vol.35 | Rd.SP 富士スプリントカップ プレビュー |
プレッシャーを忘れ“年に一度のお祭り”を盛り上げる |
11月11〜13日の3日間、今年も富士スピードウェイで「JAFグランプリ 富士スプリントカップ」が開催されます。SUPER GTとフォーミュラ・ニッポンを1日で楽しめるこのイベントは昨年始まったもので、今年が2回目。我々Honda GTプロジェクトは、今年、ともに戦った5台のHSV−010 GT、10名のドライバーでこの一戦に挑むことになります。
SUPER GTとフォーミュラ・ニッポンが同時に開催されること以外にも、このイベントにはたくさんの魅力が詰まっています。まず、シリーズ戦が終わったあとで開催されるため、各チームやドライバーはある意味プレッシャーから解放され、思いきったバトルが期待できること。また、「スプリントカップ」の名の通りレース距離が短いことも、いつも以上に濃密でテンポのいい戦いを生み出すうえでプラスの影響を与えるはずです。実際、昨年の富士スプリントカップでも、シリーズ戦では見られないエキサイティングなシーンが何度も繰り広げられました。ファンのみなさんにはぜひ、期待していただきたいと思います。
途中でドライバー交代をすることなく、1レースを1人のドライバーが走りきる点もSUPER GTのシリーズ戦と大きく異なる点です。このため、ドライバー一人ひとりの個性がはっきりと見えてくるでしょう。また、HondaのGTドライバーの中では、小暮卓史、伊沢拓也、塚越広大、山本尚貴、小林崇志の5名がフォーミュラ・ニッポンのレースにも出場します。通常のように何日ものインターバルを置いて乗るのではなく、同じ日に全く異なるレーシングカーに乗るのは大変難しいものです。同じドライバーが、SUPER GTとフォーミュラ・ニッポンとではどのように走りを変えてくるのか。またマシンを乗り換えると影響が大きいドライバーは誰で、小柄なドライバーは誰なのかと、そんな着眼点でイベントをご覧になっても楽しいと思います。
SUPER GTのスタートがいつものローリング方式ではなくスタンディング方式となる点も見どころのひとつ。クラッチミートのタイミングや、走り出す瞬間にタイヤグリップをどう引き出すかでスタートは全く変わってきます。さらには、富士スプリントカップに出場する全80名のドライバーが東西二手に分かれて戦う「東西対抗戦」、SUPER GTの各クラスならびにフォーミュラ・ニッポンの優勝者に与えられるJAFグランプリタイトルの行方など、見どころは尽きません。
では、SUPER GTのGT500クラスに挑むHonda勢にとっては、どんな戦いになるのでしょうか? いつも応援していただいているファンのみなさんには申し訳ありませんが、少々苦戦することが予想されます。その理由を、これからご説明します。
毎年、シーズン後半には空力などのアップデートを行っていますが、今年はそれらを見送らねばならない状況となってしまいました。大きな効果を期待していたのが第6戦富士大会での投入を予定していたものですが、これも残念ながらキャンセル。シーズン後の富士スプリントカップ、つまり今回のレースでもこのアップデートキットの効果が期待できたのですが、残念ながら今年の初期型のままで戦うしかありません。
9月に開催された第6戦富士大会ではライバル勢の進化が明らかになり、HSV-010 GTはストレートスピードの点で再び後れをとってしまいました。恐らく、富士スプリントカップでも同じような展開になると思われます。11月の富士は寒いこともあり、ダウンフォースを減らしてタイヤグリップに頼るといった方法では、タイヤを温められないままで敗退するのはほぼ確実です。したがって、今回は正攻法で戦うしかない訳ですが、それなりにダウンフォースをつけると、どうしてもストレートスピードの面でやや劣勢に立たされます。残念ながら、この点はいかんともしがたいところですが、得意のコーナリング性能を生かして、特に第3セクターでの走りに特化したいと考えています。
今言えることは、限られた条件の中でも精一杯戦うのが我々に課せられた務めだということです。道具の面では多少性能不足があるかもしれませんが、レースでは自分たちにできる最大限の努力をして、最善の結果が得られるように進めたいと考えています。今回の目標は、見ていて面白いレースを行うことに決めました。どうか富士スピードウェイで今年最後の戦いに挑む5台のHSV-010 GTに熱い声援をお送りください。よろしくお願いいたします。