トライアル世界選手権日本GPの2日目で、すごい記録が達成されました。この日のトニー・ボウは、15セクション2ラップ、全部で30セクションを、すべてクリーンで走破。自身2度目、2010年ポルトガル大会以来のオールクリーンを達成しました。
藤波貴久は前日に続いて3位表彰台を獲得。藤波が日本で2日間とも表彰台を獲得したのは、2016年以来です。
ボウは、土曜日に勝利した時点で、日曜日のトライアルが、とても少ない点数で争われるものになると予想していました。雨に濡れたもてぎの路面はつるつると滑って手に負えないものになりますが、2日目の天候は回復し、濡れた地面は乾きつつあります。コンディションはたった1日で激変。セクションはクリーンが可能なものばかりになっていました。
とはいえ、全部のセクションでクリーンが可能だということと、実際に全部のセクションをクリーンするのとは全く違います。30ものセクションをすべてクリーンするのは、もちろん不注意があってはならないし、マシンの調子やライディングに乱れがあってもいけない、ちょっとした不運や運命のいたずらにも影響を受けることなく、試合を進めていく必要が出てきます。したがって、オールクリーンはどんなにセクションが簡単でも、なかなかできるものではないと言われています。
しかも、今回はセクションがそれほど簡単ではありませんでした。土曜日と比べれば難易度は低いものの、それでも多くのライダーが抜けられないセクションがいくつもありました。2位の選手のクリーン数は23。30のうち、7つのセクションで減点しています。3位の藤波のクリーン数は19でした。特に11セクション以降の後半のセクション群の難易度が高く、ここでの減点が、勝敗を大きく左右するポイントとなりました。
この勝利で、ボウは開幕3連勝を記録。獲得した選手権ポイントは60点で、2位に早くも11点差をつけ、連覇に向けて死角はありません。
一方藤波は、1ラップ目は2位でしたが、2ラップ目のクリーンすべき第4セクションで5点となって、苦しい追い上げを強いられました。3位から6位前後までは大接戦で、1点を取れば順位に影響し、5点1つで大きく順位が入れ替わる、そんな戦況だったのです。
しかし藤波は後半にいいライディングを見せました。第14、第15セクションと鬼門となった難セクションを連続クリーン。ライバルを振りきって、2日間連続の表彰台を獲得したのでした。藤波の2日間連続表彰台は2016年以来ですが、この2日間でランキングも6位から3位までジャンプアップ。シーズンの戦いの上でも、大きな意味を持つ表彰台となりました。
次の世界選手権は2週間後、6月22~23日のオランダ大会。22日(土)に予選、23日(日)に決勝が行われます。
トニー・ボウ(優勝)
「完ぺきな舞台で、完ぺきなトライアルができました。Hondaのお膝元である日本での勝利は、Hondaのライダーにとってとても大きな意味を持ちます。この偉業を達成するのに、大変重要な仕事をこなしてくれたチームの皆さんには、本当にありがたく思っています。昨年は負傷もあって、満足な結果を残せずでしたが、今年はとてもハッピーな日本大会となりました」
藤波貴久(3位)
「とてもとても、とてもうれしい3位獲得です。日本で、そして2日間連続で表彰台獲得。こんなにすばらしいことはありません。今日のセクションはコンディションの回復で簡単になっていましたが、ミスもしやすい設定で、とても神経を使うトライアルとなっていました。好調なライバルが何人もいたので、2ラップを通じて、一瞬たりとも気が抜けませんでした。僕を表彰台に押し上げてくれたチームの皆さん、日本のファンの皆さんへ、本当に感謝です。表彰台獲得は大きなモチベーション。この調子で、最後まで戦います」
ミゲール・シレラ監督
「すばらしい2日間になりました。日本大会は、Hondaのチームである我々にとって大変重要な大会です。それがプレッシャーとなって我々を、そしてライダーを襲うものですが、ボウはそれをはねのけて、見事なライディング、見事な成績を収めてくれました。日本人である藤波は、より多くのプレッシャーを受けていたに違いありません。しかし、藤波もまた、それをよくはねのけて、2日連続の表彰台を獲得してくれました。ただし、シーズンはまだ序盤です。やるべきことを一歩一歩確実にこなし、レースごとにしっかりと実績を積み上げて、我々は最終目標に向かって、がんばります」
順位 | ライダー | マシン | L1 | L2 | 総減点 |
---|---|---|---|---|---|
1 | トニー・ボウ | ![]() |
0 | 0 | 0 |
2 | A.ラガ | TRRS | 16 | 4 | 20 |
3 | 藤波貴久 | ![]() |
15 | 16 | 31 |
4 | J.ダビル | ベータ | 18 | 19 | 37 |
5 | J.カサレス | ヴェルティゴ | 17 | 21 | 38 |
6 | F.カドレツ | TRRS | 18 | 23 | 41 |
14 | 小川友幸 | ![]() |
48 | 37 | 85 |
※ポイントランキングはレース終了時点のものです
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | トニー・ボウ | ![]() |
60 | ||
2 | A.ラガ | TRRS | 49 | ||
3 | 藤波貴久 | ![]() |
40 | ||
4 | J.ファハルド | ガスガス | 35 | ||
5 | J.ダビル | ベータ | 33 | ||
6 | J.ブスト | ヴェルティゴ | 29 | ||
16 | 小川友幸 | ![]() |
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