vol.13 | Rd.8 もてぎ プレビュー |
濃密な戦いが待つ最終戦へ。 ライバルに打ち勝ち、タイトル獲得を目指す。 |
すでに報道されているように、9月11〜12日に開催される予定だった第7戦 富士ラウンドは、開催地である富士スピードウェイ周辺が台風9号の接近によって土砂災害など甚大な被害を受けたため、地元の復旧を優先する観点から中止となりました。ここで被災者の皆さんに心からお見舞い申し上げますと同時に、一日も早い復興をお祈り申し上げます。また、開催を楽しみにしていたファンの皆さんにも、関係者のひとりとしてお詫びを申し上げます。
では、SUPER GTを戦う我々にとって、第7戦 富士ラウンドの中止はどのような意味を持っているのでしょうか。前回のプレビューでもお話ししましたが、HSV-010 GTにとって富士スピードウェイはどちらかといえば苦手コースです。だから、ここは互角の勝負でしのいで、最終戦が開催されるツインリンクもてぎでライバルを突き放し、タイトルを獲得するというシナリオを当初は描いていました。形はともかく、イベントが中止となってポイントテーブルは動かなかったのですから、我々にとっては都合のいいことだったと言えなくもありません。
しかし、私も勝負の世界に身を置く者です。苦手コースといいながらも、春からの熟成が進んだこともあり、新開発の空力パーツが期待どおりの性能を発揮してライバルを撃破し、ポイント差を広げて最終戦に臨むという夢を内心抱いていたのも事実です。だから、決して負け惜しみではなく、富士ラウンドが開催されなかったことは残念でした。心血を注いで富士用の新パーツ開発に取り組んできたスタッフも、さぞかし無念だったことでしょうから、彼らにも励ましの言葉をかけてあげたいと思います。
いずれにしても、中止はもう決まったことです。ここでは最終戦 もてぎラウンドの行方とタイトル争いについて、より現実的に考えてみることにしましょう。
HSV-010 GTは、的確に設計されたフレームを基本に、高い旋回能力を有しており、得意とするのはストレートよりもコーナーです。国内サーキットのなかでもブレーキングと旋回性能が重要となるもてぎは、HSV-010 GTの得意コースといえます。基本的なマシンのパフォーマンスでいえば、もてぎではまだ我々にアドバンテージがあると考えています。
そのいっぽうで気になるのが、最終戦ではウェイトハンディが完全に撤廃されることです。単純に速く走ることだけを考えれば、足かせでしかないウェイトハンディはないほうが都合がいいといえます。ただし、ウェイトハンディがなくなるのは我々だけでなく、ライバルチームも同じこと。この中で如何に戦うかが重要になって来ます。
ここでポイントランキングに目を向けると、首位は18号車に乗る小暮卓史/ロイック・デュバル組(ウイダー HSV-010)で52ポイント、2位は6号車のレクサス(51ポイント)、3位は17号車の金石年弘/塚越広大組(KEIHIN HSV-010/42ポイント)、4位は1号車のレクサス(42ポイント)、5位は12号車のニッサン(41ポイント)となっています。計算上は、35ポイントを獲得した100号車の伊沢拓也/山本尚貴組(RAYBRIG HSV-010)にもタイトル獲得のチャンスはありますが、そのためには100号車が優勝したうえで、上記5台が揃って8位もしくは9位以下の下位に沈み込まなければいけません。可能性はなくはありませんが、あまり現実的とはいえないでしょう。基本的にはトップ5、さらにいえば18号車と6号車の一騎打ちになると予想されます。つまり、最終戦 もてぎラウンドでは力と力のぶつかり合いが繰り広げられるのです。
ここで恐ろしいのは、力と力のぶつかり合いとなる前に、アクシデントやトラブルでリタイアしてしまうことです。18号車も6号車も、第5戦以降は100kgのウェイトハンディを積んで戦ってきました。最終戦ではこの足かせが外れるわけですから、18号車と6号車が優勝争いに絡んでくるのはある意味で当然のことです。しかも、もしも18号車が6号車より下位でフィニッシュしたら、タイトル獲得はありません。言い換えれば、ミスなく、しかも確実に上位を狙う戦い方が大切になります。だからといってあまりにコンサバティブに戦っていては、良い結果は望めません。慎重に、しかし大胆に。最終戦 もてぎラウンドでは、したがって優勝を狙いながらも絶対にミスできないという、非常に緊張感の高い戦いを強いられます。きっと、ドラマチックな結末が待っていることでしょう。
最終戦 もてぎラウンドは、10月23〜24日に開催されます、濃密な戦いが繰り広げられるはずのツインリンクもてぎに、どうか皆さんお誘い合わせのうえご来場ください。そして、HSV-010 GTがチャンピオンを獲得する瞬間を共にし、我々と熱い感動を共有しましょう。