見逃せない「10年目の集大成」

「フジガス負傷リタイアからの復活なるか?!」
第10回大会・世界選手権第4戦(2009年6月6日、7日開催)

藤波貴久(アイルランドGP)
藤波貴久(イギリスGP)

開幕戦の前に行われたスペイン選手権では、ボウやラガに勝って優勝する好調ぶりを見せたフジガスだったが、思わぬ落とし穴におちいってしまう。ドライ・コンディションのスペイン選手権では、パワーアップした09ワークスマシンの仕様がピタリと合っていた。ところが、雨で路面コンディションが悪化した開幕戦アイルランドGPでは、09マシンへの乗り込み不足がでてしまい、まさかの3位&5位となった。

そして第2戦ポルトガルGPは6位。さらに追い打ちをかけるように第3戦イギリスGP1日目、1ラップ目の第13セクションの上りで失敗したフジガスは転落した際に胸を強打して負傷、病院に運ばれて医師の手当を受けた。幸い骨折はしていなかったが打ぼくはひどく、チームの判断でリタイアとなった。これによりフジガスのランキングは5位から同7位となった。フジガスの14年にわたる世界参戦の中でリタイアしたのはこれが初めてのことだった。

2日目のフジガスはケガを押して競技に出場。惜しくも1点差で表彰台は逃したものの、4位につけ、復帰を果たした。フジガスのランキングは7位のままだが、マニュファクチャラーズ・チャンピオンシップでは再びモンテッサ Hondaが単独トップに立つことに貢献した。もしもフジガスが欠場してノーポイントだったならば、ガスガスに逆転されて同2位になるところだった。2日目はフジガスのチームメートでもあるボウが1日目に続いて優勝し、今季4勝目をマーク、V3に向けて順調に勝ち星を重ねている。

フジガスにとって初めての負傷リタイアは、日本GP参戦10年目のピンチとも言えるが、今こそフジガスのモットーである「ネバーギブアップ!」の意気。序盤戦は苦しんだフジガスだが、母国GPをバネに復活することを期待したい。

これまでも、どんなピンチにも屈しない壮絶な生きざまを何度も見せてきたフジガスは、この大変な時代を生きる多くの人に対して、どんな困難があっても生き抜く勇気を与えてくれると思う。普通はあきらめてしまうかもしれない限界をも乗り越えてしまう、それがフジガスの真骨頂だ。自国ファンの絶大な期待と応援に、フジガスはきっと応えてくれるに違いない。フジガスの負けじ魂が爆発することを、楽しみにしよう。勝っても負けても、いつも応援している多くのファンは、フジガスの笑顔を待ち望んでいる。


藤波からのコメント

「多くの方にご心配をおかけしてしまいましたが、幸い骨折はありませんでした。レースをリタイアすることが悔しくて、涙が止まりませんでしたが、もしも……という最悪の事態を考えれば仕方ないと思うしかありません。2日目は痛みとの闘いで、朝のウオーミングアップで1mの岩が上れない状態でしたが、痛み止めの薬でなんとか走れました。3位と1点差で悔しい思いをしましたが、1日目のクラッシュから思えばよかったのかもしれません。スペインでもさらに精密検査を受けて、やはり骨折はありませんでしたが、胸を強打しているので内部が切れているそうです。絶対安静とまでいう状態ではなく、安静にしていれば治るそうです。25日に日本へ帰国します。日本では、復活した僕を見てください。がんばります!」

第10回ウイダー日本グランプリに向けて、藤波貴久&トニー・ボウの意気込み(聞き手:藤田秀二)

第10回ウイダー日本グランプリに向けての思いを語るフジガス(写真左)とボウ
トニー・ボウ
藤波貴久

藤田:「第10回に向けて一言お願いします。そしてまた、これまでの日本GPで一番印象に残っていることは?」

ボウ:「Hondaのホームであるツインリンクもてぎで第10回大会を迎えることができたのは、すごく喜ばしいことだと思います。僕は2004年からもてぎに毎年来ていて去年は5回目の出場になりましたが、僕にとって一番印象に残っているのは去年。非常にドロドロのコースでセクションが難しかったのですが、そういうところで2日間とも優勝することができたのがうれしかったです。もてぎの会場と自分との相性もいいのではないかと思っています。今年も去年と同じように走りたいですね。それと、もてぎはいつもお客さんが非常に多く来てくれるので、それはとてもありがたいことだと思っています」

藤波:「僕はこの9年間で9回とも走らせてもらっているので、そういう意味ではHondaのホームであるし自分自身のホームでもあります。そういうところでこれが10回も続いているのはHondaさんのおかげですし、ウイダーさんをはじめとするスポンサーさんのおかげで成り立っていると思います。やはり10周年に恥じない走りを今年はしたいなと思っています。やっぱりもてぎはすごく多くのお客さんが来てくれるし、いつもお客さんからパワーをもらっています。僕の中で毎年ひとつの大きなキーポイントになっている大会です。だから今年ももてぎでの勝率が上がれば、その後のレースにも絶対に影響があると思います。ウイダー日本グランプリは、僕の中で一番重要視しているレースです」

藤田:「確かに、これまでの結果をふり返ってみると、ウイダー日本グランプリで2日間とも優勝することができたライダーとその数は、ランプキンが2度(00年の第1回大会と01年の第2回大会)、フジガスは1度(04年の第5回大会)、ボウも1度(08年の第9回大会)で、この3人はそれぞれ日本GPで2日連勝した年に世界チャンピオンとなっています。つまり、もてぎで2日連勝することはものすごく難しいことではないかと思いますし、そのもてぎを2日間制した者こそチャンピオンにふさわしい、とも言えそうですね」

藤波:「そうですね。僕は前からそう思っていましたし、04年にチャンピオンになったときのように、もてぎで連勝することはチャンピオンにつながると思います。ですから、特に今年はすごく気をひきしめて、もてぎの2日間に臨みたいと思っています」

ボウ:「やはりもてぎで勝利を重ねることは非常に重要だと思っています。昨年はもてぎで連勝したことが大きな自信になったので、今年も一日一日を大事に戦って、もてぎで連勝できるようにがんばります」

藤田:「ありがとうございました。お2人によるすばらしい優勝争いが見られることを楽しみにしています」

最後に、ボウ選手のスペイン語を通訳していただいた藤波選手に感謝します。

では皆さん、6月6日、7日は、もてぎでお会いしましょう!


藤波貴久〜2009年ウイダー日本グランプリ 開催直前メッセージ

トライアル世界選手権 ウイダー日本グランプリ(公式ホームページ)

●ウイダー日本グランプリ10年、6人の優勝者たち

大会回数年号1日目優勝者2日目優勝者
12000年ドギー・ランプキンドギー・ランプキン
22001年ドギー・ランプキンドギー・ランプキン
32002年藤波貴久ドギー・ランプキン
42003年藤波貴久グラハム・ジャービス
52004年藤波貴久藤波貴久
62005年藤波貴久アルベルト・カベスタニー
72006年トニー・ボウアルベルト・カベスタニー
82007年トニー・ボウアダム・ラガ
92008年トニー・ボウトニー・ボウ
102009年??