TRIAL DES NATIONS トライアル・デ・ナシオン
チェコチェコ

2018.09.23(日)

チェコ/ソコロフ

激戦を戦い、藤波貴久らの日本チームが4位に入る

2018年トライアル・デ・ナシオン(TDN)は、9月23日、チェコ共和国の西部ソコロフで開催されました。

日本チームとして藤波貴久(Repsol Honda Team)、小川友幸(HRC CLUB MITANI)、黒山健一(ヤマハ)の3名が参加。一昨年2位、昨年3位と表彰台を獲得し続けていて、今年は2位表彰台の復活、あるいはそれ以上の結果が期待されましたが、悪天候にも見舞われ、厳しい戦いとなり、日本チームはスペイン、イギリス、フランスに次ぐ4位となりました。

会場はミハル湖にそってパドックが設営され、その周辺と山の中に多くのセクションが設けられていました。昨年、トライアル世界選手権が開催されたところで、藤波にはまだ記憶に新しい会場ですが、小川と黒山にとっては、走ったことのない会場での戦いとなりました。

今年は昨年までと異なり、男子と女子のTDNが同日に開催されました。土曜日に行われた予選は、各チーム2人が出場(昨年は一人)、どちらかの好タイムをチームのタイムとして採用して順位が決められました。日本チームのタイムは藤波が叩き出したものでしたが、その後アタックしたライバルはこのタイムを破ることができず、日本チームは予選トップを獲得しました。

明けて決勝本番。日本は第1セクションで失敗があり、3人が5点。TDNでは、好スコアをマークした2人の結果がチームスコアとして採用されます。一人が5点となっても、他の2人がクリーンなら、チーム減点はクリーンとなり、2人が5点、一人がクリーンなら、チーム減点は5点。3人が5点となった第1セクションでの日本は、10点減点となりました。

その後、こつこつとポジションを回復していき、1ラップ目後半にはスペイン、フランスに次ぐ3位に浮上しました。今回の大会、スペインも少なからずの減点を負っていて、試合全体が難しいことがうかがえます。好調だったのはフランス。若い選手を機軸に、調子を上げています。それでも、日本の方が実力は上位にあると、確信しながら試合は進められていきました。

しかし、女子クラスも混ざってなかなかの混雑です。ワールドクラスは7チームが参戦、女子クラスは10チーム、インターナショナルクラスは16チーム。全部で33チーム、99人がそれぞれの戦いをしています。1ラップ目後半、日本チームは持ち時間が押し迫ってきて、されど目の前にはライバルチームがひしめき合っていて抜くに抜けず。時間は刻々とすぎていきます。

時間がないとなれば、難しくて5点になりそうなセクションをトライせず、申告5点をもらって先を急ぐなどの作戦がありますが、TDNの場合、作戦は3人の意思が通じていなければならず、なかなか簡単ではありません。3人が5点では減点が大きすぎますから、せめて2人が最少限点なら、最後の一人は申告5点で先を急ぐのが作戦的に効率がよいのですが、難しいものなのです。

1ラップ目をゴール。何分かのタイムオーバーは覚悟していたのですが、今年のTDNでは、それぞれのライダーのタイムオーバー減点が加算されてチームの減点となるとのこと。最後のライダーがゴールしたときの超過時間がチームの減点となると思っていた日本チームには、大きな想定外でした。これで、日本チームのタイムオーバーは20点にもなってしまいました。

そんな中、第13セクションで藤波がクラッシュ。ヒザをステップで打ちつけ、裂傷を負ってしまいます。それでも時間がない中、藤波はそのまま走って1ラップ目をゴール、わずかなインターバルで手当てをし、2ラップ目に出て行くことになりました。

2ラップ目、もうタイムオーバー減点はとれません。同時に、20点のタイムオーバー減点を取り返すべく、減点そのものも減らしていかなければいけません。藤波の負傷は、ゴール後に縫合をしなければいけない重傷でしたが、ライディングに大きな影響があるものではなかったのは不幸中の幸いでした。しかし2ラップ目序盤、黒山がクラッシュしてマシンに不具合が出て、思うように減点を減らしていけません。

