2012年6月3日(日)・決勝2日目 会場:ツインリンクもてぎ 天候:晴れときどき曇り 温度:22℃ 観客:6000人
トニー・ボウ(Repsol Montesa Honda)の圧倒的な勝利に沸いた土曜日の日本グランプリ。翌日曜日の天気予報は雨で、ギャラリーもライダーも雨を覚悟して朝を迎えましたが、朝の時点ではまだ曇り空を保っていました。いつ降ってくるのかという不安の中、日曜日のトライアルがスタートしました。
日曜日のスタートは、土曜日の成績の逆順。優勝したボウが一番最後にスタートし、土曜日、惜しくも4位だった藤波貴久(Repsol Montesa Honda)はボウの3人前を走ります。
セクションはいくつかが土曜日に比べて難しく設定されており、泥の斜面のセクションには散水車によって水がまかれ、さらに難易度を増していました。まかれた水は時間をおけば乾きますが、ライダーはできれば雨が降る前に少しでも多くのセクションをこなしていきたいので、水のまかれたセクションでも走っていかなければなりません。
土曜日はすべてのセクションをクリーンするかのような勢いだったボウですが、日曜日は第4セクションで1点、第5セクションで3点と、細かい減点がかさみました。しかし、それ以上に手痛い減点を取ってしまったのが、藤波でした。藤波は第4セクションで5点、第5セクションで5点。第5セクションは土曜日より難しくなっていましたが、土曜日と同じセクションで同じ減点を取ってしまいました。決していい滑り出しとはいえません。
その後、藤波が第7セクションで1点を取ったあと、両者とも難所の第8セクション、第9セクションをクリーン。この2つのセクションで、ボウはアルベルト・カベスタニー(シェルコ)からトップの座を奪い返しました。藤波もこの2つのセクションのあと、5位から3位にポジションを上げています。
このころ、アダム・ラガ(ガスガス)がペースを上げてセクションを回り始めました。それについていったのが藤波でした。冷たい風が吹いてきたのも、彼らの背中を押していました。雨が降る前にセクションをこなしていこうという作戦です。藤波とラガの点差はまだわずかだったので、ラガを追うことでライバルの動向を追いかけることもできます。
しかし第10セクション、土曜日の1ラップ目に藤波が5点となった場所で、今度はボウと藤波、2人ともが5点となってしまいます。ボウとトップ争いをするカベスタニーも5点だったので点差は変わらなかったのですが、藤波と3位を争うラガは第10セクションをクリーンしていきました。これで藤波は再び4位となり、ラガを追いかける展開になりました。
藤波とラガの勝負は、こう着状態のまま第14セクションへ。ここでラガが1点、藤波がクリーンとし、その差を2点にしました。さらに最終セクション、ラガはここが登れません。クリーンした藤波は、ラガから3位を奪還、3点のリードを得ました。
2ラップ目、先を急ぐラガ、それを追う藤波、少し離れてカベスタニー、ボウ、そしてジェロニ・ファハルド(ベータ)というグループとなってセクションを回っていきます。藤波も、今度は第4セクションをクリーンして、第5セクションに向かいます。
第5セクションは、前日とラインが変わり、難度が増しています。まっすぐに挑戦すれば、あるいはクリーンの可能性もあるのですが、失敗すれば必ず5点になってしまいます。そのため多くのライダーが、一瞬の判断でマシンを止めて、足をつきながら絶壁の頂点にマシンを運び上げる方法を選択しました。
ラガ、そして藤波はこの方法で3点。カベスタニーは止まらずに1点、ボウにプレッシャーをかけていきます。ボウも登り斜面での瞬時の判断で、横から回り込んでマシンを運び上げるラインを選びますが、しかしアンダーガードがひっかかってしまい、そのままマシンもろとも下まで落ちてしまいます。この5点で、ボウはトップの座をカベスタニーに奪われてしまいました。しかしその差はたったの1点です。
1ラップ目にボウと藤波が順位を上げた第8セクション、今度はボウも藤波も、1回ずつ足をついてしまいました。しかしカベスタニーが3点となったので、ボウは再び逆転でトップの座に返り咲きました。ラガはクリーンをしましたが、藤波はまだ2点差で3位を守ります。いずれにしても接戦です。ボウとカベスタニーの優勝争い、そして藤波、ファハルド、ラガによる3位争いがし烈です。ボウとカベスタニーは1点差、4点離れて藤波、藤波から3点離れてラガ、ラガから3点離れてファハルドという戦況です。
