SUPER GT 2013 GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポート
vol.63 Rd.2 富士レビュー かなわなかった「上位入賞の期待」#100 RAYBRIG HSV-010がポイントリーダーの座を守りきる

 第2戦富士大会では、#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/小暮卓史組)の7位がHonda勢の最高位で、これに#8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/松浦孝亮組)が8位、#18 ウイダー モデューロ HSV-010(山本尚貴/フレデリック・マコヴィッキィ組)が10位、#32 Epson HSV-010(道上龍/中嶋大祐組)が13位で続き、#17 KEIHIN HSV-010(塚越広大/金石年弘組)はアクシデントのためリタイアに終わりました。

 富士スピードウェイはもともとHSV-010 GTのよさを生かしづらいコースで、しかも今回はストレートスピードをいたずらに追いかけることなく、HSV-010 GT本来の持ち味であるコーナリング性能を生かした戦い方で臨んでいたため、ある程度の苦戦は予想していました。ただし、今回の成績はそうした予想をやや下回るもので、その意味では残念な結果でした。率直にいって、富士スピードウェイをホームコースとするレクサス勢が今回は速く、彼らのスピードについていけなかったのが苦戦を強いられる原因となりました。この点については、今後の課題として率直に受け止めたいと思います。

 予選が終わった段階では、Honda最上位の8番グリッドを手に入れた#18 ウイダー モデューロ HSV-010に期待を寄せていました。Honda勢として、唯一ミシュランタイヤを使用する彼らは、事前にタイヤテストを行う権利を有していたので、これを行使し、3月27〜28日に富士でテストを実施しました。それだけに#18 ウイダー モデューロ HSV-010は事前のデータが豊富で、レースウイークに入ってからもこれが強力な武器となっていました。ところが、オープニングラップの最終コーナーでアクシデントに巻き込まれ、一時は最下位まで転落してしまいます。このアクシデントは、#8 ARTA HSV-010が#17 KEIHIN HSV-010に接触し、押し出される格好となった#17 KEIHIN HSV-010が#18 ウイダー モデューロ HSV-010に追突して発生したもので、いわば同士討ちです。Honda勢は8番グリッドから11番グリッドまでに4台が連なっていたため、同士討ちだけはしないようにと繰り返し注意していたのですが、このような結果になって本当に残念でした。幸い、スピンした#18 ウイダー モデューロ HSV-010、それに#8 ARTA HSV-010にはダメージがなかったので、そのままレースを継続できましたが、フロントまわりを大きく損傷した#17 KEIHIN HSV-010は走行を続けるうちに深刻な状況に陥ったため、3周目が終わったところでピットに呼び戻し、そのままリタイアしました。開幕戦でも2位に入るなど、引き続き好調な#17 KEIHIN HSV-010は、今回も好成績を残してくれると期待していただけに、この展開は無念でなりませんでした。

 一方、#18 ウイダー モデューロ HSV-010は最後尾からよく追い上げて10位に入り、1ポイントを手に入れました。アクシデントに遭いながらもばん回してくれた彼らの健闘をたたえたいと思います。

 #100 RAYBRIG HSV-010はこのアクシデントに巻き込まれず、無傷で走り続けましたが、開幕戦で優勝した彼らには40kgのハンディウエイトが課せられており、今回は7位でフィニッシュするのが精一杯でした。

 開幕戦を9位で終え、ハンディウエイトが4kgと軽かった#8 ARTA HSV-010は、レース後半に思ったほどスピードが伸びず、8位に終わりました。ただし、序盤のペースは決して悪くなかったので、この点については今後、解析する必要があると考えています。

 #32 Epson HSV-010は今回もマシン、タイヤ、コンディションの3つをマッチさせることができませんでした。引き続き、チームやタイヤメーカーとともに改善に向けて努力を行っていくつもりです。

 以上のように今回は満足のいく成績を残せませんでしたが、今後のチャンピオン争いを考えると、結果的に#100 RAYBRIG HSV-010は7位に終わりましたが、開幕戦で上位に入ったチームが軒並み低迷したこともあり、第2戦富士大会を終えてもポイントリーダーの座を守り続けています。もっとも、ランキング2位のチームとのポイント差はわずかに1点で、決して優勢というわけではありませんが、第2戦を終えて3メーカーの有力チームがほぼ横並びの状態となっており、ここから本当の意味での戦いが始まるといえなくもありません。しかも、今後は第3戦セパン大会、第4戦菅生大会、第5戦鈴鹿大会と、HSV-010 GTが得意とするコースでのレースが続きます。この3戦でライバルを引き離すことができれば、タイトル奪還は一層現実味を帯びてきます。その意味からも、気持ちを引き締めて今後のレースに挑むことが重要だと考えています。

 また、第1戦岡山国際大会と第2戦富士大会では、各チームがレースウイーク中にセッティングで悩むことがなかったことも、我々にとっては大きな収穫でした。実際のところ、どんなレース戦略を選ぶかという面では悩みましたが、昨年までのように「マシンをどう仕上げるべきか?」という迷いはありませんでした。これはなによりも、2013年モデルの最大の開発テーマであった「低重心化と軽量化により素早くセッティングできるマシンの開発」が達成できたことを意味しており、今後、長いシーズンを戦っていく上で大変心強いポイントだといえます。

 次戦はHondaが得意とするマレーシアのセパンサーキットで開催されます。ここで着実に栄冠を勝ち取り、3年ぶりのタイトル奪還に弾みをつけたいと考えていますので、引き続き5台のHSV-010 GTに熱い声援をお送りくださいますよう、心からお願い申し上げます。