SUPER GT第3戦セパン大会後の長いインターバルがようやく終わりに近づき、第4戦菅生大会の日程が迫ってきました。シリーズ中盤戦の始まりを告げる大会で、今後のタイトル争いを考える上で極めて重要な一戦となります。果たして、どんな戦いになるのでしょうか? 私なりの視点からお話してみたいと思います。
宮城県柴田郡村田町の山並みに造られたスポーツランドSUGOは全長3.704km。国内の国際公認サーキットとしては起伏が激しく、また高速でクリアする最終コーナーを除くと中低速コーナーが多いという特徴があります。当然、コーナリング性能に優れたHSV-010 GTとの相性はよく、デビューシーズンの2010年には#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)と#18 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル組)がわずか0.025秒差で1-2フィニッシュを果たしました。
ただし、SUGOにマッチしたセッティングを探し出す作業は、決して容易ではありません。ラップタイムに大きな影響を及ぼすのは、馬の背コーナーからSPインコーナー、SPアウトコーナーにかけてのテクニカルなインフィールドセクションです。そして、ここを速く駆け抜けるには大きめのダウンフォースが必要となりますが、そうなると高速の最終コーナーからの脱出速度が伸び悩むことになり、最終コーナーに続く上り勾配のストレートでスピードを乗せるのが難しくなります。結果的に1周のラップタイムも伸び悩むだけでなく、決勝中の駆け引きでオーバーテイクされる恐れも出てきます。一方、最終コーナーの脱出速度を優先してダウンフォースを軽めとすればインフィールドセクションのタイムが縮まらなくなります。あちらを立てればこちらが立たずで、ダウンフォースをどのあたりに設定するかのバランス取りが、ここSUGOでは最も重要なテーマとなります。
エンジン面では、夏真っ盛りということで湿度は高めとなり、同じ容積でも乾燥した時期に比べると空気に含まれる酸素の量が減るため、出力はどうしても低めになります。そうでなくとも、SUGOは標高が高いので空気が薄く、酸素は少ない。つまり、湿気と標高のダブルパンチでエンジン出力は押さえつけられることになります。このような場合、エンジン・マネージメントの設定やソフトウェアをコンディションにマッチさせることが重要となります。
同じくコンディション面では、気温への対応という課題も見逃すことができません。第4戦菅生大会の決勝レースが行われる7月29日といえば夏真っ盛りのはずですが、山地に建つSUGOではちょっとした空模様の変化で気温がガクンと下がることも珍しくありません。昨年のレースがまさにそれで、ダンロップ・タイヤを履く#32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴組)が3位表彰台に立てたのも、スタート時で21℃と低い気温への対応がうまくいったことに大きな理由がありました。
では、Honda勢ではどのマシンが優勢となるでしょうか? 実力はあるものの、今年は歯車がかみ合わずに苦戦している#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)は、2010年にも勝っているほか、ハンディウエイトが40kgと軽いだけに有望格です。また、スポンサーのケーヒンにとってもSUGOは地元ですから、自然と期待は高まります。今季、彼らの最高位は開幕戦の3位なので、ここで白星を挙げてタイトル獲得に望みをつなげたいところです。
もう1台、優勝候補を挙げるとすれば、やはり2010年に#17 KEIHIN HSV-010と最後まで競り合った#18 ウイダー HSV-010(小暮卓史 カルロ・ヴァン・ダム組)ということになります。彼らもSUGOとは相性がいい上、ヴァン・ダム選手はマレーシアでの優勝でドライバーとして大きく成長しています。マレーシアに続く連覇も夢ではないと思います。
現在、チャンピオン候補の#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)は、過去の流れでいうとSUGOとの相性はあまりよくありません。また、今回は70kgのハンディウエイトを積まなければならないことも、当然不利に作用します。けれども、チャンピオンシップを考えればここが踏ん張りどころです。厳しいとは思いますが、最低でも表彰台でSUGOのレースを終えたいところです。
今季は苦戦続きの#8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志組)ですが、序盤でリタイアした第2戦富士大会を含め、マシンの仕上がりはとてもいい。ただし、その第2戦も、先日の第3戦セパン大会も、どうも運に恵まれません。ですので、今回はそうした悪い流れを断ち切るようなレース運びを期待したいところです。
#32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴組)は昨年の3位表彰台という結果が示しているとおり、SUGOでも高いポテンシャルを有しています。今回も雨が降るなどして彼らが得意とするコンディションとなれば、間違いなく上位に食い込んでくることでしょう。
平年であれば東北地方の梅雨明けは7月28日ごろとなります。小中学校の多くは夏休みに入っている時期なので、どうか家族連れでSUGOを訪れ、5台のHSV-010 GTに声援を送ってください。皆さんとお会いできることを楽しみにしています。