2011年トライアル世界選手権も最終戦。Repsol Montesa Hondaのトニー・ボウは、最終戦を勝利で飾り、5度目の世界チャンピオンとなりました。ボウは土曜日に2位となりタイトルに王手をかけたあと、日曜日に優勝を果たしました。ボウと2位のアダム・ラガ(ガスガス)との点差は、最終的には13点でした。ラガは土曜日に勝利して、この時点でボウとのポイント差を10点まで縮めましたが、ボウが逃げきりました。
ボウのチームメートである藤波貴久は困難に耐えて、土曜日に5位、日曜日には4位。ランキングでは堂々3位を獲得しました。アルベルト・カベスタニー(シェルコ)は両日ともに3位に入り、ジェロニ・ファハルド(オッサ)からランキング4位の座を奪い取っています。
フランスのスキーリゾート地、イゾラ2000は、2009年にも世界選手権を招いていて、このときも最終戦として開催されています。ニースの北90km、さまざまな地形が点在している、絶好のトライアルフィールドです。主なセクション構成は、乾いた岩の第1セクションに始まり、4つの川セクション、そして谷筋のセクション群とまとまっています。
土曜日のトライアルは、雨が降るのを予測したラガが早いペースでセクションを巡っていきました。ボウも同様にペースを早めるべくトライしましたが、ラガのこのペースにはついていけず、トータルの試合時間ではボウはラガより45分よけいに時間を費やしました。これからもラガのペースがいかに早かったかがわかります。
ラガが第12セクションに到着したとき、雨が降り始め、後ろを走るライダーには大ハンデとなりました。早いペースで試合を進めていたラガの勝利が見えてきました。ボウは2位に甘んじはしましたが、3位のカベスタニーにはなおリードを保っています。残り1戦のタイトル争いを考えても、2位獲得は悪くない結果といえました。
藤波は、日本大会での負傷により本調子とはいえませんでした。特に1ラップ目の減点が多く、2ラップ目のばん回も届かず、5位に甘んじました。5位は藤波にとっても今シーズン最低順位です。前回はメカニカルトラブルによる5位でした。
この土曜日の戦いで、ボウは日曜日に6位以上に入ればタイトル確定という状況になりました。すでに4回のアウトドア世界チャンピオンとなっているボウの、5つ目のアウトドアタイトルへの挑戦です。土曜日に降り始めた雨は一晩中激しく降り続き、主催者はセクションに変更を加えました。
それがどう作用したのか、日曜日の第1セクションで、ボウはライバルがいきなり5点を取るのを目撃します。ここでボウはもう一度集中力を高め、しっかりとクリーン。試合の冒頭から5点のリードを奪うことに成功します。そしてそのまま、調子よくクリーンの山を築いていくボウ。結局、1ラップ目の第15セクションで、ボウの減点はたったの1点。2位のラガに11点の大差をつけています。3位は藤波の21点で、ボウの圧倒的な好調ぶりがうかがえます。
2ラップ目、ボウの好調は相変わらず。試合の終盤、ボウは予期せぬ5点をとってしまいましたが、それでもラガに対する優位は圧倒的で、最後は余裕のゴールとなりました。ボウとラガの減点数の差は6点。ラガは2ラップ目を2点の減点だけで追い上げましたが、ボウの好調の前には結局届かず。カベスタニーはラガにさらに20点遅れて3位。それでも藤波の上位につけました。
ボウは、今回の勝利で2011年のFIM SPEAトライアル世界チャンピオンを獲得。これはボウの5つ目の世界タイトルですが、ボウはこの他に5つのインドア世界タイトルも獲得しています。
トニー・ボウ(2位/優勝 ランキング1位)「今年も、ついに世界チャンピオン獲得までたどりついて、とても幸せな気分です。しかも今日は、優勝で世界チャンピオン獲得に華を添えられました。最高です。今回は非常に過酷な週末でした。その1つが、土曜日のレースです。ラガはほとんどのセクションをドライ状態で走り、私はほとんどのセクションを雨の中で走ることになりました。私たちの間に、なぜここまで大きなスコア上の開きが出たかという、その答えがこれです。そして今日、私はタイトル獲得を目前にして少し緊張して試合に臨みました。しかし第1セクションでクリーンしたことにより、力が湧いてきて、それで気持ちも入れ替わりました。今シーズン、ラガとのタイトル争いは大変厳しいものでしたが、最後には私が勝利してタイトル争いにも勝つことができました。私自身と私のチームが最善の仕事をしたことに大きな喜びを感じています」
藤波貴久(5位/4位 ランキング3位)「今年もランキング3位でシーズンを終えました。今年、ボウもラガもとてもよいライディングをしてきたと思います。そんな中での3位獲得です。もちろん、今日の5位という結果には満足はできません。結果を見れば、最悪の週末だったともいえます。雨が降り始めたときには、雨の中ベストのライディングができる自信もなく、5位に甘んじることになりました。日曜日も、1ラップ目はよくありませんでした。2ラップ目に回復したものの、終盤で5点を連発してしまい、また納得のいかない4位に甘んじることになりました。ともあれ、ボウのチャンピオン獲得と、私のランキング3位獲得は、それぞれ喜ばしいことであり、チームにとってもよい結果でした。それを素直に喜びたいと思います」
ライア・サンツ(ジュニアクラス13位/15位 ランキング21位)「ベストが出せたとは思えない週末でした。ここへ来る時点で、すでに疲れが出てしまっていて、よい走りはできませんでした。先週の女子世界選手権で勝利して、よりよいライディングができると期待していたのですが、身体的疲労がそれを許してくれませんでした」
順位 | No. | ライダー | マシン | ラップ1 | ラップ2 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | A.ラガ | ガスガス | 6 | 5 | 11 | 23 |
2 | 1 | トニー・ボウ | モンテッサ(Honda) | 7 | 19 | 26 | 22 |
3 | 5 | A.カベスタニー | シェルコ | 11 | 39 | 50 | 10 |
4 | 4 | J.ファハルド | オッサ | 19 | 39 | 58 | 8 |
5 | 3 | 藤波貴久 | モンテッサ(Honda) | 24 | 35 | 59 | 11 |
6 | 13 | J.チャロナー | ベータ | 37 | 50 | 87 | 6 |
順位 | No. | ライダー | マシン | ラップ1 | ラップ2 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | トニー・ボウ | モンテッサ(Honda) | 1 | 7 | 8 | 26 |
2 | 2 | A.ラガ | ガスガス | 12 | 2 | 14 | 22 |
3 | 5 | A.カベスタニー | シェルコ | 22 | 12 | 34 | 12 |
4 | 3 | 藤波貴久 | モンテッサ(Honda) | 21 | 22 | 43 | 13 |
5 | 6 | J.ダビル | ベータ | 32 | 19 | 51 | 11 |
6 | 8 | M.ブラウン | ガスガス | 32 | 35 | 67 | 6 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | トニー・ボウ | モンテッサ(Honda) | 204 |
2 | A.ラガ | ガスガス | 191 |
3 | 藤波貴久 | モンテッサ(Honda) | 155 |
4 | A.カベスタニー | シェルコ | 129 |
5 | J.ファハルド | オッサ | 115 |
6 | M.ブラウン | ガスガス | 90 |
15 | 小川友幸 | Honda | 17 |
18 | 柴田暁 | Honda | 10 |
20 | 砂田真彦 | Honda | 7 |
25 | 松浦翼 | Honda | 4 |
26 | 斎藤晶夫 | Honda | 2 |