第7戦オートポリス大会で、2012年SUPER GTのシリーズタイトルがライバル陣営の手に落ちました。チャンピオン争いをなんとかして最終戦まで引き延ばし、ここでの逆転を目指していた私たちにとっては、非常に悔しい結果となりました。また、今回は目前まで迫った優勝を惜しいところで逃したので、Hondaにとっては二重の意味で悔しいレースだったといえます。それでは、ここでオートポリスでの週末を振り返ってみることにしましょう。
台風17号の接近にともなう激しい風雨こそありませんでしたが、第7戦が開催された週末のオートポリスは土曜日も日曜日も雨が降り続け、コースはウエットコンディションとなりました。現在、GT500クラスには4つのメーカーがタイヤを供給していますが、ウエットコンディションでは各メーカーの得意不得意がはっきりと現れます。タイヤメーカー間の性能差は、もちろんドライコンディションでも存在しますが、ウエットコンディションでは、ときにはラップタイムの差が2秒もしくは3秒と、普通であれば考えられないようなレベルまで広がることがあるのです。
第7戦の決勝レースが、まさにそういう状況でした。午前中に降った雨はほぼやんだものの、そのあとも細かい霧雨が降り続けました。このため、コースがヘビーウエットになることはありませんでしたが、スタートからフィニッシュまで路面はずっと湿ったままでした。
こういう状況で圧倒的な強さを示すのが、Honda陣営の中で唯一、ダンロップタイヤを装着する#32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴組)です。前日に行われた予選では、予選2回目を担当した中山選手がクラッシュを喫して11番手に終わった上、この影響でエンジンが不調に陥ったためにエンジン交換を実施し、そのペナルティーとして決勝レース中に15秒間のピットストップが科せられることになりました。これを6周目に消化した関係で#32 EPSON HSV-010は大きく後退しましたが、その6周後にはGT300クラスの車両がアクシデントに見舞われた影響でセーフティカーが導入され、ここで#32 EPSON HSV-010は遅れを取り戻すことに成功します。
これ以降、ダンロップのレインタイヤは軽く濡れた路面と抜群の相性を示し、レース前半を受け持った道上選手は20周目に10番手まで浮上。そのあとの10周では、さらに3番手までジャンプアップしたのです。道上選手は65周のレースの42周目までピットストップを引き延ばしてトップに立つと、タイヤを交換しない作戦でピットでの作業時間を短縮し、トップのままコースに復帰しました。
後半を受け持った中山選手もすばらしいペースで周回を重ねていきましたが、フィニッシュ間際になるとフロントタイヤの摩耗が進行してブレーキング性能が低下。このすきを突かれ、Hondaが使用していないメーカーのタイヤを履くライバルチームに首位の座を奪われ、そのまま最後まで逃げきられてしまいました。結局、#32 EPSON HSV-010は首位と約7.6秒差の2位に終わりました。
今にして思えば、ピットストップの際にタイヤを交換していればフィニッシュまで安定したペースで走りきれ、ライバルに敗れることもなかったかもしれません。ただし、ピットストップを行うときは、タイヤ無交換でいくのが最良の作戦だと思われたのですから、いまさらなにを言っても始まりません。とはいえ、これでレースでの栄冠とシリーズタイトルの両方を失うことになったことは、やはり残念でした。
一方、今季は苦戦続きで、言葉では表せないほどのフラストレーションを味わってきた道上選手と中山選手の2人は、今回のレースでおおいに溜飲を下げたことでしょう。また、マシンを走らせるエプソン・ナカジマ・レーシングの実力が改めて証明されたことにも深い満足感を覚えています。最終戦に向けて2人のドライバーとチームにはさらに期待したいところです。
それ以外の4台は、コンディションとタイヤのマッチングに苦しむレースとなりました。予選で5番グリッドを獲得した#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)は、レース後半に塚越選手がオーバーランした影響もあって14位。予選6番手だった#18 ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム組)も決勝レースでペースを上げることができず、9位に終わりました。7番グリッドからスタートした#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)は、レース前半に導入されたセーフティカーが退き、リスタートが切られるとき、伊沢選手の奮闘により一気にポジションを2つ上げて5番手に浮上。そのあとは滑りやすいコンディションに苦しんで順位を落としましたが、最終的に8位フィニッシュを果たしました。#8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志組)は今回も不振から抜けきれず、予選は12番手、決勝は11位という結果でした。
さて、2012年シーズンのシリーズ戦も残すところ1戦のみ。その舞台は、Hondaのホームコースであるツインリンクもてぎです。ここでは、これまでのうっぷんを晴らすような快走を披露し、最終戦を勝利で飾りたいと考えていますので、次回も5台のHSV-010 GTに熱い声援をお送りくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。