SUPER GT 2013 GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポート
vol.66 Rd.4 菅生プレビュー 最終コーナーの速さに磨きがかかった2013年型HSV-010 GT 緑深い菅生で3年ぶりの優勝を目指す

 多くの小中学校が夏休みに入った直後の7月27日(土)〜28日(日)、宮城県のスポーツランドSUGOを舞台に、SUPER GT第4戦が開催されます。第3戦セパン大会が終わってから1カ月半ほどのインターバルを挟みましたが、第4戦菅生大会に続いては8月17日(土)〜18日(日)に第5戦鈴鹿大会(鈴鹿1000km)、9月7日(土)〜8日(日)に第6戦富士大会と、およそ1カ月の間に3戦が開催されるあわただしい時期を迎えます。それだけに、自分たちの実力を確実に発揮できるよう、入念な準備と強い意志を持って、この“真夏の3連戦”に挑むつもりです。

 その初戦の舞台となるスポーツランドSUGOは、ヨーロッパを思わせる緑濃い丘陵地帯に設けられたレーシングコースです。ここで最大の勝負どころとなるのは、大きく回り込む高速の最終コーナーと、そこから続く上り勾配のストレートとなります。ここではまず、高いスピードを維持したまま最終コーナーをクリアし、そこから一気にストレートを駆け上がることが重要となります。また、上り下りが激しいため、重量感度が高い(車重の変化がラップタイムに与える影響が大きい)サーキットであるともいえます。さらにいえば、1コーナーからハイポイントコーナーまでのテクニカルセクションでは、機敏なハンドリングが求められますし、最終コーナーへと続くSPイン、SPアウトという2つの中速コーナーもスピードを落とすことなく、リズミカルに駆け抜けることが求められます。つまり、速度域は低速、中速、高速とさまざまですが、コーナリング性能が大きくものをいうサーキットであるといえるでしょう。

 ということは、コーナリング性能の高いHSV-010 GTにとっては有利なコースということになりますが、さまざまな要因が重なった結果、過去3年間で優勝したのは2010年の1度だけ。このときは、#17 KEIHIN HSV-010が、#18 ウイダー HSV-010を最後の最後で下し、劇的な勝利を収めました。

 菅生でHSV-010 GTが圧倒的な強さを示せなかった理由はいくつか考えられますが、サイドラジエーター化されていた当時のHSV-010 GTは思いきりスロットルを踏み込んだままで最終コーナーを立ち上がるのがやや辛く、これがラップタイムの伸び悩む一因となっていたようです。また、ハンディウエイトを積んだときの影響が比較的大きかったことも、重量感度が高いコース特性との相乗効果によりHSV-010 GTに対して不利に作用したと考えられます。

 ただし、2013年モデルのHSV-010 GTはフロントラジエーターを採用することで低重心化を実現しており、おかげで最終コーナーの通過速度がかなり速くなったことが確認されています。これは5月中旬に#32 Epson HSV-010が参加して行われたタイヤテストを通じて明らかになったことで、昨年のタイムを大幅に上回るスピードを示しました。その理由としては、#32 Epson HSV-010が装着するダンロップタイヤの進化も当然関係しているはずですが、それとともにHSV-010 GTの最終コーナーでのコーナリング性能が大幅に磨かれたことにあるととらえています。

 それでは、5台のHSV-010 GTの第4戦菅生大会での戦い振りをそれぞれ予想してみることにしましょう。

 まず、最も大きな期待がかかるのは、やはり地元ケーヒンのサポートを得る#17 KEIHIN HSV-010(塚越広大/金石年弘組)です。前述の通り、彼らには2010年に優勝経験がありますし、ハンディウエイトも42kgとポイントテーブル上位のチームに比べればまだまだ軽い状態にあります。今年は特に金石選手が調子を上げているので、Honda勢では優勝候補の最右翼として、#17 KEIHIN HSV-010を挙げたいと思います。

 第3戦セパン大会で優勝争いを演じた#18 ウイダー モデューロ HSV-010(山本尚貴/フレデリック・マコヴィッキィ組)の活躍も大いに期待されます。例年、ミシュランタイヤ装着車はこの第4戦菅生大会から爆発的な速さをみせてきましたが、今年はそれよりも1戦早く、第3戦セパン大会で#18 ウイダー モデューロ HSV-010がトップを快走しました。彼らが勝利を逃したのはピットストップ時のエンジン再始動で手間取ったからで、それさえなければ間違いなく栄冠を手にしていたことでしょう。これは、#18 ウイダー モデューロ HSV-010とミシュランタイヤのマッチングが非常に高いレベルにあることを示しています。ハンディウエイトが30kgと軽いことも、彼らのパフォーマンスを後押しするはずです。ドライで強いのはもちろんのこと、ウエットレースともなれば手のつけられないスピードをみせつけることでしょう。

 第3戦セパン大会を終えて、引き続きポイントリーダーの座を守っている#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/小暮卓史組)は70kgの重いハンディウエイトを背負ってこの一戦に臨みます。正直、優勝はかなり難しいでしょうが、ライバルたちとのウエイト差が一番大きいこの時期に、少しでもポイントを獲得することは極めて重要です。ここは石にしがみついてでも入賞を果たして欲しいところです。また、#17 KEIHIN HSV-010と#18 ウイダー モデューロ HSV-010が上位を独占してくれれば、#100 RAYBRIG HSV-010のライバルに大量ポイントが流れるのも防げます。その意味からも、有力チームがまだ優勝のチャンスを残している現在のHondaは、チャンピオンシップを考える上で極めて有利な状況にあるといえます。

 ウエットで抜群の速さを誇りながら、ドライレースでは苦戦することの多かった#32 Epson HSV-010(道上龍/中嶋大祐組)ですが、すでにお話しした通り、5月のテストではドライコンディションで非常に期待できるパフォーマンスを発揮しました。このスピードは本物でしょう。第4戦菅生大会でも、テストで得たデータをフルに活用することができれば、上位争いに絡んでくるかもしれません。道上選手と中嶋選手がドライレースで表彰台に上る姿を、ぜひともこの目で見てみたいものです。

 #8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/松浦孝亮組)は第3戦セパン大会で8位に入り、開幕以来3戦連続でポイントを獲得しました。また、同じ第3戦セパン大会の予選では今季初となるQ2進出を達成するなど、着実に進歩しています。第4戦菅生大会でも上位入賞に期待がかかります。

 先ほども申し上げた通り、本大会はチャンピオンシップを考える上で大きなターニングポイントとなる可能性を秘めています。緑深いスポーツランドSUGOを走る5台のHSV-010 GTに、熱いご声援をお送りください。どうぞよろしくお願い申し上げます。