vol.14 | Rd.8 もてぎ レビュー |
念願のダブルタイトルを獲得! デビューイヤーに栄冠を勝ち取ったHSV-010 GT |
SUPER GT最終戦 もてぎラウンドが終わりました。ポイントリーダーとしてこの一戦に臨んだ18号車の小暮卓史/ロイック・デュバル組(ウイダー HSV-010)は2位でフィニッシュ。タイトル争いを繰り広げていたライバルが12位に終わったため、小暮卓史/ロイック・デュバル組はGT500ドライバー部門のチャンピオンに輝き、18号車を走らせるウイダー ホンダ レーシングはGT500チーム部門を制しました。念願だったダブルタイトルの獲得です。これまで声援を送ってくださったファンの皆さんには心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
それにしても、最終戦は期待に違わない熱戦となりました。予選でウイダー HSV-010がポールポジションを手に入れたのは、ある意味で想定の範囲内でしたが、決勝では予想しなかったことがふたつ起こりました。ひとつは、タイトルを争っていたライバルが、フォーメーションラップ前に犯した違反のため20秒間のペナルティストップを科せられたこと。この時点で、よほどのことがない限り、ウイダー HSV-010のタイトル獲得が確実となりました。これを聞いて残念に思うと同時に少しほっとしたのも事実ですが、ウイダー HSV-010が上位でフィニッシュできなければランキング4位のライバルに逆転される恐れもあったので、この段階ではまだ完全に気を緩めるわけにはいきませんでした。
もうひとつ予想外だったのが、このランキング4位のライバルが決勝で思いのほか速かったことです。スタートではデュバル選手がトップを守ってくれましたが、19周目にタイヤが思う様に温まらないところをライバルに攻略され、2番手となります。そしてこれ以降、チェッカードフラッグが振り下ろされるまで、2台は激しいデッドヒートを繰り返したものの、残念ながら順位は入れ替わりませんでした。ライバルチームがソフトなタイヤを使うことは我々も把握していましたが、このタイヤでは決勝を満足に走りきることができないと考え、我々はミディアム系のタイヤを選びました。ところが、決勝日は予報に反して気温がグンと下がり、ソフトタイヤでも問題なく走りきれるコンディションとなったのです。この点は想定外でしたし、自分たちとしてはこのレースで優勝してタイトルを勝ち取りたかったので、その意味では残念な結果となりました。
それにしても、本当にチェッカードフラッグが振り下ろされる瞬間まで続いたバトルは見応えがありました。特にドライバーが小暮選手に代わってからは、何度か軽い接触をするくらいの接近戦が繰り広げられて、ヒヤッとさせられました。ただし、この走りは小暮選手にとっては余裕を残したものであり、外から見て感じられるほど際どいドライビングではなかったと思います。実は小暮選手、前日の予選走行前にはいささか心配になるくらい緊張していて、「小暮、ゆっくり速くだからね」と思わずアドバイスしたほどです。この言葉、彼がまだSUPER GTに参戦して間もない頃に、彼によく聞かせていたもので「気持ちはゆったりとして速く走れば大丈夫」との意味ですが、予選日では久しぶりに口をついて出てしまいました。
最終戦で優勝できなかったのは残念でしたが、2位でチャンピオンが決まっているのに最後までトップを諦めない走りは、正にHondaらしいものであり、デュバル選手も小暮選手も本当によくがんばってくれました。ふたりには、心から「おめでとう。そして、ありがとう」と声をかけたいですね。また、チャンピオンマシーンを仕立ててくれたウイダー ホンダ レーシングの皆さんにもお礼を申し上げます。
HSV-010 GTをデビューさせ、最終戦まで戦ってきた今シーズンを改めて振り返ってみると、本当にいろいろなことがありましたが、最後は狙いどおりのクルマに仕上げられて、皆さんにも楽しんでいただけるレースができたかな、と思っています。開幕戦のときは、自分たちが一生懸命作ってきたクルマをやっと走らせられるという喜びを味わいました。そして今回は念願だったタイトルを手に入れることができて、本当にうれしく思っています。スタッフ全員の努力と情熱がこもったすばらしいシーズンとなりました。いいときも悪いときもありましたが、いつも変わらず応援してくれたファンの皆さんにはいつも感謝していました。本当にありがとうございました。
念願だったダブルタイトルを獲得できたので不満はほとんどありませんが、来季に向けての課題という意味では、Honda勢の実力をもっと底上げしたかったと思っています。これについては、シーズン中もチーム間の情報交換を進めるなどして努力を重ね、かなり改善されてきましたが、まだ充分ではありません。来季は、全チームが優勝争いをするような状況を作り出したいと考えています。
さて、2010年シーズンはこれで終わりましたが、HSV-010 GTの参戦するレースが今年、あとひとつだけ残されています。11月12〜14日に富士スピードウェイで開催されるJAFグランプリ・富士スプリントカップです。このレースは、20年振りにJAFグランプリのタイトルがかけられるほか、SUPER GTとフォーミュラ・ニッポンのレースが一度に見られる特別なイベントです。競技の形態も通常のシリーズ戦とはまったく異なり、12日(金)に公式予選、13日(土)に第1レース、14日(日)に第2レースを行います。各レースは100km、22周のスプリント形式で競われるため、途中のドライバー交代はなし。そして第1レースと第2レースには、あらかじめ登録した各1名のドライバーが出走することになっているので、基本的には、シリーズ戦を戦ってきたふたりのドライバーで第1レースと第2レースに挑むことになります。また、いつものローリングスタートではなくスタンディングスタートとなることも大きな見どころのひとつです。シリーズ戦とはまたひと味、違った戦いになると思いますので、皆さん、どうぞご来場ください。そして、チャンピオンとなったHSV-010 GTに熱い声援をお送りください。どうぞよろしくお願いします。