2ラップ目、最終セクションを小川がトライしてクリーン、藤波がトライする前の段階で、残り時間はほんの数分でした。藤波が最後の力を振り絞り確実にクリーン。黒山は最終セクションをトライすることなくゴールに駆け込んで、2ラップ目はタイムオーバー減点なしとなった日本チームでした。

トータルの足つき減点は127点。これに20分のタイムオーバー減点が加わって147点。スペインチームも今回は苦戦でしたが、それでも19分のタイムオーバーを加えて83点とやはり世界王者の貫録を見せつけました。スタートの早いイギリスは先を急いでタイムオーバー9点を含んで122点、そしてフランスが、タイムオーバー5点を含んで133点。タイムオーバーなしなら、日本はイギリスに次ぐ3位だったのですが、タイムオーバーを含み、4位という結末となりました。

世代交代が進む世界のトライアルで、大ベテランががんばる日本チーム。4位獲得はその成果ですが、この3人がチームを組んでTDNに参加して、表彰台を逃したのはこれが初めてのことでした。

コメント

藤波貴久
「下見の時点で難しいと思っていましたが、雨が降ってさらに難易度が上がりました。渋滞も予想していたのですが、それに対して柔軟な作戦をたてて試合を進めることができませんでした。それで、1ラップ目に3人で20点のタイムオーバーをしてしまいました。タイムオーバーがなければもっと上位にいける順位だったので残念ですが、これが結果でしかたがないと思っています。土曜日の予選1番手はうれしい結果でしたが、結果論で言えば、一番最後のスタートは渋滞の最後尾につくわけで、よいことばかりではありませんでした。TDNの戦いは、もっといろいろ考えなければいけないことがあるのだと、改めて痛感しています。ヒザのケガは、試合後すぐに病院へいって縫合してもらいました。まだ痛みもありますが、問題はないと思います。今シーズンのこのあとは、イベント関係しかスケジュールはないので、まずは身体を治したいと思います。応援、ありがとうございました」

黒山健一
「これまでにない、ハードなレースとなりました。濡れた路面は、とんでもなく滑って、激しい難易度となりました。1ラップ目は大きくタイムオーバーをしています。2ラップ目はそれを避けて、先回り先回りをして、申告5点もだいぶしました。それでも、早回りをしたとしても、前のチームがセクションを待っていて渋滞している。ちょっとどうしようもなかったです。2ラップ目には、近年では久々の大クラッシュも経験しました。それでいくつかのセクションをエスケープすることになりました。いろんなことがありましたが、最後までチーム全員で力を合わせて戦うことができたのはとてもよかったと思います。皆さん、応援をありがとうございました」

小川友幸
「セクションは、これまでで最も難しいTDNでした。時間はなくなる予想だったので、1ラップ目から急いではいたのですが、前のグループを追い抜くことができず、タイムオーバーをしました。もう少し作戦を練っていればと思いますが、残念です。2ラップ目はタイムオーバーは免れましたが、その分減点が増えてしまいました。日本からきた2人は、ノーストップルールへの慣れもあり、ヨーロッパのトライアルそのものにも慣れていかなければいけません。甘くないなと改めて実感しました」

リザルト

順位 名前 ラップ1

ラップ2

タイム トータル
1 スペイン トニー・ボウ
ハイメ・ブスト
ジェロニ・ファハルド
20 44 19 83
2 イギリス ジェイムス・ダビル
ジャック・プライス
トビー・マーティン
56 57 9 122
3 フランス ブノア・ビンカス
アレックス・フェレール
ロリス・グビアン
51 77 5 133
4 日本 藤波貴久
黒山健一
小川友幸
53 74 20 147
5 イタリア マテオ・グラタローラ
ルカ・ペトレッラ
ジャンルカ・トルノール
68 83 23 177
6 ノルウェー イブ・アンダーソン
ハカン・ペダーソン
サンドレ・ハガ
91 93 6 190
7 ドイツ ジャン・ペータース
フランツ・カドレツ
サッシャ・ノイマン
87 103 10 200

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