vol.9 | Rd.5 菅生 レビュー |
HSV-010 GT、初の1-2フィニッシュ。 シーズン後半戦に弾み。 |
いつもHondaならびHSV-010 GTに熱いご声援をいただき、誠にありがとうございます。おかげさまでSUPER GT 第5戦 スポーツランドSUGO(以下、菅生)において、HSV-010 GTが初の1-2フィニッシュを遂げることができました。
デビュー2戦目という比較的早い段階で初優勝を果たしていながら、第3戦 富士、第4戦 セパンと、勝利に手が届かないレースが2戦続いたので、第5戦 菅生には「今度こそ」という思いで臨みましたが、願いが天に届いたようです。SUPER GT初優勝を果たした金石年弘選手、塚越広大選手、それにリアル・レーシング・チームオーナーの金石勝智さんには心からおめでとうと申し上げます。
期待どおりというべきか、菅生のコースレイアウトとHSV-010 GTのマシン特性はぴったりあっていました。そのためもあって、予選では100号車に乗る伊沢拓也/山本尚貴組が2位、18号車の小暮卓志/ロイック・デュバル組が4位、8号車を駆るラルフ・ファーマン/井出有治選手が5位と、スターティンググリッドの上位5台に3台のHSV-010 GTを送り込むことに成功し、全5台がトップ10で予選を終えました。これは、Honda陣営内で進めてきた情報の共有が、シーズン折り返しを迎えて効を奏した結果でもあります。また、ブリヂストン・ユーザーが大半を占めるHSV-010 GT勢にあって、唯一ダンロップ・タイヤを使う32号車(道上 龍/中山友貴組)が予選7位と健闘できたのは、ドライバーやチームの努力もさることながら、HSV-010 GTとダンロップ・タイヤのマッチングが向上したことを示すものでしょう。HSV-010 GTが5台揃って上位争いに食い込むようになった現状は、Honda GTプロジェクトとして大変嬉しいものです。また、優勝争いに絡むマシンが2台、3台と増えれば、万が一の事態に陥っても勝利を取りこぼす心配が減り、それだけチャンスも広がります。そして、今回のレースはまさにそんな展開になったといえます。
決勝レースで、100号車、18号車、8号車の上位3台はそれぞれのグリッド・ポジションを保ってスタートを切りました。ただし、100号車と8号車はスピンやアクシデントなどに巻き込まれ、レース序盤にして順位を落としてしまいます。これで2番手に浮上した18号車は、デュバル選手が安定したドライビングを見せて2位をキープ、29周目というやや早めの段階でピットインすると、小暮選手にバトンを渡しました。上位陣のピットストップが一巡すると18号車は再び2番手に浮上、トップを走るライバルチームの後姿を見ながら順調に周回を重ねていきます。その18号車に急速に迫っていったのが、塚越選手がステアリングを握る17号車でした。予選一回目でタイヤ選択に失敗しスーパーラップ進出を逃した17号車は予選10位と、本来の実力を下回る成績に終わっていましたが、レース前半を担当した金石選手は4番手まで挽回。予選で失敗した塚越選手にステアリングを託したのです。その後、首位を守っていたライバルチームにトラブルが発生して18号車がトップに立つと、17号車がこれに追随。レース終盤、18号車と何度もテール・トゥ・ノーズのバトルを繰り広げた末、最終ラップの最終コーナーでこれに並ぶと、コントロールライン上ではわずか0.025秒の僅差で18号車を下し、初優勝を飾ったのです。
菅生大会前の段階でポイントランキングを見ると、小暮/デュバル組は3位、これに対して金石/塚越組は10位でした。今後のチャンピオン争いを考えれば、トップが脱落した時点で競争を中止して、残りの数ラップは流してレースを終了するのが確実だったかも知れません。ただ、お客様はバトルを楽しみに来られているのですから、塚越選手のひとつでも前を走りたい気持ちが現れた走りや、小暮選手の正々堂々としたブロックを見ていただこうと思いそのままとしました。結果として最後の最後に17号車がトップとなったのは、17号車のハンディウェイトが28kgだったのに対して、18号車は70kgと42kgも差があったことで登りでの伸びに差が生じたことが理由のひとつ。2番目の理由としては、やはり小暮選手のレースに対するフェアな心と、塚越選手の諦めない気持ち、執念が生んだ結果だったと思います。
結果的に、ポイントランキングでは18号車が2位に浮上、17号車も10位から5位へと躍進し、タイトル獲得の望みをつないでいます。この1戦で後半戦に弾みをつけ、ダブル・タイトルを目指すというのが当初の目標だったので、目標は充分に達成されたといえます。その意味ではとても嬉しいのですが、反省点がなかったわけではありません。その最大のものは、ライバルチームの独走を阻めなかったことにあります。彼らにトラブルが起きて栄冠が転がり込んできたのはあくまでも時の運であって、スピードで太刀打ちできなかったことはひとりのエンジニアとして非常に悔しく思っています。是非とも次戦では速さでもライバルを圧倒し、雪辱を果たしたいと考えています。
その次戦は、鈴鹿サーキットでの700kmレースです。鈴鹿とHSV-010 GTの相性がいいことは開幕戦で証明済みです。その後、さらに速さに磨きを掛けてきたHSV-010 GTが鈴鹿でどんな戦いを演じるのか、我々も楽しみにしています。残念ながら18号車はエンジンの載せ換えが必要であり、予選グリッド10位降格が決まっています。そんな中でどうやって戦って行くのかも重要となります。どうか、8月21〜22日の週末は鈴鹿に足を運んでいただき、HSV-010 GTに熱い声援を送ってください。