Repsol Montesa Hondaのトニー・ボウをはじめ、スペイン人ライダーにとっては母国でのグランプリとなります。会場となったポブラドゥラ・デ・ラス・レゲラス(Pobladura de las Regueras)は、ポルトガルの北にある無名の小さな町で、その名を知る人も多くありません。
この大会、ボウは2位のアダム・ラガ(ガスガス)に大差をつけて快勝。3位はアルベルト・カベスタニー(シェルコ)でした。
ボウのチームメート藤波貴久にとって、この日は厳しい一日となりました。それでも1ラップ目は3位につけ、元世界チャンピオンとしての意地を見せましたが、最終的にはラガに逆転を許して4位。ラガは1ラップ目の4位から、2ラップ目に調子を上げてきて、最後は2位までポジションを上げました。
ボウは今回の勝利でシーズン3勝目となります。世界選手権ポイントでも、最大のライバルであるラガに10ポイント差をつけてトップをキープしています。
会場のポブラドゥラは渓谷の谷の町。よいセクションとなる地形がそこここに点在しています。スペインの国内選手権の会場として使われたあとに、巨額の費用を投じてパドックなどの整備を行い、いまや世界でもトップクラスの快適な会場となりました。
第1セクションと最終セクションの2つが人工セクション。その他はスペイン独特の乾いた岩盤に、滑りやすい森の中。トライアルの魅力が満載の15セクションによる世界選手権スペイン大会です。
スタートから第4セクションまで、ボウは失点なく試合を進めていきました。第5セクションは川の中に設けられた最初のセクション。ここでボウは1点を失いました。一方、藤波はさらにここをクリーンして、ラガ、カベスタニーらからリードを広げていきます。
藤波は第8セクションまでをクリーンして後半のコースに向かったのですが、第9セクションで2点減点となってボウと同点となると、13セクションまでを連続して減点してしまいます。さらに最終15セクションでも5点。その後2ラップ目にも第1セクションで5点となってしまい、好結果を望むべくもなくなってしまいました。
対照的に、ボウは試合が進んでいくに従い、本来の強さを取り戻してきました。第5セクションで1点を取ったあとは、9セクションと13セクションで1点ずつを取っただけで、わずか3点で1ラップ目をまとめてしまいました。これにより、1ラップ目に2位につけたカベスタニーに8点差をつける好リードとなりました。
ボウのこの日の唯一の5点は、2ラップ目の第1セクションでした。滑りやすい巨大な丸太で、ボウはフロントタイヤを滑らせてしまいました。しかしこれが、ボウの集中を高めることになりました。ボウは2ラップ目、この5点以外にはたった1点の減点をおかしただけで、15セクションを走り抜けました。
2ラップでボウのトータルの減点は9点。2ラップ目にたった5点の減点で追い上げてきたラガに対して10点差の快勝でした。
2ラップ目、追い上げどころか減点を増やしてしまった藤波は、表彰台に上るチャンスもふいにしてしまい、なんとかジェロニ・ファハルド(オッサ)から4位の座を守ることに専念することになりました。今回、藤波が4位となり、ファハルドを下したことで、年間ポイントランキングでも5位から4位に浮上しました。
この大会の前、最終戦ポーランド大会の中止が決定しました。現地の大規模な地滑りがその理由です。地域一帯を襲った大雨によって、現地はたいへんな状況になっているようです。
次戦は1週間後、スペインとフランスの国境にあるアンドラ公国で開催されます。
トニー・ボウ(優勝)「結果がこういう結果だからよかったが、今日は難しい大会でした。滑りやすい川のセクションで、トップスタートで最初にトライしなければならなかったので、状況はとても不利でした。それでも、1ラップ目によく集中してリードを作ることができたので、これなら2ラップ目に不慮のことが起きても、なんとか勝利できるのではないかと自信が持てました。いい走りで、いい結果が出せたので、今日はとてもうれしいです。母国グランプリでの勝利は、いつも格別です」
藤波貴久(4位)「今日はいくつかのセクションで最悪のパフォーマンスになってしまいました。4位となれたのは、ある意味でラッキーと言わなければいけないかもしれません。1ラップ目、私は9セクションまでトップで、試合をリードしました。これがまず、いつもと違う状況でした。その後、失敗をし始めると、その失敗は徐々に大きな、致命的なものになっていきました。1ラップ目の15セクションと2ラップ目の第1セクションでの5点こそ、致命的で決定的でした。ポジションを守ることができ、4位に入れたことが今はせめてもの幸いです。さらに幸運だったのは、ファハルドが私の後ろのポジションにいることです。こんな結果だというのに、私は選手権でファハルドを抜くことができたのですから」
ライア・サンツ(ジュニアクラス17位)「日曜日は、土曜日に開催されたヨーロッパ選手権よりもいい走りができましたが、それでも十分ではありませんでした。その結果が17位です。第1セクションと第4セクションにある大きなステップのおかげで、まず20点はまちがいなく減点してしまいます。これを抜きに結果を集計してみれば、私の成績はトップ10に入れるものになります。今日は、この2つのセクションが敗因となりました」
順位 | No. | ライダー | マシン | ラップ1 | ラップ2 | 総減点 | クリーン数 |
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1 | 1 | トニー・ボウ | モンテッサ(Honda) | 3 | 6 | 9 | 25 |
2 | 2 | A.ラガ | ガスガス | 14 | 5 | 19 | 20 |
3 | 5 | A.カベスタニー | シェルコ | 11 | 11 | 22 | 21 |
4 | 3 | 藤波貴久 | モンテッサ(Honda) | 13 | 17 | 30 | 18 |
5 | 4 | J.ファハルド | オッサ | 20 | 18 | 38 | 15 |
6 | 6 | J.ダビル | ベータ | 38 | 23 | 61 | 14 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | トニー・ボウ | モンテッサ(Honda) | 75 |
2 | A.ラガ | ガスガス | 65 |
3 | A.カベスタニー | シェルコ | 62 |
4 | 藤波貴久 | モンテッサ(Honda) | 52 |
5 | J.ファハルド | オッサ | 50 |
6 | J.ダビル | ベータ | 37 |