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モータースポーツ > SUPER GT > HSV-010 GT 2013年マシン解説

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2011年モデルから採用され、HSV-010 GTの“顔”ともいうべきテクノロジーだったサイドラジエーター方式。 それを敢えて捨て去り、フロントラジエーター方式に戻した理由とは一体なんだったのか? 3年ぶりのタイトル奪還を目指すHondaがHSV-010 GTに加えた改良の数々を、GTプロジェクトリーダーの松本雅彦が解き明かす。

松本雅彦

エンジン ENGINE

2013年モデルではサイドエグゾースト化に伴って排気系の経路が短くなったことにより、エンジンの高回転化が可能になりました。これにあわせて吸気系も見直しました。さらにはバルブやポート形状を変更することで燃焼の最適化を図っています。いずれの改良も、最高出力の引き上げを最大の目的としています。排気系を短くすれば高回転化が実現できることは当初より分かっていましたが、もくろみどおり高回転領域のエンジン出力の向上を図ることができました。また、昨年のレギュレーション変更でエアリストリクター径が拡大されたことも、エンジン高回転化に伴うパワーアップをより高める効果がありました。フリクションの低減については、もうやり尽くした感があるので、今季は大規模なものは行っていません。いっぽう、吸排気系の経路を短くしたことでエンジン・レスポンスが向上しました。おかげでドライバーからは「ドライバビリティが向上した」と高く評価されています。

エンジン画像

サイドエグゾースト SIDE EXHAUST

開幕戦では、#32 Epson HSV-010がドア下出しのサイドエグゾースト、#8 ARTA HSV-010、#17 KEIHIN HSV-010、#100 RAYBRIG HSV-010の3台がフェンダー出しのサイドエグゾースト、そして#18 ウイダー モデューロ HSV-010はサイドエグゾーストではなく昨年型と同じ8-4-2-1排気のリア出しと、3種類の排気系を投入しました。このうち、いちばん最初に試したサイドエグゾーストは#32 Epson HSV-010と同じドア下出しでしたが、このレイアウトでは排気熱によってリアタイヤの温度が上昇しやすく、内圧の変化に敏感なブリヂストンタイヤとのマッチングがあまりよくないことが判明しました。#8 ARTA HSV-010、#17 KEIHIN HSV-010、#100 RAYBRIG HSV-010の3台に、テールパイプの位置と吐き出し口の向きを工夫したフェンダー出しを採用したのは、このほうがリアタイヤに与える影響が小さいからです。なお、#32 Epson HSV-010が使用するダンロップタイヤは排気熱の影響を受けにくい特性だったため、開幕戦はドア下出しを使いました。ただし、第2戦からは#32 Epson HSV-010もフェンダー出しとする予定です。いっぽう、今季よりミシュランタイヤを使用することになった#18 ウイダー モデューロ HSV-010は、タイヤとマシンのマッチング作業を優先させたため、開幕戦ではサイドエグゾーストを採用するところまで手が回りませんでした。とはいえ、ミシュランタイヤとのマッチングについてはほぼ不安のないレベルまで到達しているため、第2戦富士大会からサイドエグゾーストにすることも可能な状況にあります。ただし、#18 ウイダー モデューロ HSV-010は3月下旬に富士でタイヤテストを行なっているので、そのときのデータを活用する意味からも第2戦富士大会では8-4-2-1排気のリア出しを用いる予定です。

サイドエグゾースト
サイドエグゾースト
サイドエグゾースト

エンジン音 ENGINE SOUNDエンジン音

  • Epson HSV-010 エンジン音
  • ウイダー モデューロ HSV-010 エンジン音
  • RAYBRIG HSV-010 エンジン音

エアロダイナミクス AERO DYNAMICS

エアロダイナミクスについては、2013年モデルのフロントラジエーター方式にマッチしたエアフローを実現することを目標に開発しました。従来のサイドラジエーター方式からフロントラジエーター方式に変えると、空力面ではいい部分もあればよくない部分もあります。とはいえ、いくらフロントラジエーター方式にしたからといって、2013年モデルの空力性能が2012年モデルを下回ることは許されません。そして開発の結果、我々は2012年モデルを上回るダウンフォースを発生させることに成功しました。具体的には、ラジエーターの位置がサイドからフロントに変わったことにより、エンジンルーム内の空気の流れが大きく変化しました。そこで、どこから空気を採り入れ、どの場所からどの方向に向かって空気を排出するかというレイアウトを丹念に見直すことにより、ダウンフォースの上乗せを実現したのです。つまり、改良ポイントはエンジンルームの内側が中心だったことになります。そのほか、フロントフェンダー周辺の形状も微妙に変わっていますが、これは2台を並べて見比べなければわからないほど、わずかな違いでしかありません。
いっぽう、開幕戦の段階ではリアのエアロダイナミクスは手つかずの状態でした。これは、フロントラジエーター化による変更点の多いフロント回りを固めてからリアの空力を煮詰めていくという戦略に基づくものです。現在、その方向性を検討中ですが、実戦に投入されるのは第4戦菅生大会もしくは第5戦鈴鹿大会となる見通しです。

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低重心化 LOWER CENTER OF GRAVITY

2013年モデルの開発に際して最重要課題と位置づけていたのは素早いセッティング作業が可能なクルマ作りであり、ドライバーにもたらされるインフォメーションが豊富で扱い易いハンドリングとすることでした。そして、これにもっとも大きく貢献したのが車体全体の低重心化と重量配分の適正化でした。
ラジエーターの位置を車両前端から前輪の直後に移動させたサイドラジエーター方式は、クルマを左右方向に回転させるモーメント(これをZ軸回りモーメントといいます)を小さくするのに役立ちます。つまり、より機敏に方向を転換させることが可能になるのです。ところが、レーシングカーの運動性能をもっとも大きく左右する重心高は、サイドラジエーター化によりむしろ上がってしまいました。これがHSV-010 GTを扱いにくくする、ひとつの要因となっていたのです。そこで2013年モデルではフロントラジエーターに戻すことで低重心化を達成しました。しかし、ラジエーターを車体前端に置けばZ軸回りモーメントが大きくなることは避けられません。そこで我々は、ラジエーター回りの大幅な軽量化を実現させることで、Z軸回りモーメントの増大を最小限に抑えました。
サイドエグゾーストの採用やラジエーターレイアウトを見直したことで、クルマ全体としては20kg以上の軽量化を実現しました。もちろん、レギュレーションで最低重量が定められているため、軽量化した分と同じ重量のバラストを搭載することになりますが、その搭載位置は自分たちで選べるので、軽量化できればそれだけ重量配分の適正化を図ることができます。こうして、2013年モデルのHSV-010 GTは低重心化と重量配分の適正化を両立したのです

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