GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポート
vol.54 Rd.8 ツインリンクもてぎプレビュー “ハンディウエイトゼロ”でHSV-010 GTの本領を発揮
ストップ&ゴーのコースレイアウトに対応した改良とは?

 前回もお伝えしたように、2012年SUPER GTのシリーズタイトルはライバル陣営に奪われ、Hondaのタイトル奪還はなりませんでした。大変残念ではありますが、シリーズはまだ1戦を残しています。ここまで応援してくださった皆さんのご期待にこたえるためにも、最終戦もてぎ大会での優勝に目標を切り替え、この戦いに全力を投じるつもりでいます。

 北関東の美しい山並みに囲まれたツインリンクもてぎのロードコースは全長4.801km。ここに合計14のコーナーが配置されていますが、大きな横Gのかかる高速コーナーは130RからS字カーブにかけての3つ程度しかなく、それ以外の大半はブレーキングして直角に曲がっていくコーナーばかりです。特に、1コーナー、3コーナー、5コーナー、V字コーナー、ヘアピンカーブ、90度コーナーの計6カ所は、スピードがかなり乗った状態からのハードブレーキングとなるため、ブレーキへの負担が大きいという傾向があります。従って、もてぎ戦で勝利を収めるためには、スタートからフィニッシュまで高い制動力を維持するとともに、ブレーキング時の姿勢を安定させることが特に重要となります。

 この点を踏まえ、Hondaはサスペンション関連の改良を実施。より安定した姿勢でブレーキングができるよう工夫を凝らしました。

 9月17・18日には、もてぎでSUPER GTの合同テストが行われましたが、ここでは、我々が行った改良の効果をはっきりと確認することができました。ドライバーのコメントを聞いても、彼らがいい感触を得たことがうかがえたので、もてぎにおけるHSV-010 GTのポテンシャルは確実に向上したといえます。

 もう一つ、Honda陣営にとって追い風となりそうなのが、最終戦ではハンディウエイトが撤廃されることです。これはレギュレーションで決められていることで、どのメーカーも条件は同じですが、HSV-010 GTはハンディウエイトによるラップタイムの落ち分(これを重量感度と呼びます)が大きめで、ライバルたちとの相対的な力関係でいえば、ハンディウエイトを積んでいるときよりも、積んでいないときの方が有利となります。ハンディウエイトが半減された第7戦オートポリス大会でもその傾向は現れていましたので、完全になくなる最終戦ではさらに顕著となるでしょう。特に、ドライコンディションであればライバルたちをしのぐパフォーマンスが期待できます。シーズン最後の一戦を有終の美で飾るためにも、第3戦セパン大会から遠ざかっている栄冠を是非、勝ち取りたいと考えています。

 マシンに関していえば、#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)、#18 ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム組)、#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)の3台は全く互角の状況ですので、どのチームが優勝してもおかしくありません。おそらく、週末の滑り出しが最も好調なマシンが、Honda陣営の最高位をマークすることでしょう。

 第7戦オートポリス大会で最後まで優勝争いを演じた#32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴組)は、やはりウエットコンディションを得意としています。従って、前戦と同じような路面状況になれば、今回も表彰台に手が届く活躍をみせてくれるはずです。

 トラブルの原因をなかなか究明できず、シーズン前半の開発で出遅れてしまった感のある#8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志組)は、セッティングの面で確実な進化を遂げていることが先の合同テストで確認されましたので、最終戦ではほかのHSV-010 GTと互角の戦いを演じてくれると期待しています。

 SUPER GT第8戦もてぎ大会は10月27・28日に開催されます。この時期の栃木県は、朝夕は多少冷え込むかもしれませんが、青空に恵まれれば日中はとてもさわやかな陽気となるでしょう。またツインリンクもてぎ内には、小さなお子さまにも楽しんでいただける乗り物を用意したモビパークもございますので、どうかご家族そろって足をお運びいただき、HSV-010 GTに熱い声援を送っていただければと思います。皆さんのご来場を心よりお待ちしています。