第二部 藤波“200戦”達成、記念インタビュー

08年、王座奪還を目指す藤波は、第3戦アメリカGP1日目に2年ぶりの優勝を獲得。ポイントランキングも3位から2位へと返り咲いた。その勢いのまま、母国グランプリを迎えた。2008 FIM SPEA トライアル世界選手権第4戦、「ウイダー日本グランプリ」は2000年の第1回大会から数えて9年目を迎える。競技は2日制で行われ、1日ごとに順位がついてポイントが与えられる。そして、この日本GP2日目で、藤波は世界参戦200回目を刻むことになる。また、藤波は前回アメリカGPまでの198戦において、28勝をマークしている。今回の日本GPで2日間連続優勝することができたならば、藤波の優勝回数はちょうど30勝となる計算だった。200戦目を30勝で飾ることができるかどうか、注目の中で競技は行われた。

 

藤波選手に聞く「1日目の競技を振り返って」

競技は5時間30分の持ち時間で15セクションを2ラップして争われましたが、1日目は雨で路面コンディションが悪化しました。特に1ラップ目、「ダートトラックの森ゾーン」にある第2セクションは、07年チャンピオンのトニー・ボウ(REPSOL MONTESA HRC)や06年チャンピオンのアダム・ラガ(ガスガス)も失敗して減点5になりました。そこを、藤波貴久選手だけが唯一人減点3で走破するなど、出だしはとてもいい感じでしたね。

「今回はすごく気合いが入っていたし、“絶対に勝つんだ”という気持ちが空回りしないようにセーブしながら走っていました。ドロドロの上りは僕が得意とするコースだし、そういうところで4ストロークバイクの強みを出して、2ストロークバイクよりも前に進むことができる。Hondaのバイクと僕がマッチして、第4セクションでもあのパフォーマンスを発揮(注・ラガが減点2となったところを藤波とボウはクリーン=減点0で走破)することができたと思います」

第5セクションは、出口にコンクリートを3段重ねたステアケース(垂直な段差)が壁のように立ちはだかり、1ラップ目は全員が失敗。2ラップ目に上がれたのは、藤波選手ただ一人でした。

「第5セクションは1ラップ目に上がれなくて悔しかったので、2ラップ目は1ラップ目とは違う下から勢いをつけて真っ直ぐに行く走行ラインを攻めて、上がることができました。これは1ラップ目にボウがトライして失敗したラインだったけれど、僕は行けると思っていました」

「ハローウッズの庭ゾーン」にある最初のセクション、第6セクションは非常に滑りやすい丸太を上がって下りるところで全員失敗していましたが、藤波選手だけは足つき2回の減点2で見事に走りきって、観客のみなさんから拍手大喝采を受けました。

「やはり誰も行けていないという難所になればなるほど、力が湧いてくるというか。“絶対に俺が一番に走ってやる”、という気持ちが湧いてきます。そういうセクションでリードを広げたいし、そういうところはすごく集中して走ります。特に今回は、どのコースでもドロドロだったので。本当にアクセル全開で走破していくという僕のスタイルがハマるセクションだったと思います」

実際に、1日目は1ラップ目の第6セクションで藤波選手がトップに立ち、ボウに3点差、ラガには7点差をつけていました。ところが、その後は減点5となるミスやクラッチのトラブルなども重なり、ピンチに追い込まれた藤波選手でした。特に第10セクションで4連続減点5になってしまったときには、見かねたHondaの先輩、小林直樹さんが藤波選手をつかまえて、「いいか貴久、限られた中でベストを尽くせよ!」と必死に声をかけていたのが印象的でした。

「あのときは僕もチームも本当にナーバスになってしまっていました。そこに直樹さんが声をかけてくれて、しかも本当に強い口調で言ってくれたので、そこで自分に戻れることができました。本当に直樹さんに助けられたところがありました」

その後は苦戦しながらも、ときにはボウを上回る走りで健闘した藤波選手でした。そして最後は、「スーパースピードウェイ特設ゾーン」に戻って最終・第15セクションとなったわけですが。ここは1ラップ目にクリーン、2ラップ目は岩の壁の上りで落ちてしまったのが痛かったですね。あそこを藤波選手がクリーンして、ラガが減点されていれば、藤波選手が2位だった可能性もありました。

「1ラップ目はクリーンすることができていたのですけれども。2ラップ目は時間が無くてセクションの中で焦りすぎていたのが敗因でした」

1日目に最もうまく行けたところは? そしてまた、2日目の抱負は?

「そうですねぇ、第5セクションは僕しか出口まで出ていないので、そういうところで僕自身をアピールすることができたかなと思います。全体的にも土の登りでは力を発揮できたと思います。ただ、自分の失敗がすごく多かったので、今日は50%から60%くらいの走りだったと思うし、それでこういう結果になってしまったと思います。でも、トニー・ボウとかけ離れているわけではないし、そういう意味では本当に自分が失敗しなければ、自分が90%から100%の走りができれば絶対に優勝できると思うので、2日目は100%で勝ちたいと思います」