GTプロジェクトリーダー 瀧敬之介 現場レポート
vol.6 Rd.4 セパン プレビュー
灼熱の闘いを勝ち抜くために

 SUPER GTのシリーズ戦で唯一海外の開催となる第4戦セパンが、今週末に行われます。セパンの特徴はふたつあります。ひとつは高速コーナーもあるものの比較的ストップアンドゴーのハイダウンフォース向きのコースレイアウトで、しかもストレートが2本あること。そしてもうひとつは、赤道に近い熱帯のため、高温多湿になりやすいことです。

 まず、コースレイアウトへの対応ですが、高速コーナーではダウンフォースの大きなことが有利に働きますので、この点からすれば、セパンはHSV-010 GTが得意とするコースといえます。必要とされるダウンフォースレベルは通常サーキットレベルであり、リアウィングは標準サイズを装着する予定です。また、車体には大きな旋回Gがかかるので、HSV-010 GTの高剛性シャシーが威力を発揮してくれるでしょう。
 ただし、長いストレートが2本あるので、富士ほどではないにしても、ある程度は最高速度の伸びが必要になります。初日の練習走行で、この辺りを考慮したセッティングを早く見つける事が重要かと思います。しかしいずれのストレートも、比較的タイトなコーナーを立ち上がっての直線なので、コーナーのボトムスピードを高く保って立ち上がれば問題は無いと考えています。またタイヤに関しても、気温路面温度変化の影響が複雑になることから、持ち込みタイヤも温度レンジを広めに見込んでいます。従ってタイヤも、練習走行の中で予選用とレース用の選択を行なわなくてはなりません。HSV-010 GTとしては初めて走るサーキットですし、本格的な夏の気候での初走行となります。初日の練習走行が非常に重要になると思われますので、ここでしっかり確認を行なって、予選、レースと良い走りを出来れば、と考えています。

 そしてもうひとつの課題が、暑さ対策です。実はこれ、ちょっと心配しています。というのも、HSV-010 GTは意外とコックピットのなかが暑くなるのです。熱の発生源が目の前にあるフロントエンジンが暑さ対策の面で不利なのはやむを得ませんが、これまでHondaは、ずっとミッドシップのNSXで戦ってきたので、この方面に関する経験がほとんどありません。とはいえ、やはりドライバーはしっかり冷やしてあげないと正常な判断が下せなくなりますから、何らかの対策を実施する予定です。あとはパドルシフト用のECUなども、保証されている温度範囲が60℃くらいまでなので、こちらも対策しないと誤作動を起こしかねません。いっぽう、エンジンの冷却系などはあらかじめ夏用のダクトを開発しており、こちらは問題ないと考えています。

 セパンでは、空力のセッティングと暑さ対策がしっかりできれば、おのずと結果はついてくるはずです。いっぽう、Hondaとして好成績を挙げるには、チーム全体の実力を底上げすることも大切なテーマです。シーズン序盤は18号車の活躍が目立っていましたが、第3戦富士では8号車がだいぶ頑張ってくれました。100号車や17号車も実力を伸ばしているので、これに刺激されて32号車も速くなってくると理想的な形になります。5台のマシンで総力戦で挑まなければ、ライバルの強力な包囲網を突破できないと思っています。灼熱のセパン戦に挑むHondaの活躍を、どうぞご期待ください。

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