第10セクションは、今度は全員が5点。ここでは勝負がつきません。そのままトップライダーはクリーンを続けて、最終セクションに到着しました。
ここで藤波が満を持してラガの前に出ます。ラガは1ラップ目に失敗しています。藤波は最終セクションには自信があったので、先にクリーンを出して、ライバルにプレッシャーを与えようという作戦です。
そのとおり、藤波は美しくクリーン。この瞬間、藤波の3位以内が確定しました。ラガとファハルドは、最終セクションをクリーンしたとしても、藤波から表彰台を奪うことはできません。
その後は、ラガが5点、ファハルドがクリーンし、ラガが4位から5位に転落。残るはボウとカベスタニー、トップを争う2人だけとなりました。この時点で、先にゴールした藤波とボウの点差は5点。すでに藤波は試合を終えていたので、ボウとカベスタニーの最終セクションの結果次第では、まだまだリザルトがひっくり返る可能性もありました。カベスタニーが5点となれば、藤波が2位、ボウもカベスタニーも5点となれば、藤波が優勝します。
先にゴールして、パドックで結果を待つ藤波でしたが、そこにはボウとカベスタニーが、相次いでクリーンという報告が届きました。ボウは1点差で優勝、2位はカベスタニー、さらに4点差で藤波が3位表彰台という結果で、2012年日本グランプリは幕を下ろしました。
トニー・ボウ(優勝)「今日は第5セクションと第10セクションが難しいコンディションでした。カベスタニーの調子がよかったので、点差のない厳しいレースとなりましたが、そのほかのセクションをきちんとクリーンしていけたので、優勝できてよかったと思います。日本のみなさんには熱い応援に感謝したいと思います」
藤波貴久(3位)「もしボウとカベスタニーが最終セクションで5点となれば、ぼくが優勝という可能性のある試合でした。でも彼らはきっちりと最終セクションをクリーンしたので、結果は3位でした。1ラップ目に第4、第5で5点となったのは残念でしたが、2日目に表彰台に上ることができ、今日はいいトライアルができました。日本のみなさんのおかげです。ありがとうございました」
小川友幸(7位)「土曜日より順位を上げて7位になりました。しかし、実は走りごたえという点では、土曜日の方が充実感がありました。全日本勢の中では最上位となれたので、まずまずの戦いができたと思っています。天気もよくて、お客さんにもよろこんでもらえたと思います。ありがとうごさいました」
順位 | No. | ライダー | マシン | ラップ1 | ラップ2 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | トニー・ボウ | モンテッサ(Honda) | 9 | 11 | 20 | 24 |
2 | 4 | A.カベスタニー | シェルコ | 12 | 9 | 21 | 23 |
3 | 3 | 藤波貴久 | モンテッサ(Honda) | 16 | 9 | 25 | 23 |
4 | 5 | J.ファハルド | ベータ | 19 | 12 | 31 | 22 |
5 | 2 | A.ラガ | ガスガス | 19 | 14 | 33 | 20 |
6 | 14 | D.オリベイラ | オッサ | 27 | 18 | 45 | 13 |
7 | 16 | 小川友幸 | Honda | 28 | 20 | 48 | 17 |
18 | 19 | 柴田暁 | Honda | 50 | 57 | 107 | 4 |
19 | 20 | 斎藤晶夫 | Honda | 67 | 53 | 120 | 2 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | トニー・ボウ | モンテッサ(Honda) | 117 |
2 | J.ファハルド | ベータ | 88 |
3 | A.カベスタニー | シェルコ | 88 |
4 | A.ラガ | ガスガス | 82 |
5 | 藤波貴久 | モンテッサ(Honda) | 80 |
6 | J.ダビル | ベータ | 57 |