SUPER GT 2013 GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポート
vol.64 Rd.3 セパン・プレビュー おおいなる期待を抱いて赤道直下の国へ 進化したHSV-010 GTでセパン3連勝を目指す

 第2戦富士大会は4月29日の開催でしたので第3戦セパン大会までに1カ月半近いインターバルとなりましたが、この間も栃木研究所では次戦に向けた準備を忙しく進めてきました。

 マレーシアのクアラルンプールにほど近いセパンサーキットは熱帯地方に属するため、一年を通じて気温の高い状況が続きます。最高気温は連日30℃を超え、赤道近くの強烈な太陽が照りつける路面の温度は50℃近くまで上昇します。また、夕方になると必ずといっていいほどスコールが降ることもセパンの特徴の一つです。

 このコースには高速、中速、低速のコーナーがバランスよく配置されていますが、HSV-010 GTが苦手とするコーナーは一つもありません。その事実は、過去のセパンテストで「あのコーナーでの挙動がもう一つ……」というコメントを、ドライバーから一度も聞いたことがないことからも裏付けられます。さらに、2013年モデルでは低速域のダウンフォースがより効率的に発生させられるようになりましたので、シケインへの進入や脱出などといったシーンでは従来以上の速さを発揮できるものと確信しています。

 HSV-010 GTがセパンを得意としていることは、これまでの戦績をみても明らかで、初年度の2010年のみ最高位は3位にとどまりましたが、11年と12年は2連勝を果たしています。惜しくも栄冠を逃した10年にしても、当時使用していたクールスーツが不調に陥ったためにコクピット内の気温が60℃近くまで上がる中、小暮卓史選手とロイック・デュバル選手の2人が懸命のドライビングを続けて表彰台を手に入れてくれました。この反省を生かし、Hondaは非常に高機能かつ高効率のレース用エアコンシステムを開発して、11年より採用しています。これによってドライバー環境が大幅に改善されたことが、11年と12年の連勝をもたらす原動力の一つとなりました。

 もう一つ興味深いのが、HSV-010 GTを投入してからの3年間、セパンでHonda勢の最高位を得たのが常にウイダー HSV-010だった点にあります。従って、チームはこの酷暑のレースの戦い方を熟知しているといえるでしょう。また、ご存じの通り、#18 ウイダー モデューロ HSV-010(山本尚貴/フレデリック・マコヴィッキィ組)は今季よりミシュランタイヤを装着しています。一般的にミシュランは気温の高い状況で強いとされているので、まずは#18 ウイダー モデューロ HSV-010を優勝候補の一台として挙げたいと思います。ハンディウエイトがまだ14kgと軽いことも、彼らが有利と考える理由の一つです。

 その一方で、過去2年間のセパン大会を制したのがHSV-010 GTとブリヂストンタイヤの組み合わせであったことを考えれば、ほかのHonda勢にも同様にチャンスがあるといえます。その意味で最も期待が持てるのは、やはり#17 KEIHIN HSV-010(塚越広大/金石年弘組)でしょう。彼らは11年のセパン戦で3位表彰台を勝ち取っているほか、今季は金石選手が大きく成長し、塚越選手とともにキレのいいスピードを示しています。ハンディウエイトは30kgと決して軽いわけではありませんが、それでもランキングのトップ3に対しては10〜18kgのアドバンテージがあります。彼らも間違いなく優勝争いに絡んでくるでしょう。

 引き続きポイントランキングトップに立っている#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/小暮卓史組)も底力はありますが、ポイントリーダーゆえにだれよりも重い48kgのハンディウエイトを搭載していることが足かせとなります。彼らにも、もちろん優勝のチャンスはありますが、まずはできるだけ上位に踏みとどまって、今後のチャンピオン争いを有利に進めていくことが期待されます。

 そのほか、#8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/松浦孝亮組)には明らかに進歩の兆しがみえていますし、ダンロップタイヤを装着する#32 Epson HSV-010(道上龍/中嶋大祐組)はウエットコンディションで抜群のスピードを披露してくれるはずです。特にセパンでは、前述の通り、夕方になると必ずスコールが降りますので、そうしたときには#32 Epson HSV-010が抜群の速さを示してくれるでしょう。

 SUPER GT第3戦セパン大会は6月15日(土)に予選が、そして16日(日)に決勝レースが行われます。ただし、おいそれと「サーキットにお越しください」と申し上げられる場所ではありませんので、テレビなどを通じて5台のHSV-010 GTにご声援をお送りいただければと存じます。また今回のセパン大会は、青山の本社にて、パブリック・ビューイングを予定していますので、Hondaウエルカムプラザ青山にお越しいただけたらと思います。
どうぞよろしくお願いします。