トライアル2007

2ストロークバイクと4ストロークバイクで2004年と2007年にそれぞれ世界チャンピオンを獲得したHondaライダー、藤波貴久(三重県出身/27歳)とトニー・ボウ(スペイン出身/20歳)。2人が初めて対談を行い、今年のトライアル世界選手権を振り返るとともに、お互いについて、バイクについて、そして2008年に向けての熱い思いを語り合った。

1.2007年について

――藤波さん、今年はお疲れさまでした。ボウさん、おめでとうございます。今年の世界選手権を振り返って、どう思われますか?

藤波貴久(以下、藤波):「今年はトニー・ボウがREPSOL MONTESA HRCに来て、僕は常に彼の後ろにいる感じでした。アウトドアの前に行われたインドアトライアルはあまり得意ではないので、トニーに負けてしまうかなとは思っていたけれど、アウトドアでこれだけ差をつけられるとは想像もしていなかったんです。僕にとってはチャンピオンを取らないといけない年だったのですが、残念な結果になってしまいました。いつも何かを探りながら、思ったほど走れない、勝とうと思っても勝てない状態でした」

トニー・ボウ(以下、ボウ):「僕にとってはインドアとアウトドアの世界選手権で両方ともタイトルを獲得することができて、すごくよかったです。今年初めてREPSOL MONTESA HRCのメンバーになって、とてもいいフィーリングだったし、バイクのよさについても喜んでいます」

――今年、一番印象に残ったことは何ですか?

藤波:「やはりトニーがチームに来て、色々なことが結構変わりました。バイクのこともそうですし、トニーが来たことで大きな刺激を受けました」

ボウ:「今年はすごく練習をしました。チームが変わって色々なことが初めてだったし、何か1つというよりも何もかもが変わって、とにかく一生懸命にやってきました」

――今年、一番苦しかったことは何ですか?

トニー・ボウ(左)、藤波貴久(右)

藤波:「ツインリンクもてぎで開催された第4戦ウイダー日本グランプリで、もっといい成績を出したかったですね。最低限の表彰台には上がったけれど、応援してくれる日本のみなさんの前で勝ちたかったですね」

ボウ:「僕はインドアトライアル第3戦マルセイユGP(フランス)の予選です。1度バイクが壊れて、直したけれども直っていなくて、結局予選落ちして6位になり、アダム・ラガ(ガスガス)にランキングトップの座をひっくり返され2位になってしまったのが、一番苦しかったですね」

――一番いい思い出は何ですか?

藤波:「ハッキリ言って、あまりなかったですね」

日本GP 2日目(優勝:ボウ、3位藤波)

ボウ:「やはりチャンピオンになれたことですが、どちらかといえばインドアの方がいい思い出になっています。というのも、アウトドアは最終戦で勝ってチャンピオンを決めたかったけれども、最終戦ベルギーGPがキャンセルされて、最後のレースをする前にチャンピオンが決まってしまいました。うれしいけれども、もっとちゃんと最後まで戦ってタイトルを取りたかったですね」

――では、一番悪い思い出は何ですか?

藤波:「1回も勝てなかったこと」

ボウ:「やっぱりマルセイユGPのこと。悔しいし、悪い思い出ですね。2位ならまだよかったけれど、6位でしたから」

――今年の第1戦スペインGPは雨で非常に滑りやすい大会だったと思います。そこでボウさんが勝ったことが、チャンピオンになるための大きな自信になったのではないかと思いますが、いかがですか? 藤波さんの場合は、この開幕戦で勢いに乗れなかったことが大きかったのではないかと思いますが

藤波:「僕の場合はカゼをひいてしまい、100%の走りができませんでした。第1戦のコースは嫌いじゃなかったけれど、カゼで熱があり下見もできませんでした。苦しい戦いになったし、あそこでトニーとの差を開けられてしまった感じですね」

ボウ:「今年の第1戦に対しては自分でも気負いがあったと思うし、雨が降って滑りやすい地形ではあまり練習していなかったので難しかったです。けれども、それで勝てたことによって、チャンピオンになるため、というよりも次の第2戦に対してのいい自信になりました」

――藤波さんにとっては、どの大会が一番問題だったと思いますか?

トニー・ボウ(最終戦アンドラ)

藤波:「今、一番印象に残っているのは(事実上の最終戦となった)第9戦アンドラGPかな。セッティングを出せなかった、ということもありましたけれども。今年最後の大会ということで、自分に対してプレッシャーをかけすぎたのかなと思います。今季最悪の5位という結果でしたし。気持ちの持っていき方が問題でした」

――今年の世界選手権が終わったとき、どういう気持ちでしたか?

藤波:「今も言ったように、最終戦は自分に対してプレッシャーをかけすぎたのかなと思いました」

ボウ:「僕はアンドラGPで勝ててうれしかったし、チャンピオンを取る前のプレッシャーと、取ったあとのプレッシャーが変わりました。チャンピオンになって、追われる立場のプレッシャーを感じています」

――ボウさんの勝利は、来年への意欲を高めますか?

ボウ:「チャンピオンを取ったからどうこうというよりも、今までよりもプレッシャーはありますが、練習をしてこれまでのようにやっていけば来年もよい結果を出せるのではないかと思っています。もちろん、タイトルを狙っているのは僕だけではないので、非常に難しいことだとは思いますが」

――藤波さんは今年の不振を来年にどうつなげますか?

藤波(最終戦アンドラ)

藤波:「僕やドギー・ランプキンもトニーと同じバイクに乗っていますが、トニーが同じバイクであれだけ勝ったということは、ライダーの腕によるところが大きいのだと思います。勝てるバイクであることは証明されたので、あとは練習するだけですね。僕にとっては瞬発力をいかにして身につけるかということが課題です。トレーニングをしたからといってすぐに身につくものではありませんが、求めるものはハッキリしているので、その意味ではがんばりやすいですね」

――ボウさんは、昨年は、今年ほど多くは勝てませんでした。その理由は何だったと思いますか?

ボウ:「今年はチームが変わり、バイクが変わったことが、がんばれる理由になりました。去年より一回りも二回りも大きくなれたのではないかと感じています。とにかく練習をして、優勝、優勝、優勝ときて、それにチャンピオンという結果がついてきた感じでした。チームとバイクが変わって、より集中することができたと思います」

――ボウさんが4ストロークで1年目からすばらしい成績を出してチャンピオンになれたのは、藤波さんとランプキンさんが昨年までの2年間で4ストロークを改良してきたおかげだと思いますか?

ボウ:「フジとドギーが2年間バイクを改良してきたおかげだということは、絶対にあると思います。1年目の4ストロークのときに乗っていたとしても勝てたかどうかは分からないですけれども。今年のバイクはすごくいい状態に仕上がっていましたし、それはフジとドギーのおかげだと思っています」

ドギー・ランプキン(REPSOL MONTESA HRC)

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