日本のモータースポーツ界では、フォーミュラ・ニッポンと並んで最高峰カテゴリーに位置づけられるSUPER GT。Honda NSXで2006年シーズンに参戦したことのある武藤英紀に対して、佐藤琢磨は残念ながらこれまでレースに足を運んだことがないという違いはあるものの、SUPER GTに対してはふたりとも熱い思いを抱いているようだ。ここでは、SUPER GTについて琢磨と英紀に語ってもらった。
——アメリカでインディカーレースを戦っているふたりの目から見ると、SUPER GTって、どんなレースですか?
佐藤琢磨(以下TS)「日本のSUPER GTは海外でも注目度が高いですよ。クルマがすごく高い技術で作られていて、レベルの高い、優れたクォリティのレースだっていう認識はありますね。それに優秀なチームやドライバーがこぞって参加していて、たくさんのお客さんで賑わっているという話もよく聞きます」
武藤英紀(以下HM)「僕は1年だけですが、Honda NSXに乗ってSUPER GTに参戦したことがあります。あのときはダンロップ・タイヤを履いていましたが、毎戦違う仕様のタイヤが投入されて、そういう開発競争みたいな部分もすごいと思いました。あと、自分がいま挑戦しているインディカーシリーズと違って、SUPER GTでは必ずドライバーがふたりで組んで参戦する。だからチームメイトと協力して、お互いのウィークポイントを消すようなマシンに仕上げないといけない。これとは対照的に、ドライバーがひとりだけのインディカーではすべて自分の好みにあわせていける。これは大きな違いですよね。だから、もちろんインディカーもチームプレイなんですが、SUPER GTはもっとチームプレイの要素が強いというか、チームワークが重要になりますね」
TS「現在のインディカーはシャシーもエンジンもタイヤもメーカーはひとつしかなくて、その部分の競争は実質的にできない。でも、SUPER GTは、レギュレーションの範囲内とはいえ、各メーカーが自由に開発を進められる。これは、ある意味F1にも通じるもので、すごく関心がありますね。しかも、それぞれのメーカーはまったく違うコンセプトでマシーンを開発していて、場合によってはタイヤの銘柄も違うのに、1ラップ走ったらコンマ数秒しか差が生まれないってこともある。これって、すごいことですよ。メーカーごとに速いところとそうでないところも分かれているだろうし、レース中は、そういうマシーンごとの特性の違いを逆手にとって、オーバーテイクをしていく。そういうレースはきっとエキサイティングでしょうね。ドライバーの立場からいっても、チームメイトと共同でマシンを仕上げていくという作業には関心があります」
——今季、HondaはHSV-010 GTでSUPER GTを戦っていますが、このマシンを見たときの印象を教えてください。
TS「すごく戦闘的なフォルムですよね。SUPER GT仕様のHondaはHSV-010はすっごいアグレッシブで、本当にレースをするために生まれてきたデザイン、という感じがする。格好いいですよね」
HM「いま琢磨さんが言ったように、すごく格好がいい。特に、後ろから見たとき、リアウィングがむき出しになっていて、ちょっとフォーミュラカーの匂いも漂っている。そういうGTカーって珍しいし、衝撃的なデザインだと思いますよ。残念ながら実車は見たことなくてテレビで見ただけなんですが、排気音が甲高くてフォーミュラカーに近いですよね。ああ、Hondaサウンドだなって、そう思います。なんか、自分でも運転したくなりますよね」
TS「僕たちふたりで組んで、SUPER GTに出てみたいね!」
HM「いいですね!」(一同爆笑)
——今季は全部で5台のHSV-010 GTが出場していますが、このなかで特に応援しているドライバー、注目しているドライバーはいますか?
HM「僕はHondaのドライバーは全員、注目していますよ。一緒にトレーニングした仲だし、合宿もよくやっている。そのなかでも、特に注目しているドライバーといえば、山本尚貴選手かな。年齢でいえば後輩にあたるのかもしれませんが、彼の走りはすごい気になる。今年もかなりアグレッシブに戦ってくれているみたいだから、嬉しいですよね」
TS「Hondaのなかでいえば、やっぱり井出有治選手です。SAF1時代のチームメイトだから、走りも注目しているし、ずっと応援しています」