vol.23 | Rd.3 セパン プレビュー |
サイドラジエターで挑む初の灼熱レース |
2011年シーズンの第1戦岡山大会と第2戦富士大会を終え、Honda HSV-010 GTはいまだ白星なし。ダブルタイトルの防衛を最大の目標に臨んだ我々にとって、まったく予想外の展開と言わざるを得ません。次戦は灼熱のマレーシア・セパンでの開催。今後に向けて弾みをつけるためにも、絶対に負けられない一戦となります。
昨年のセパン大会では、3台のHSV-010 GTに優勝のチャンスがありながら、決勝中に様々な不運に襲われ、結果的には#18 ウイダー HSV-010に乗る小暮卓史選手とロイック・デュバル選手の3位がHonda勢としては最上位という結果に終わりました。力はあったがそれを成績に結びつけられなかった。そんなレースでした。
今年のHSV-010 GTはまだ優勝こそしていませんが、第1戦岡山大会でも第2戦富士大会でもライバルを凌ぐ速さを示すことができたと考えています。したがって、HSV-010 GTの優れたコーナリング性能を発揮できる第3戦セパン大会でも優勝のチャンスは十分にあり、実力をきちんと発揮できればおのずと結果はついてくる、そんな風に考えています。
ただし、心配がないわけではありません。酷暑のサーキットでの冷却能力です。誤解のないように付け加えると、冷却能力が不足しているという意味ではありません。逆に、これまでのデータから例年どおりのセパンであれば十分に冷却できると考えています。ただし、今年はいかんせんデータの量が少なすぎます。2011年に向け、HSV-010 GTはサイドラジエター化を実施しました。その冷却能力を確認するシーズン前のテストはどれも真冬の寒さのなかで行われましたし、5月1日に富士で行われた第2戦も雨にたたられて気温は思ったほど上がりませんでした。5月22日の第1戦岡山大会(今年のスケジュールは変則的で第1戦よりも先に第2戦が開催)では気温23℃、路面温度29℃とまずまず暖かくなりましたが、真冬以外のデータはこの1回だけ。気温35℃以上、路面温度が50℃近いセパンとは依然として大きな隔たりがあります。しかも、実戦では何が起きるかわからない。いくらこれまでのノウハウを駆使しても、どうしても読み切れない部分は残ります。
それから、昨年のセパンで問題となったドライバークーリングシステムがあります。冷水をベストの中を循環させ、ドライバーの体温上昇を抑え熱中症などから守る重要なシステムですが、昨年はNSXとは違う着座姿勢が理由で、このシステムにトラブルが発生して思うように走れなかったのです。ですから、今年は冷却能力に優れ信頼性の高いシステムを開発、これを全車共通で採用しました。ここまで2戦の走行では、システムが必要と言うほど暑くはありませんでしたが、あえて作動させて走行し、その機能と信頼性の確認を行いました。これは既にクルマと共に、セパンへ向けて発送されています。
この様に、今回はできるだけの準備を整えてからセパンに向かう計画を立て実行に移しています。したがって、このセパン大会を問題なく乗り切ることができれば、その後の第4戦菅生大会、第5戦鈴鹿大会、そして第6戦富士大会には安心して挑むことができます。裏を返せば、第3戦セパン大会は、今季の天王山となる中盤戦の行方を占ううえでの、ひとつの試金石となるわけです。我々が第3戦セパン大会を非常に大切な一戦と位置づけている理由は、この点にあります。
改めてポイントテーブルと向き合ってみれば、タイトル防衛が期待される#1 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル)は第2戦富士大会で挙げた4ポイントだけで、シリーズ12位に沈み込んでいます。#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)が15ポイントで同5位、#17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)が14ポイントで同6位につけているとはいえ、まったく予断は許されない状況です。是非とも第3戦セパン大会で栄冠を勝ち取り、力強く反撃していきたいと考えています。マレーシアでの灼熱戦に挑む5台のHSV-010 GTに、引き続き熱い声援をよろしくお願いします。