SUPER GT最終戦もてぎ大会で#32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴組)が3位表彰台に上ってくれました。ドライコンディションの予選では14番手と苦戦しましたが、ウエットコンディションとなった決勝では、前戦に続いてダンロップタイヤが抜群のパフォーマンスを発揮。スターティングドライバーを務めた道上選手はもちろんのこと、レース後半を受け持った中山選手も一つもミスを犯すことなく、しかもこの日のファステストラップとなる1分51秒792をマークして、Honda勢最上位の成績を残してくれたのです。
ドライコンディションではいつも苦戦を強いられてきた#32 EPSON HSV-010ですが、前戦の2位に続いて2戦連続の表彰台に上ったことで、これまでの苦労が幾分なりとも報われたように思います。また、条件さえ合えば、彼らに優勝を狙える実力が備わっていることもこれではっきり証明されました。14番グリッドからではなく、もう少し前のポジションからスタートできていれば、前戦と同じように優勝も狙えたはずです。この点については、今後の課題として、引き続き取り組んでいかなければいけないと考えています。
その一方で、Hondaの全般的なパフォーマンスについていえば、残念な結果に終わったと受け止めています。前回のプレビューでもお知らせした通り、最終戦もてぎ大会はハンディウエイトがゼロとなりました。また、今回の予選は前述の通りドライコンディションでした。つまり、各マシンの実力が予選結果にそのまま反映されていたといっていい状況です。ここでHonda勢のトップに立ったのは#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)の4番手。さらに#18 ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム組)は5番手、#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)は10番手、#8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志組)は13番手、そして#32 EPSON HSV-010は14番手でした。GT500クラスの出走台数が15台であることを考えると、屈辱的な結果だったと言わざるをえません。
どうして、このような結果になったのでしょうか? 今年もシーズン中にいくつもの開発を行い、それらを順次、実戦に投入していきました。このうち、エンジンについては第6戦富士大会で投入したフェイズ3で今季目標としていた最高出力を達成し、ドライバーからも「馬力の差をはっきり体感できる」との評価を得ています。ところが、エアロダイナミクスやサスペンション関連の進化に関していえば、テストでその効果が確認されても、実戦の場ではそれを速さに十分結びつけられなかったとの反省が残っています。
一方、シーズン中に開発した新しいアイテムには、それによって得られる性能の改善幅を示す“ゲイン”と呼ばれるものがあります。それぞれのゲインについては事前のテストを通じて確認していますが、今季は予選や決勝でそれらを十分引き出せないケースが少なからずありました。
その最大の原因は、短時間でのセッティングが困難なことにあったと思われます。いくら高い性能を持っていても、そのよさを発揮させるまでに時間がかかるようでは、実戦でその効果を享受することはできません。予選前の公式練習は、通常2時間(うち10分間はGT300クラスの占有走行)。そして公式予選を挟み、日曜日の朝には45分間程度のフリー走行が行われます。つまり、この時間内に他車を上回るレベルまでセットアップを煮詰めることができなければ、マシンのポテンシャルがいくら高くても予選や決勝で好成績を収めることはできないのです。
その点、現状のHSV-010 GTはセッティングに長い時間を要するマシンになっているようです。これを、もっと素直で扱いやすいものにしなければ、ライバルに勝つことはできないでしょう。2013年のHSV-010 GTは、こうした部分にもスポットを当てながら、コンセプトをガラリと変えたマシンにすることを検討しています。
今年は目標としていたタイトル奪還を実現できませんでした。来年は、新たな方針でHSV-010 GTの開発に取り組み、雪辱を果たすつもりです。どうか引き続き、SUPER GTを戦うHonda勢に温かい声援をお送りいただきますよう、お願いいたします。
これでシリーズ戦は終わりましたが、まだ特別戦の富士スプリントカップが控えています。次回は、このレースに向けた展望についてお話ししましょう。