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MUGEN CR-Z GT マシン解説 PART1 未来のレースを先取るハイブリッドシステムを解剖する

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SUPER GTシリーズの2012年シーズン第4戦からGT300クラスに参戦を開始したMUGEN CR-Z GTは、最先端のハイブリッドシステムを搭載しています。エンジンとモーターを組み合わせ、それぞれの長所を生かした、レース用としては新しいパワーユニットの登場です。 市販車では一般的になってきたハイブリッドシステムですが、最近ではル・マン24時間レースの優勝車に搭載されるなど、レースの世界でも各自動車メーカーがその技術を競い合うように続々と投入されています。

Hondaは、以前からレース用ハイブリッドの研究やテストを続けていましたが、今回MUGEN CR-Z GTに技術協力を行い、このレーシングハイブリッドシステムを投入しました。Hondaにとって、ハイブリッドシステムを本格的なレースに採用した第1号です。

そこで、このMUGEN CR-Z GTに搭載された新開発のレーシングハイブリッドシステムがどのような考え方や仕組みでできているか、解説していきます。

MUGEN CR-Z GTに採用されたレーシングハイブリッドとは?

  • レーシングハイブリッドに使用されるモーターレーシングハイブリッドに使用されるモーター
  • 電流の変換をつかさどるインバーター電流の変換をつかさどるインバーター
  • マシンに搭載されたインバーターマシンに搭載されたインバーター

一般的な市販車に採用されるハイブリッドシステムは、エンジンとモーターを組み合わせ、低速域や加速時にモーター出力をエンジン出力のアシストとして使用しています。また、減速時の回生エネルギーやエンジンの回転を利用した発電機能も使ってモーターを動かすので、省エネルギー時代の代名詞的な存在となってきました。レーシングハイブリッドも全く同じ発想なのです。

では、レースにおけるハイブリッドシステムのメリットはなんでしょうか?

市販車の場合と同じく、モーターをエンジンの補助的な役割として活用するという考え方は変わりませんが、速さを競うレースの場合、より高出力なモーターを使います。また、モーターの使い方はいろいろな可能性を持っており、ストレートやコーナーの立ち上がりでのパワーアシストに限らず、効率的なモーターアシストを行うことで、レース中のガソリン消費を抑えることもできます。これらは細かく緻密なモーター制御技術が必要となりますが、より速く、より高効率を求めて競争するレースにおいても、ハイブリッドシステムは有効なアイテムになると考えられます。

MUGEN CR-Z GTに搭載したレーシングハイブリッドシステムは、モーター、バッテリー、インバーター、そしてそれぞれを冷却するクーリングシステムで構成されています。

モーターは、市販車の場合と異なり、ギアボックスの側面に組み付けられ、ギアを介してギアボックス内のインプットシャフトにかみ合わせて動力を伝える仕組みです。このモーターはHondaとザイテック社が共同開発したもので、小型ながらモーター単体の最大出力は50kW(62ps)を発生します。搭載するバッテリーは、市販車のハイブリッド用バッテリーに類似したもので、バッテリーの充電や放電には直流の電流が必要です。モーターは、細かな制御が可能な三相交流で動作させるため、バッテリーの直流電流を交流電流に変換するインバーターが必要になります。MUGEN CR-Z GTでは、このインバーターはバッテリーとともに助手席にあたる位置に設置しています。

モーター、インバーター、バッテリーがハイブリッドシステムの基本構成パーツですが、レースでの過酷な使用で高温になると、それぞれの効率が低下してしまうので、冷却するシステムが不可欠です。そこで、この3つにそれぞれ別系統のラジエーターを置き、水冷による熱対策を施しています。

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