GTプロジェクトリーダー 瀧敬之介 現場レポート
vol.27 Rd.5 鈴鹿 プレビュー

真夏の耐久レースに挑むHSV-010 GT
栄冠を手に入れるのに必要なものとは……。

 第4戦菅生大会のレビューでも記したとおり、第5戦はHondaのホームコースといえる鈴鹿サーキットで開催されます。かつて1000kmだったレース距離も2009年からは700kmとされ、今年は東日本大震災の影響でついに500kmレースとなりました。それでも、通常250〜300kmで競われるSUPER GTのシリーズ戦に比べれば長丁場の戦いといえます。いつも以上に気を引き締めてこの一戦に挑むつもりです。

 去る7月20〜21日には、第5戦鈴鹿大会に備えたタイヤテストが行われました。ここで#1 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル組)はトップタイムをマーク。#32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴組)も2番手タイムを記録しました。第4戦菅生大会では、ブリヂストンが開発した新仕様タイヤの使いこなしに戸惑った一面もありましたが、鈴鹿サーキットにおける速さはこのテストで確認され、様々なデータを収集することもできました。これにより、自信を持ってレースウィークを迎えることができそうです。

 繰り返しになりますが、鈴鹿サーキットはHSV-010 GTがもっとも得意とするコースの1つです。岡山国際サーキットやスポーツランドSUGOもテクニカルなレイアウトで、HSV-010 GTの優位性を発揮しやすいコースですが、鈴鹿サーキットではライバルに対するアドバンテージがさらに拡大します。なぜでしょうか?
 鈴鹿サーキットは、低速コーナーから高速コーナーまでがバランスよく配置されたレイアウトが特徴です。一方の岡山国際サーキットやスポーツランドSUGOは、大きく回り込む中高速コーナーもなくはありませんが、どちらかといえばそれらは例外的で、ほとんどは最大Gのかかる時間の短い、いわばリズムで通過するコーナーばかりです。ところが鈴鹿サーキットは、1〜2コーナーを始め、ダンロップ・コーナー、ヘアピンコーナー後の200R、スプーンコーナー、そして130Rと、大きな横Gをしっかり受けて耐え続けるコーナーが5つもあります。優れたフレーム特性を有するHSV-010 GTは、こうしたコーナーで特に大きなアドバンテージを発揮してくれると考えています。
 また、鈴鹿サーキットで好タイムを記録するうえで、もっとも大切なのがS字コーナー部分です。ここは岡山国際サーキットやスポーツランドSUGOのS字とは異なり、切り返すたびに荷重がしっかりと左右輪に乗り変わってのしかかるので、これをしっかり受け止める必要があります。こういうコーナーもHSV-010 GTは得意としています。さらに、S字コーナーに続く逆バンクからダンロップ・コーナーにかけても、左右輪にじっくり荷重をかけながら曲がっていくという点ではS字コーナーと変わりません。つまり、鈴鹿のS字コーナーからダンロップ・コーナーまでは、実はS字が2つ連続するコーナーともいえます。HSV-010 GTのライバルに対する優位性は、ここでも発揮されるのです。

 それにしても、今シーズンは第4戦までを終えて白星はたったの1つと、予想外の苦戦を強いられています。マシンの速さは折り紙付きだと考えていますが、どうもその速さが決勝レースで発揮しきれず、優勝を逃し続けてきました。
 その最大の原因は、予選で好成績を挙げられていないことにあります。突然のコンディション変化などでチームやドライバーが戸惑う。この影響で本来の実力を発揮しきれず、後方グリッドに埋もれ込む。するとレース序盤は遅いマシンのペースに付き合わされ、致命的な遅れをとってしまう、そんなレースが多かったように思います。

 これを防ぐには、どのようにすればいいのでしょうか? しっかりしたマシンを準備することはもちろん大切ですが、それとともに、難しいコンディションや展開となっても慌てずに適切な対応をとることが重要だと考えています。この点については、今後さらに改善に取り組んでいくつもりです。

 この第5戦鈴鹿大会を含め、今シーズンも残るは4戦。ここまでの悪い流れを断ち切るため本大会では優勝を狙いたいと思います。いえ、勝ちにいくしかないと考えています。第5戦鈴鹿大会は8月20〜21日の開催。夏休みの思い出を作るためにも、どうぞご家族連れで鈴鹿サーキットにお越しください。みなさんのご来場とご声援をお待ちしております。