トニー・ボウと藤波貴久、Repsol Montesa Hondaの2人のライダーは、トライアル世界選手権第4戦アンドラ大会で、見事1-2フィニッシュを達成しました。ボウはこれで今シーズン4勝目。フランス大会の初日に3位になった以外は、すべての試合で勝利しています。
また、藤波にとって2位は今シーズンのベストリザルト。初戦のドイツGPで表彰台に上った3位以来の好リザルトでした。Repsol Montesa Hondaの2人に続く3位にはアダム・ラガ(ガスガス)が入りました。
スペインの国境からわずか数キロメートルのところにあるサン・ジュリア・デ・ロリアは、アンドラ公国が誇る急な渓谷のうち、もっとも南に位置するエリアです。トライアル世界選手権ではほぼ毎年開催地となっていて、初めて開催されたのは1992年でした。毎年同じ町での開催ですが、セクションの設定などにはさまざまな工夫がなされていて、今年は最初の10セクションが標高の高い町に設定。しかも、その10個はそれぞれがごく近くに配置されていました。
渓谷は森の木陰にあって、ライダーもギャラリーも激しい日差しを避けることができたことは好都合でした。そこから本部前の人工セクションに向けて山を急降下するコースとなっていて、途中、この日唯一の水場のセクションをこなすというバリエーションとなっていました。セクション数はいつもの通り15、これを2ラップして競われます。
標高は高いところで1300メートルにもなるアンドラの難セクション。試合前夜には、若干のセクション難度変更も行われました。これがなければ、いくつかのセクションはどのライダーにとっても絶望的な高難易度となっていたことでしょう。
このようなコンディションにあって、ボウの優位は早くも第3セクションで現れました。ボウはここを1点減点で通過。他のすべてのライダーはここで5点減点になっています。ボウの実力からいって、これは大きなアドバンテージとなりました。このセクションは、2ラップ目も多くのライダーから5点を奪いましたが、ボウ以外では唯一、藤波が2ラップ目に1点でここを抜けています。このセクションは、おそらくこの日の15のセクションの中でもっとも危険なセクションだったはずです。
第3セクションに続いて、ボウは第9セクションでも同じように実力の差を見せつけました。ここをボウは2ラップともに1点ずつで通過しています。他のライダーはすべて、2ラップともに5点でした。この圧倒的なパフォーマンスで、ボウの1ラップ目の減点はわずかに5点。2位につけたのは、チームメートの藤波。藤波の減点は13点でした。ボウのチャンピオンシップのライバルであるラガは19点。3位で試合を折り返しました。
白熱した暑い高地での競技。2ラップ目はすべてのライダーがスコアを落とすことになりましたが、そんな中、アルベルト・カベスタニー(シェルコ)のみが、1ラップ目の24点から21点へと、減点を減らしてきました。しかしそれも、彼のリザルトを押し上げるまでにはいたらず、競技はボウの勝利で終わりました。2ラップを通じてのスコアは15点。2位の藤波に20点の大差をつけて圧勝しました。藤波は2ラップ目はラガと同点でしたが、1ラップ目のリードを守り、6点差で2位の座を獲得しました。
この勝利で、ボウはラガにチャンピオンシップポイントで15点のリードを奪いました。藤波はランキング4位で変わらず。しかし、今大会4位に終わったランキング3位のカベスタニーに6点差まで迫っています。
ライダーとチームは、これからしばしの休息に入ります。次戦は2週間後のイタリア大会です。
トニー・ボウ(優勝)「今日は実に小気味よいトライアルでした。それは前夜にセクション変更がされたおかげでもありました。このような難度の高いセクションは大好きです。しかし前夜の変更は、すべてのライダーにとっていい方向に働いたと思います。今日、もっとも難かしかったのは第9セクションでした。とてもテクニカルな設定でした。でもお客さんにとっては、第3セクションの方が見ごたえがあったかもしれません。それにしても今日は、体力的にきつい大会でした。身体になんの不調もなかったのは、幸運でした。今は次のイタリア大会に向けて、やるべきことをこなすのが私の仕事です。ライバルのラガは、おそらくこれまで以上に意欲を燃やしてイタリア大会に臨んでくるでしょうから」
藤波貴久(2位)「今日はとてもきついトライアルでした。でも、立ち上がりがよかったし、全体にいい走りができたと思います。このところ、大きなミスを繰り返していましたが、今日犯してしまったミスは決定的なものではありませんでした。だから今日の好結果があると思います。1ラップ目のスコアはとてもよかったのですが、多くのライダー同様、2ラップ目には疲労が出てしまいました。そのため、2ラップ目は1ラップ目同様の走りができませんでした。ともあれ、今日はトニーに続いて2位を獲得できて、とてもうれしいです。次のラウンドに向けて、このポジションをキープできるよう闘志を維持していきたいと思います」
ライア・サンツ(ジュニアクラス11位)「今日はうれしい一日になりました。というのも、自分自身のライディングがよかったと思えるからです。このような難しい設定のもとで得た成績は、大きな自信になりました。いくつか簡単なところでミスを繰り返してしまいました。2ラップ目はとても疲れてしまっていて、持ち時間が足りなくなって苦労しました。アンドラは私のお気に入りのラウンドの1つですが、暑い中でのこのような難セクションが好きなのだと、あらためて発見しました」
順位 | No. | ライダー | マシン | ラップ1 | ラップ2 | 総減点 | クリーン数 |
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1 | 1 | トニー・ボウ | モンテッサ(Honda) | 5 | 10 | 15 | 19 |
2 | 3 | 藤波貴久 | モンテッサ(Honda) | 13 | 22 | 35 | 16 |
3 | 2 | A.ラガ | ガスガス | 19 | 22 | 41 | 15 |
4 | 5 | A.カベスタニー | シェルコ | 24 | 21 | 45 | 15 |
5 | 6 | J.ダビル | ベータ | 34 | 42 | 81 | 9 |
5 | 4 | J.ファハルド | オッサ | 40 | 40 | 84 | 7 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | トニー・ボウ | モンテッサ(Honda) | 95 |
2 | A.ラガ | ガスガス | 80 |
3 | A.カベスタニー | シェルコ | 75 |
4 | 藤波貴久 | モンテッサ(Honda) | 69 |
5 | J.ファハルド | オッサ | 60 |
6 | J.ダビル | ベータ | 48 |