GTプロジェクトリーダー 瀧敬之介 現場レポート
vol.29 Rd.6 富士 プレビュー

HSV-010 GTの真価、富士での証明を目指す
タイトル争い巻き返しの重要なポイントに……

 SUPER GT第6戦の舞台は富士スピードウェイ。霊峰富士に抱かれるようにして建つ、およそ1.5kmの長いストレートを有する超高速サーキットは世界中のファンに広く親しまれています。

 2010年にデビューした当初、HSV-010 GTはストレートスピードの伸びに課題を抱えており、この年の5月に開催された第3戦富士大会では#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)の5位が最上位という結果に終わりました。実は、その後HSV-010 GTはエアロダイナミクスとセッティングの面で大きな進化を果たしており、もはや富士スピードウェイを苦手なコースとしてはいません。ところが、昨年の第7戦の同大会は台風の影響を鑑みてキャンセル、雪辱を期して臨んだ今年の第2戦では雨のためフロントウインドウが曇るというトラブルに見舞われ、振り返ってみればHSV-010 GTはまだ富士スピードウェイで一度も速さを証明したことがありません。自分たちとしてはとても不本意な状況であり、早くHSV-010 GTの真価を富士でも発揮させたいと期待しているところです。
 繰り返しになりますが、HSV-010 GTにとって富士スピードウェイは決して苦手なサーキットではありません。特に、昨年の中盤戦以降は大きくパフォーマンスが向上しているので、むしろ自信があるくらいです。けれども、いろいろな不運があってその実力をまだ証明できていない。だから、第6戦富士大会をリベンジの場にしたいというのが我々の強い思いであり、意気込みでもあるのです。

 では、第6戦富士大会はチャンピオンシップの面でどのような意味を持っているのでしょうか? 第5戦鈴鹿大会を終え、#1 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル組)はチャンピオン争いのドライバー部門でポイントリーダーと12点差の2位につけています。いうまでもなく、第6戦富士大会では現在ポイントテーブル・トップのライバルよりも確実に前のポジションでフィニッシュし、ポイント差を縮めることが第1の課題となります。

 ところで、第6戦富士まではこれまでと同じポイント1点あたり2kgのハンディウエイトが課せられますが、第7戦オートポリス大会ではこれが1点=1kgとなり、最終戦もてぎではハンディウエイトが撤廃されます。ここまでのレースでライバルに水を開けられたのは、我々の側に取りこぼしが多かったからで、実力と実力をぶつけあう真っ向勝負になれば負ける気はしません。ハンディウエイトが軽減された状態になればライバルと互角以上の戦いを演じる自信があります。したがって終盤戦に向けては、ミスを犯さないように注意しながら、思いきった戦いを繰り広げていきたいと考えています。

 一方で、第6戦富士にはライバルより12kg軽いハンディウエイトで挑めます。これはもう絶好のチャンスというしかありません。このチャンスを生かし、第6戦富士ではライバルとのポイント差をぐっと縮め、残る2戦で追いつき、追い越しを図る。そしてダブルタイトルの2連覇を達成するというのが我々の目標です。しかし、ライバルは我々とは異なるタイヤを装着しており、前回の富士レースでは異次元のパフォーマンスを見せていました。その辺りをいかに対抗するかもカギとなりそうです。

 最後に1つ、興味深い情報をお知らせしましょう。5台のHSV-010 GTのうち、4台はブリヂストン・タイヤを装着し、#32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴組)のみダンロップ・タイヤを履いています。これまでのデータを検証したところ、この#32号車のストレートスピードが他の4台より速い傾向にあります。セッティングが同じでもこの傾向は見られ、明らかにタイヤ性能の違いと思われます。実際、第5戦鈴鹿でも、#32 EPSON HSV-010はスプーン・コーナーの立ち上がりでライバルのイン側に鼻先を突っ込み、そこからスピードの伸びのよさを生かしてバックストレートでライバルの前に出て、ポジションを上げるというバトルを何回か演じました。こうした特性が富士スピードウェイで大きな武器となることは間違いありません。というわけで、私は#32 EPSON HSV-010が富士で上位入賞を果たしてくれることを期待しています。歯車がすべてかみ合えば、表彰台のいちばん高いところにも手が届くでしょう。

 首都圏からアクセスのいい富士スピードウェイでもありますし、みなさんぜひお越しください。そして突き抜けるような快音を響かせる5台のHSV-010 GTに力強い声援をお送りください。どうぞよろしくお願いいたします。