GTプロジェクトリーダー 瀧敬之介 現場レポート
vol.25 Rd.4 菅生 プレビュー

最終コーナーの速さを生かしたHSV-010 GTの戦いに注目
ウェイトハンディの不利を優れたコーナリング性能で跳ね返す

 7月30〜31日に開催される第4戦菅生大会の日程が近づいてきました。今季のSUPER GTは全8戦。第4戦は前半戦の締めくくりであると同時に、チャンピオンシップ争いが激化するシリーズ中盤の始まりでもあります。したがって、いつも以上に気を引き締めてこの一戦に臨むつもりでいます。

 この大切な戦いを前に、第3戦セパン大会で白星を挙げられたことは大きな意味をもっています。2011年モデルのHonda HSV-010 GTは、決してライバル達に負けることのないパフォーマンスを有していると信じていますが、いくら自分たちが信じていても、それが結果として表れなければドライバーやチームのモチベーションに影響しかねません。しかし、第3戦で#1 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル組)がポール・トゥ・ウインで優勝、#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大組)も3位に入ってダブル表彰台を獲得しました。おかげでHonda陣営全体の士気はますます高まっているので、この勢いを今後の戦いに是が非でも生かしていきたいと考えています。
 暑さが本格化する前に成果を出せたことも私たちにとっては大切でした。以前、お話ししたとおり、サイドラジエター化したHSV-010 GTの実戦における冷却性能はまだ確認されていませんでしたし、昨年のセパン大会ではクールスーツに問題が起きて勝利を逃していたからです。いずれも対策は施しましたが、今回のセパン大会でまったく問題が起きなかったことは、我々にとって大きな安心材料となりました。自信をもって今後の戦いに挑むことができます。

 第4戦の舞台となるスポーツランドSUGOは、自然の地形を生かしているために高低差が大きく、また低速コーナーから高速コーナーまでがバランスよく配置されたテクニカルコースとして知られています。このためラップタイムに占めるコーナー区間の比率が高く、HSV-010 GTにとっては有利なサーキットといえます。Hondaの目標は優勝以外にはないと考えています。
 ひとつだけ心配な点を挙げるとすれば、ポイントランキングの上位に浮上した結果、#17 KEIHIN HSV-010は50kg、#1 ウイダー HSV-010は48kgのウェイトハンディを背負って戦わなければならなくなったことでしょう。ただし、ライバルである他車も同じ様なウェイトを背負っている状況ですから、その差は少ないと考えて良いと思います。そのうえ、HSV-010 GTは車重が多少重くなっても、これによってラップタイムが悪化する幅が少ないという特性を有しています。また、勝負どころとなるホームストレートから1コーナー手前までの上り区間は、その直前に高速の最終コーナーが控えており、ここをいかに速くクリアするかによってストレートでの伸びが変わってきます。言い換えると、たとえ重いウェイトハンディにより上り区間の加速が伸び悩んだとしても、ライバルを凌ぐスピードで最終コーナーを通過できれば、高い車速を保ったままストレートを駆け抜けられるのです。このアドバンテージをうまく生かせれば、重いウェイトハンディの不利を跳ね返すこともできるでしょう。つまり、優勝の可能性は十分あるということです。

 マシン別にいえば、今季は安定して#17 KEIHIN HSV-010の仕上がりがいいほか、もともと優れた実力を有する#1 ウイダー HSV-010も第3戦セパン大会の優勝で勢いづいています。この2台には引き続き上位入賞を期待しています。一方、#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴組)は、#1 ウイダー HSV-010と#17 KEIHIN HSV-010に並ぶパフォーマンスを有しており、ウェイトハンディも38kgと比較的少ないことからも、今回も優勝候補の1台であると考えています。前回のレースで悔しい思いをしたことからも、チームの今回への思い入れは強いと思います。
 #8 ARTA HSV-010(武藤英紀/小林崇志組)はふたりのドライバーの成長が著しいので、後半戦ではライバルを押しのけて上位入賞を果たし、3台のHSV-010 GTが繰り広げるタイトル争いを側面から援護してほしいと期待しています。#32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴組)については、引き続きタイヤとマシンの最適化を図ることで、本来の速さを引き出すつもりです。徐々にではありますが、タイヤとの組み合わせで良い方向に来ています。

 みなさんご存知のとおり、今年のSUPER GTは全戦が東日本大震災復興支援大会として開催されますが、宮城県のスポーツランドSUGOで開催される本大会は、とりわけその意味合いが強いと思います。Honda陣営でいえば、#17 KEIHIN HSV-010のタイトルスポンサーである株式会社ケーヒンは、宮城県や栃木県に事業所があり、震災の影響を受けております。また我々の栃木研究所も被害を受けました。第4戦菅生大会では、Honda陣営も一丸となってがんばり、被災されたみなさんに少しでも元気をお届けするような戦いができればと考えています。SUPER GTを戦う5台のHSV-010 GTに引き続き熱い声援をお願いします。