vol.15 | 富士スプリントカップ レビュー |
レースを盛り上げた5台のHSV-010 GT 伸びのいいストレートスピードを実証 |
ウイダー HSV-010がタイトル獲得を決めたSUPER GT最終戦から3週間が経ち、富士スピードウェイで特別なイベントが催されました。20年ぶりにJAF GPのタイトルがかけられた「富士スプリントカップ」が行われたのです。これは日本のモータースポーツを活性化する目的でSUPER GTとフォーミュラ・ニッポンの両方を開催するもので、国内最高峰のカテゴリーがふたつ同時に見られるのは、おそらくこれが史上初めての出来事だったと思います。
イベントの内容も、レース距離を100kmのスプリントレースとしたほか、SUPER GTでいえば途中のドライバー交代を行わなかったり、いつものローリングスタートの代わりにスタンディングスタートを採用したりと、普段のシリーズ戦とはひと味異なったものとされました。
我々にとっては、タイトル争いのプレッシャーから解放されるという面で大きな意味を持つイベントでした。ただし、せっかくサーキットにお越しいただくお客様には存分に楽しんでいただかなければいけないので、手は抜けません。そこで、それらを踏まえ、慎重に準備を整えてイベント当日を迎えました。
もうひとつ、我々には課題というか、ひとつのテーマがありました。ここ富士で開催された第3戦の悔しさを晴らすようなレースをしたい。本来であれば、9月に開催が予定された第7戦での雪辱を期していましたが、台風の影響でレースがキャンセルされたため、その機会を逃していました。ですから、この富士スプリントカップはHSV-010 GTの速さを改めて証明する、願ってもないチャンスとなります。
もっとも、9月のレースのために用意したパーツがそのまま使えるわけではありません。富士スプリントカップが開催される11月は気温がそれなりに下がっており、冷却などの都合もあって、まったく同じ仕様では走れなくなっていたからです。ただし、こうした11月では使えないパーツがあっても、ここまでのシーズンを戦って来たなかでセッティングによって、マシンの前後バランスが改善されているので、HSV-010 GTのパフォーマンスは確実に磨かれています。今回は、この辺りをHondaファンの皆さんにご披露したいと思っていました。
残念ながら、金曜日の予選では上位進出を果たせませんでした。決勝レース1の予選では、唯一、#18 ウイダー HSV-010を走らせたロイック・デュバル選手にポールポジション獲得の望みがありましたが、最後の最後で遅いクルマにひっかかってしまい、僅差で4番手に終わりました。決勝レース2の予選でも#100 RAYBRIG HSV-010に乗る伊沢拓也選手の4番手が最高位でした。これには明確な理由があるのですが、この点は、後日掲載する2010年シーズン総集編でご説明することにします。
グリッド後方からスタートしたHSV-010 GTは、どちらのレースでも激しい追い上げを見せてくれました。タイヤに優しい特性を生かした、HSV-010 GTらしい戦いぶりだったと思います。懸案だったストレートスピードの点でも、決勝レース2で小暮選手がSC430と横並びになったままストレートを通過。その後も小暮選手は一歩も引かず、コカコーラ・コーナーでライバルを下すバトルを見せてくれました。HSV-010 GTのストレートスピードがSC430に比べてまったく劣っていないことがこれで証明できたほか、小暮選手らしい切れ味のいい戦いが見られて、私たちまで背筋がゾクゾクするような興奮を味わいました。ファンの皆さんもきっと楽しんでいただけたことと思います。
そのほか、ダンロップ・タイヤを履く#32 EPSON HSV-010がフィニッシュまで安定したラップタイムを刻み、決勝レース1で中山友貴選手が6位、決勝レース2で道上 龍選手が4位と健闘してくれたことも嬉しかったですね。特に、決勝レース2を受け持った道上選手はフィニッシュ後に顔を真っ赤に上気させていましたが、その表情は満足げでした。今季は思うように戦えないレースが続いていましたが、ここにきて確かな手応えを掴んだようです。この流れが来年につながることを期待しています。
終わってみれば、決勝レース1で2位に入った塚越選手が今回の最上位で、決勝レース2では小暮選手の3位がHonda勢のトップでした。成績そのものは決して満足できるものではありませんが、このイベントはいい意味でお祭りのようなものですから、成績うんぬんよりもご来場の皆さんにご満足いただくことのほうが大切です。その点、HSV-010 GTらしい戦いぶりで追い上げていき、レースを盛り上げることができたので、私としてはよかったんじゃないかなと思っています。
さて、この富士スプリントカップをもって今季は終了しました。皆様からのたくさんのご声援、本当にありがとうございました。今後は上下2回に分けて2010年シーズンの総集編をお届けする予定です。どんな話題が飛び出すか、どうかご期待ください。