SUPER GT 2013 GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポート
vol.68 Rd.5 鈴鹿プレビュー チームの総合力で1000kmの長丁場に挑むコーナリング性能が向上したHSV-010 GTの活躍に期待

 SUPER GT第5戦鈴鹿大会は、シリーズ最長の1000kmで競われる伝統の一戦、鈴鹿1000kmです。昼過ぎのスタート後、辺りが暗くなり始めるまでおよそ6時間にわたって争われる長丁場のレースは、毎年数々のドラマが繰り広げられることで知られています。いうまでもなく、レース距離は通常のシリーズ戦の3倍以上。このため4度前後のピットストップが必要になるほか、レース中の気温の変化、場合によっては天候の変化にも対応しなければいけません。つまり、いったんマシンを仕上げたら、あとはドライバー中心の戦いとなる通常のシリーズ戦とは大きく異なり、スタートが切られてからも、ドライバーとチームが一体となって戦うことが求められるのです。

 では、この鈴鹿1000kmで栄冠を勝ち取るためにはなにが必要となるのでしょうか?

 まずは最高の戦略を用意すること。基本4度のピットストップを行うということは、5スティントでレースを走りきることになります。各スティントで最適のタイヤを選択し、これに合わせた周回数を設定すること。また、状況によっては燃費をセーブして給油量を減らす、もしくは、同じく燃費をセーブしてピットストップのタイミングを引き延ばすなどの対応が求められます。それらをすべて完ぺきにこなすことが、栄冠を勝ち取るためには最低限、必要となります。

 タイヤに関していえば、前戦菅生大会ではうれしい発見がありました。ブリヂストンのスリックタイヤが、路面がわずかに濡れた状態でもミシュランに匹敵するパフォーマンスを発揮することが確認されたのです。これまで、いわゆる“チョイ濡れ”のコンディションでは、ミシュランのスリックタイヤが圧倒的に優れた性能を発揮していました。Hondaも今シーズンからは#18 ウイダー モデューロ HSV-010(山本尚貴/フレデリック・マコヴィッキィ組)がミシュランタイヤを使用しているので、その性能が高いことは喜ぶべきことですが、一方で3台のHSV-010 GTは引き続きブリヂストンタイヤを装着しています。つまり、ブリヂストンタイヤが、チョイ濡れでミシュランタイヤと互角の性能を発揮するようになれば、Honda陣営の大多数のマシンが、この難しいコンディションで上位進出が狙えることになります。これは私たちにとって大きなメリットといえます。

 また、前戦菅生大会でも証明された通り、2013年モデルのHSV-010 GTはエアロダイナミクスのバランスが改善され、低重心化によって運動性能が向上しました。もともとHSV-010 GTは鈴鹿サーキットを得意としていますが、これらの改良によりコーナリング性能は一層向上しているので、鈴鹿1000kmでも優勝を含む上位入賞を果たせるものと確信しています。

 ここで各チームの目標についてまとめておくと、ポイントリーダーの#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/小暮卓史組)には、引き続き1ポイントでも多く得点することが望まれます。チャンピオン争いの天王山となるのは、今年もハンディウエイトが半減もしくは全廃される、第7戦オートポリス大会と第8戦ツインリンクもてぎ大会でしょう。だとすれば、それまでにできるだけ多くのリードを築き、余裕を持ってシーズン終盤の決戦に臨むことが重要となります。従って、今回も#100 RAYBRIG HSV-010には、石にかじりついてでも入賞してほしいところです。

 前戦菅生大会で優勝した#8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/松浦孝亮組)はポイントランキング4位に急浮上しました。#100 RAYBRIG HSV-010とのポイント差は7点で、今後の展開次第ではタイトル争いに絡む可能性もあります。第5戦鈴鹿大会でも上位入賞に期待がかかります。

 前戦までランキング上位につけていた#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)と#18 ウイダー モデューロ HSV-010は、前戦菅生大会をノーポイントで終えた結果、#17 KEIHIN HSV-010はランキング9位、#18 ウイダー モデューロ HSV-010はランキング11位と大きくポジションを落としました。ただし、両チームとも優勝を狙えるポテンシャルを有していることには変わりありません。しかも、トップとのポイント差は14〜20点なので、ボーナスポイントが与えられる第5戦鈴鹿大会で優勝できれば、いきなりポイントリーダーに浮上する可能性もあります。というわけで、この2台には鈴鹿での一発逆転に期待がかかっています。

 #32 Epson HSV-010(道上龍/中嶋大祐組)は引き続きウエットコンディションを得意としています。夏の午後、なんの前触れもなく夕立ちが降り出したとしても不思議ではありません。そんなとき、きっと#32 Epson HSV-010が活躍してくれるでしょう。

 鈴鹿1000kmは夏休み後半の8月17(土)〜18日(日)に開催されます。どうかご家族連れで鈴鹿サーキットに足をお運びいただき、5台のHSV-010 GTに熱い声援をお送りください。どうぞよろしくお願い申し上げます。