SUPER GT第3戦はマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットが舞台となります。熱帯に属するマレーシアは1年を通じて最高気温が30℃を超えますが、日差しが強烈なこともあり、路面温度は50℃近くにもなります。まさに酷暑での戦いといえるでしょう。
セパンには高速コーナーがある一方でストップ&ゴーの側面も持ち合わせており、基本的に大きなダウンフォースが求められるコースです。HSV-010 GTはここセパンを得意としており、昨年は#1 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル組)が優勝。一昨年も#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)が優勝争いを演じたほか、最終的には#18 ウイダー HSV-010 (小暮卓史/ロイック・デュバル組)が3位表彰台に上りました。当然、今年も優勝を狙ってレースに挑みます。
今シーズンはHondaを含め、すべてのメーカーが開幕前にセパンでのテストを実施しました。したがって事前のデータ取りに関してはイーブン。あとは、土曜日と日曜日の天候や気温をどう予想し、どのタイヤを選び、どう使うかが明暗を分けることでしょう。
タイヤ関連の話題でいえば、セパンはタイヤかすの出やすいサーキットとして知られています。このタイヤかすがレース中にどんどん増えていき、本来のレーシングラインを少しでも外れると大量のタイヤかすがタイヤ表面に付着、グリップ力を大きく低下させる要因となります。この点は、どんなラインを走るかによっても影響の度合いが異なってくるので、ドライバーには慎重な走行を心がけるように呼びかけるつもりです。また、路面温度も高いためドライバーのタイヤマネージメントは非常に重要となってきます。
また、夕方の時間帯に必ずといっていいほどスコールが降るのもセパンの特徴といえます。このときに、戦略的にどう対応するかも勝負の分かれ目となりかねません。ただし、Hondaは状況に応じて柔軟にレース戦略を運用できる体制を整えているので、この点でも心配はないと考えています。
一方、セパンでは今季、投入したエアコンが威力を発揮してくれると期待しています。HSV-010 GTに装着されたエアコンは、シートの広い範囲から冷風が吹き出すので、ドライバーの快適性は大きく改善されます。一方、このシステムには高効率なHondaの軽自動車用エアコン・コンプレッサーを用いているので、もともとエンジンのパワーロスは最小限に抑えられていますが、エアコンの動作がラップタイムにマイナスの影響を及ばさないよう、さらに工夫を加えました。というのは、ドライバーがスロットルを全開にしているときはコンプレッサーが休止し、それ以外のときに作動するようにしたのです。これでは十分な冷却効果が持続できないのではないかと心配されるかもしれませんが、コンプレッサーが停止しても一定時間は安定して冷気を送り出せる様に、システムを付加して対応しており問題ありません。
これでドライバーの集中力が高まり、より白熱したバトルを繰り広げてくれることを楽しみにしています。
マシン別の話題でいえば、引き続き#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)と#18 ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム組)の仕上がりがいいので、2台には優勝を目標にレースを戦って欲しいと思います。現状では#17 KEIHIN HSV-010が32kg、#18 ウイダー HSV-010が12kgとハンディウエイトが軽めなので、この点も追い風となるでしょう。
反対に60kgのハンディウエイトを積む#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)は厳しい戦いを強いられるかもしれません。ただし、チャンピオンシップのことを考えると、確実に、そして1ポイントでも多く獲得することが期待されます。幸い、これまでのところ#100 RAYBRIG HSV-010は流れがいいので、セパンでも上位に食い込んでくれると期待しています。
#8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志組)と#32 EPSON HSV-010(道上 龍/中山友貴組)もクルマの仕上がりは良好です。ただし、勝負の流れというか、どれだけ運を呼び込んでこれるかという面では、今季あまり恵まれているとはいえません。こうしたよくない流れを、マレーシアという通常のシリーズ戦とは異なった環境のなかで断ち切ってくれることを願っています。
灼熱の戦い、SUPER GT第3戦セパン大会は6月9〜10日に開催されます。どうか5台のHSV-010 GTに、いつもにも増して“熱い”声援をお送りください。よろしくお願いします。