。そんな場で戦えることが光栄ですし、それがモチベーションの一つになっています。
先日、日本の「Pen」という雑誌で「世界に誇るべき ニッポンの100人」という特集に取り上げてもらったのですが、ほかに掲載されていたのは、スポーツ界では野球のイチロー選手や、サッカーのカズ選手、本田圭佑選手など、そうそうたるメンバーばかり。その中に、モータースポーツ界の代表として評価してもらえたのは、すごくうれしかったですね。これからも、モータースポーツの発展に向けて役立てればという気持ちも、すごく強いです。