貴久の逆襲が始まったのは、これも去年と同じく、ホームグラウンドの日本大会だった。去年は、土曜日曜のパーフェクト優勝あと一歩のところを、1点差でジャービスに敗れた。ジャービスはタイトル争いには関係なかったが、シリーズの流れを見れば、ここで出鼻をくじかれたのは間違いない。
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2004年世界選手権第3戦。地元日本で、ランプキン選手との接戦の末2日間とも優勝。ダブルウィンを達成し表彰台の頂点に立った。 |
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土曜日、まず貴久は、予定通りに勝利をした。表彰台での貴久は、喜びをあえて抑えて、冷静を保っていた。試合は、土曜日で終わってはいないからだ。
日曜日。やはりライバルはランプキンだった。1ラップめの貴久は絶好調で、対してランプキンは9点差。しかしここからのランプキンの追い上げが見事だった。2ラップめのランプキンは、まさかのオールクリーンを達成。貴久のパーフェクト優勝を、じわりじわりと脅かしていった。
貴久は、後半で大きなミスもした。しかし今年の貴久は、ここからの踏ん張りがちがう。結局、ランプキンに対してぎりぎり、同点のクリーン差で勝利した。貴久が、土曜日曜の2日間を勝利したのは、これが初めてだった。
まだまだ勝ち方が危ないと評する人もいると思う。けれど、運不運も含めて、どんなかたちであれ勝利を手中にできる能力こそが、チャンピオンに必要な最後の能力となる。これまでの貴久は、1点差で負けたり、同点で負けたり、はてはクリーンから5点まですべてのスコアが同一で、最後に競技時間の何秒かの差で勝利を譲ったこともあった。大いなる不運だが、これも実力と認めなければ、今の貴久はない。
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現在、第8戦スペイン大会を終えた時点でランキングトップに立っている。残すはあと1戦のみ。世界チャンピオンは目前である。 |
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今、運をも味方にする実力を得た貴久に、もはや敵はいない。続くアメリカ大会でも、貴久は両日ともにパーフェクト勝利。その後は勝ったり負けたりだが、勝てずとも、表彰台は逃さない。この戦い方こそ、チャンピオンの戦い方、そのものだ。
藤波貴久、世界チャンピオン、目前。もはや彼には、勝利は必要とされていない。ライバルとのリードを確実に守れば、それで念願の世界チャンピオンが決定する。しかしそれは、貴久の熱い気持ちに反する。最後まで、全力で戦ってこそ、貴久らしい。その暁に、世界チャンピオンが待っている。(次号に続く)
※今週末、9月4日(土)5日(日)は、トライアル世界選手権最終戦(スイス大会)です。最終戦の模様は、レースレポートと、西巻氏の特集でも詳しくお伝えいたします。がんばれ!フジガス。藤波貴久選手の日本人初チャンピオン獲得に向けて、皆様の大きなご声援をよろしくお願いいたします。 |