vol.33 | Rd.8 ツインリンクもてぎ プレビュー |
総力を挙げて挑むシリーズ最終戦 |
第7戦オートポリス大会が終わったと思ったら、1週間のインターバルを挟んですぐに第8戦ツインリンクもてぎ大会を迎えます。4月から月に1度のペースで各地を転戦してきたSUPER GTですが、10月だけは月2回の開催。さらに、11月11〜13日には特別戦としてJAFグランプリ富士スプリントカップが控えています。我々SUPER GT関係者にとっては、まさに息つく暇のないほど忙しい秋といえるでしょう。しかも我々にとっては、前戦オートポリスで起こった謎のタイヤグリップダウンに対して、何らかの対策が必要であり時間に追われる毎日です。
もてぎといえば、ストップ&ゴーが多くてブレーキに大きな負担がかかるサーキットとして知られています。その一方で、最高速付近から一気に減速して進入する90度コーナー、連続する高速コーナーをリズミカルに走り抜けることが要求される130RからS字カーブにかけては、GTマシンのダイナミックな挙動をお楽しみいただけるはず。また、鈴鹿サーキットと同じように小さなお子さまにも喜んでいただける施設が充実しているので、熱心なモータースポーツファンだけでなく、ご家族連れにもぜひサーキットに足を運んでいただきたいと思います。
話しがやや横道にそれましたが、いずれにしてもツインリンクもてぎが、様々なコーナーを組み合わせたテクニカルなコースであることは間違いありません。したがって、優れたシャシー性能を誇るHSV-010 GTが得意とするサーキットといえます。実際、昨年も最終戦として開催されたツインリンクもてぎ大会では、2台のHSV-010 GTが表彰台に上りました。今年も、ハードブレーキングからの鋭いターンイン、そしてコーナーの脱出では圧倒的なトラクション性能を生かしての素早い立ち上がりなど、HSV-010 GTのパフォーマンスを存分に発揮し、優勝を目指したいと思います。
では、Honda勢として最終戦ツインリンクもてぎ大会をどのように戦っていけばいいでしょうか? 正直にいえば、秘策はありません。ただただ、地道にセオリー通りに走らせてHSV-010 GTの速さを引き出すだけです。また、第7戦オートポリス大会では、チャンピオン争いの重圧からプレッシャーを感じていたドライバーがいたのも事実です。しかし、今回は単純に勝利を目指す、気持ちいいプレッシャーだけです。のびのびと、そして生き生きと、シーズン最後のレースを戦いたいと思います。ドライバーにも、楽しく走るように話すつもりです。
全車がハンディウエイトから解放されることも最終戦の特徴といえます。ライバルと互角の条件となったHSV-010 GTがどんな戦いを演じるのか。この点もぜひ、お楽しみにしていただければと思います。
冒頭で申し上げたとおり、今年も富士スプリントカップが開催されますが、2人のドライバーがコンビを組んで挑み、レース中のピットストップが義務づけられているSUPER GTのシリーズ戦と、1レースをドライバー1人で走りきる富士スプリントカップとでは、その戦い方が全く異なります。特に、ピットストップを行うシリーズ戦では、ドライバーの個人戦というよりはチーム全体による団体戦という意味合いが強くなります。つまりドライバーやクルマだけでなく、全員でのチームワークが結果となって表れます。
今季、Hondaチームはピット作業のスピードアップを課題の1つとして取り組んできました。タイヤ交換の要員を1台あたり2名までに制限されているSUPER GTでは、前輪と後輪を順に交換していくことになります。昨年までは、たとえば前輪を交換するのに我々は7秒台の時間を要していました。これに対し、ピットストップの速さで定評のあるライバルチームは6秒台で作業を終えていたのです。この1秒の差により順位が入れ替わることがないとも限りません。そこで我々は、作業の内容を細かく見つめ直して改善することと、地道な練習を繰り返すことで今季は5秒台でタイヤ交換を完了できるようになりました。最終戦ツインリンクもてぎ大会では、こういう部分にも着目していただきたいと思います。
5台のHSV-010 GTの中では、昨年もこの大会で表彰台に上った#1 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル組)と#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)の2台がまずは優勝候補として挙げられるでしょう。一方、歯車がかみ合ったときに見せる#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)の爆発的な速さも忘れるわけにはいきません。伊沢選手と山本選手は、第1戦岡山大会以来、表彰台から遠ざかっているので、そろそろシャンパンファイトに興じる2人の姿を見たいですね。
#8 ARTA HSV-010に乗る武藤英紀選手と小林崇志選手は、この1年間で大きく成長してくれました。欲を言えばキリがありませんが、最終戦ではその集大成となる力強いレースを見せて欲しいと思います。ダンロップ・タイヤも今年はだいぶん進化しました。タイヤの特性とコースコンディションがうまくマッチしなかったり、好調なときに限って不運に巻き込まれたりしてきたため、3位表彰台に上った第4戦菅生大会を除くと#32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴組)は目立った戦績を残せませんでした。しかし、ポテンシャルでいえば他の4台と比べても遜色はありません。最終戦ではこれまでの悔しさを跳ね返すような活躍を期待したいところです。
3月の震災で少なからず影響を受けたサーキットも、いまや完全に復活しています。新しい路面や、相変わらずブレーキに厳しい特性などに対しても万全のかまえで臨みたいと思います。Hondaの総力を結集して挑む最終戦ツインリンクもてぎ大会にぜひ、お越しいただきたいと思います。そして5台のHSV-010 GTに熱い声援をお送りください。どうぞよろしくお願いします。