GTプロジェクトリーダー 瀧敬之介 現場レポート
vol.12 Rd.7 富士 プレビュー
タイトル獲得に向けて最大の試練
富士の高速決戦でリベンジに挑む

第5戦 菅生ラウンド、第6戦 鈴鹿ラウンドと2連勝を果たすとともに18号車(小暮卓史/ロイック・デュバル組)がポイントリーダーに浮上したのもつかの間、第7戦 富士ラウンドがもう目前に迫っています。この一戦を含め、今季も残すところあと2レース。タイトル争いも大詰めです。これまでは一戦一戦を大切に戦い、Honda陣営としては結果的に6戦して3勝と勝率5割を達成していますが、そろそろ1年間の総決算としてチャンピオンのことを意識しないわけにはいきません。今回は、タイトル獲得を念頭に置いたうえで、第7戦 富士ラウンドをどう戦っていくのかについてお話ししましょう。

SUPER GTでは優勝したドライバーに20ポイントが与えられるため、残り2戦で最大40ポイントを獲得できます。ポイントリーダーの小暮卓史/ロイック・デュバル組は52ポイントを手中に収めているので、現時点で13ポイントを獲得しているドライバーであれば数字の上では逆転できることになります。この条件に当てはまるのは13台中、実に11台。いくらポイントリーダーに浮上できたとはいえ、まったくうかうかしていられない状態であることがこれでおわかりいただけると思います。

いっぽう、残るレースは、先ほど申し上げたとおり第7戦が富士、そして最終戦がもてぎで開催されます。HSV-010 GTとの相性でいえば、富士は苦手コース、対するもてぎは得意コースといえます。つまり、ライバル勢と互角の成績で富士ラウンドを終えられれば、HSV-010 GTにアドバンテージがあるもてぎラウンドでは有利に戦いを進めることができ、結果としてタイトル獲得の可能性が広がります。冒頭で第7戦 富士ラウンドを「タイトル獲得に向けて最大の試練」と位置付けたのは、このためです。

ところで、富士といえば第3戦で完敗を喫し涙を呑んだ、我々にとっては忘れがたいコースです。第3戦が行われた5月の段階では、HSV-010 GTはストレートスピードの点でライバル勢に水を開けられており、これが敗北の要因となりました。しかし、その後様々な開発を進めてきた結果、HSV-010 GTのストレートスピードは大きく改善されています。まず、第3戦で投入した低ドラッグのフロントバンパーは、当初、準備不足もあって充分な効果を発揮できませんでしたが、その後更に進化させた上で、シャシー側のセッティングとのマッチングも進められた結果、ストレートスピードの点でもライバル陣営と比べてそん色のないレベルに仕上がっています。8月に富士で行われたテストでもその成果は実証されているので、第3戦のときのように大敗を喫することはないと考えています。

これに加えて、第7戦のために新しい空力パーツも用意しています。詳細はまだお話しできませんが、タイトル獲得を目指して常に開発を進めてきた、我々の最新作です。このパーツが狙い通りのパフォーマンスを発揮し、富士でもライバルと対等に戦えることを期待しています。

ウェイトハンディについていえば、第6戦までは獲得ポイント×2kgだったものが、第7戦では獲得ポイント×1kgに半減されます。たとえば18号車は、第6戦の段階で50ポイントを獲得していたのでハンディウェイトはルールで定められた上限の100kgとなりましたが、52ポイントを獲得している今回は52kgを積めばいいことになります。もちろん、このルールは18号車だけでなく全車に適用されるので、ランキング上位のドライバーが苦戦していたここ2戦ほどの流れはすっかり変わり、もともと実力のあるドライバーやチームが優勝争いに加わってくると予想されます。つまり、ランキング上位のドライバーが一気に大量ポイントを獲得する可能性もあり、その意味からいえば、第7戦ではポイントテーブルの様子が大きく塗り替えられる恐れがあるのです。ポイントリーダーの18号車、そしてランキング3位の17号車(金石年弘/塚越広大組)には、表彰台を目指して積極的に戦うのはもちろんのこと、ここで大きく取りこぼすことのないよう、細心の注意を払って“富士の高速決戦”に挑んで欲しいと思います。

最後になりましたが、標高の高い富士スピードウェイの空模様は山と同じで変わりやすく、コンディションの予想は容易ではありません。長期予報によれば9月も残暑が続くとのことですが、秋の富士では急に気温が下がったり、雨が降り始めたりする恐れもあるので、要注意です。我々も様々な事態を想定し、柔軟に対応できるように準備しておきますが、9月11〜12日に富士スピードウェイでの観戦をご予定されている皆さんには、天気予報をご確認のうえ、雨具や薄手のジャケットなどもご用意されることをお勧めします。そして、霊峰富士に甲高いエグゾーストサウンドをこだまさせて走る5台のHSV-010 GTに熱い声援をお送りください。どうぞよろしくお願いいたします。
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